犬シリーズ〜すれ違い編〜【ダメ犬の場合】

ぺちか @pechika_udon

26 『...何やねん』 『ん？可愛ええなぁって思うてな』 『何やねん、それ。きっしょ』 その手を振り払おうと持ち上げた手は空を切る。 わしゃわしゃ、とちょっと乱暴に髪の毛をかき混ぜて、まるちゃんはどっかに行った。 ...ほんま、何やねん。 #犬シリーズ

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27 それから数日後、仕事終わりにいつもの癖でちかの店に足が向く。 でも中に入る勇気が出んくて。 暫く店の前で立ち尽くしとったら、丁度仕事が終わったのか、ちかが出てきた。 「大倉くん...」 『...久しぶり』 へら、と笑えば、ちかは困ったように俺を見る。 #犬シリーズ

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28 ...そんな顔見たくなかった。 『じゃ...』 「待って！」 踵を返す俺を何故かちかが呼び止めた。 「...この前はごめん」 『ちか？』 「私の勝手な言い分で大倉くんのこと傷付けた。やからごめん」 #犬シリーズ

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29 『うん...』 「ほんまに嬉しかったんよ？大倉くんの気持ちも、一緒に出かけたことも」 ...そんなん言われたらまた調子乗ってまうやん。 「それだけで私は十分やの。これ以上望んでしまうんは贅沢やわ」 『ちか...？』 「今までありがとう」 そのまま去ろうとするちかの手を掴む。 #犬シリーズ

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30 びっくりして振り返るちかの目からは涙が溢れてて。 俺は思わずちかを力いっぱい抱き締めた。 「お、くらく...！」 『俺...ほんまにちかのことが好きやねん。離したくない。ずっと俺と一緒におってや...！』 #犬シリーズ

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31 冷静になればどんだけ子どもやねん！て感じやけど、それでも俺は泣きそうになりながら、ちかに抱き着いた。 「...もう、泣かへんの。大人やろ？」 『泣いてへん...！』 「一回離してくれる？」 『嫌や...！』 「大丈夫やから。な？」 #犬シリーズ

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32 俺はそぉっとちかの体を離して、顔を見つめた。 ちかは溜息を吐く。 そして、 「...ほんまに私でええの？」 困ったように笑った。 笑顔と言葉の意味を理解して、俺はまたぎゅっと抱き締める。 #犬シリーズ

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33 『ちかがええの！』 「わかったわかった。ほんま体の大きい子どもやなぁ」 『ちか。好きやで』 「...私も好きやで？」 ふにゃり、と笑うちかが可愛くて我慢できんかった俺はキスをした。 ...場所を考えろ、と怒られたのはその数秒後。 #犬シリーズ

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34 ちかは俺に勇気を与えてくれる。 そんなちかのために、俺ももうちょっと強くなっていかんとな。 #犬シリーズ pic.twitter.com/nJUksE2hRB

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