171115【マルクス入門講座@関東】第三回:マルクス主義国家論の系譜 by 隅田聡一郎 in 東京大学駒場キャンパス5号館514教室

2017年11月15日に行われましたマルクス主義国家論についての貴重な講演録です。
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マルクス研究会 @marx_society

【マルクス入門連続講座@関東】 第三回:マルクス主義国家論の系譜 日時:2017年11月15日(水)18時45分〜 会場:東京大学 駒場キャンパス5号館514教室 講師:隅田聡一郎(一橋大学院) ※参加費無料・予約不要 marxresearchsociety.com/activities/eve… pic.twitter.com/DXutT4LTDw

2017-11-08 07:24:09
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マルクス研究会が開催した15日の入門講座、「マルクス主義国家論の系譜」に来られなかった方も多いようですので、録音をもとに簡単にダイジェストをお送りしたいと思います。

2017-11-18 14:41:08
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マルクス研究会が開催した15日の入門講座、「マルクス主義国家論の系譜」に来られなかった方も多いようですので、録音をもとに簡単にダイジェストをお送りしたいと思います。

2017-11-18 14:41:08
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まず、大前提として、マルクス自身は国家論を残していない。マルクスの経済学批判のプランの6項目に国家は含まれていた。しかし、国家論も含め経済学批判は未完であって、マルクスが残した断片的な叙述をもとに、後世にエンゲルスなどがマルクス主義国家論をつくりあげてきた。

2017-11-18 14:50:08
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国家のマルクス自身の把握として大きいものには、第一に『共産党宣言』で定式化した「階級支配の暴力装置」論がある(ただし、ブルジョワ階級の「所有と諸利害を保証する」という近代国家に独自の規定が展開されている)。「ある階級が他の階級を抑圧するための組織された暴力」

2017-11-18 14:57:32
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第二に、「土台ー上部構造」論。生産関係・生産力などの経済的構造が土台であり、その上に法律や国家といった上部構造として乗っかっているというもの。なお、これは経済学批判にあたっての導きの糸であって、結論ではない。

2017-11-18 15:00:57
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しかし、この「土台ー上部構造」論は、俗流的な把握では、政治と経済が切り離されて、政治が経済によって決定されるといったものとして理解されてきた。マルクスの残した断片的な叙述のうち、以上の二つがその後のマルクス主義国家論に大きな影響を与えた。

2017-11-18 15:04:38
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「伝統的マルクス主義の国家論」の象徴として、エンゲルスが『反デューリング論』で定式化した「階級国家」。資本主義の国家を問題にしたマルクスとは違い、エンゲルスは資本主義国家だけではなく、階級が成立して以降の国家という超歴史的なものを把握しようとした。

2017-11-18 15:09:28
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その際、エンゲルスが国家の特徴として定式化したのが、第一に社会の共同利益を担保すること。たとえば、外敵からの防衛や、災害に備えた備蓄など。第二に、支配する階級の生活や支配の条件を、被支配階級に対抗して暴力によって維持すること。

2017-11-18 15:15:27
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エンゲルスは近代国家については、「本質上は資本家の機関であり、資本家の国家であり、観念上の総資本家である」と述べており、国家=道具的な理解を示しているが、単純にそうは言い切れない。この点はマルクスとの違いがある。

2017-11-18 15:19:09
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次に、レーニン。レーニンは『国家と革命』において「国家死滅」を定式化。革命によってプロレタリアがブルジョワから国家を引き継いだとしても、そのあと国家機構を廃絶しなければならないとした。国家を廃絶しなければならないということについていえば、マルクスも同じ。

2017-11-18 15:26:08
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次に西欧マルクス主義の国家論について。(実は国家論としてはほとんど進展していない)

2017-11-18 15:27:56
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暴力・強制装置としての国家理解に対して、グラムシは「土台ー上部構造」論を修正し、「市民(≠ブルジョワ)社会」を定式化。単なる経済関係としてのブルジョワ社会ではなく、経済と政治を横断するような形で存在する「市民社会」があり、国家はそこで同意を調達する様々なヘゲモニー装置も包括。

2017-11-18 15:33:00
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ヘゲモニー論とは少しずれるが、マルクス自身も暴力装置という狭義の国家だけでなく「政治的共同性」、「幻想的共同体」を論じていた(『ドイツ・イデオロギー』。)

2017-11-18 15:36:42
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次にアルチュセール。アルチュセールも「土台ー上部構造」論を修正し、上部構造からの「反作用」、すなわち資本主義的生産様式を「再生産」するための「国家イデオロギー諸装置」(学校や宗教施設など)を定式化した。イデオロギー自体が物質的な性格をもつこと、国家の相対的自律性などを論じた。

2017-11-18 15:42:37
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なお、アルチュセールの言っている相対的自律性の話は、エンゲルスがベーベル宛の手紙ですでに言っていることである。

2017-11-18 15:44:20
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国家=資本家階級の道具とする伝統的マルクス主義者ミリバンドと、アルチュセールの「構造主義」にもとづいた相対的自律性を強調したプーランザスとの間で一大論争。いわゆる「ミリバンド=プーランザス」論争。とはいえ、そこまで国家論としては進展していない。

2017-11-18 15:48:16
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プーランザスは相対的自律性の概念を発展させ、「階級的・社会的力関係の物質的凝縮」として国家を把握した。これは既存の政治学ではコーポラティズムという概念で言われることだが、そうした論者に影響を与えた。

2017-11-18 15:50:44
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なお、プーランザスについて学びたい人は、柏崎正憲さんの本がおすすめ。 柏崎正憲『ニコス・プーランザス 力の位相論――グローバル資本主義における国家の理論に向けて』 amazon.co.jp/dp/4905497353/…

2017-11-18 15:55:54
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しかし、西欧マルクス主義は結局、「階級国家」論、「土台ー上部構造」論に依拠するものであった。これを鋭く批判したのが、若きジョン・ホロウェイ。ミリバンドやプーランザスは、『資本論』を単なる「経済的次元の分析」と解し、残された「政治的次元」を固有の対象として把握しようとした。

2017-11-18 16:04:30
マルクス研究会 @marx_society

しかし、ホロウェイは、『資本論』の経済学批判の延長に国家論を考えなければならないとした。すなわち、資本主義的社会システムを総体として把握しなければならないとし、そうでなければ「政治と経済の結合かつ分離」の理論を発展させることができないと考えた。マルクスのやろうとした路線。

2017-11-18 16:10:19
マルクス研究会 @marx_society

こうした路線を進展させたのは、1970年代から旧西ドイツで行われた「国家導出論争」。この論争は、『資本論』から論理的に国家の理論を導出することができるかを試みた。ミュラー=ノイジュス「社会国家幻想と賃労働と資本の矛盾」を嚆矢とする。

2017-11-18 16:14:18
マルクス研究会 @marx_society

背景として、国家が社会主義への構造転換の担い手となれるかをめぐる政治的対立の激化。当時、福祉国家によって修正された資本主義が議論の前提だった。そのため、ハーバーマスやオッフェに代表されるフランクフルト学派の後期資本主義論なども、国家が政治も経済も制御できるという「社会国家幻想」に

2017-11-18 16:21:12
マルクス研究会 @marx_society

それにたいし、国家導出論争の参加者は、資本主義社会において国家がどこまで資本の問題を解決する能力があるのか、社会主義への移行を国家によって実現できるのかを問うた。すなわち、資本主義国家の社会制御能力に疑義を呈し、その限界を定式化した。政治的影響力はもたなかったが、理論的には前進。

2017-11-18 16:26:21
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国家導出論争の手引きになったのが、ソ連の法学者パシュカーニス。パシュカーニスは、「階級国家」論を批判。彼は、階級支配がなぜ支配階級の私的な機構や直接的な支配ではなく、そこから切り離された公的権力による支配という形態をとるのかを問うた(『法の一般理論とマルクス主義』)。

2017-11-18 16:30:46