舞いと踊り について

甲野善紀 @shouseikan

とにかく殆ど一日中原稿に関わっていて、体を動かしていなかったので、寝る前に体を動かしておこうと、意識をゆるめて体に任せると、例によって舞の動きが出て、20分くらいは舞っていたと思う。

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先ほど随分久しぶりにダンサーの山田うん女史と電話で話したが、この舞いについて「ああ、それは本当に舞いですねえ」との感想だったので、舞いと踊りはどう違うのかを質問。

甲野善紀 @shouseikan

うん女史の解説によれば、踊りは人間の意志の部分がかなり入り、本来の舞いは身体の中から湧き出してくる動きに身を任せて動くことだという。

甲野善紀 @shouseikan

その他にも書き留めておきたいような事をいろいろと教えていただき、また是非会って一緒に体を動かしたいと思った。何しろ、うん女史は、その人としての人間力の見事さでは七ヶ宿の佐藤円女史と並んで私が最も深く尊敬している女性。

甲野善紀 @shouseikan

先日、ダンサーの山田うん女史から「舞」と「踊り」の違いについて教えていただいたが、そのツイートを見たとの事で、バリ島で私をいろいろな所に案内してくださったバリ舞踊の小谷野哲郎氏からメールをいただいた。

甲野善紀 @shouseikan

小谷野氏によれば｢お能は『舞』、神楽も『舞』、盆踊りは『踊り』。よく、『舞』は『回る』とも関連している言葉で、横方向の動き、一方で『踊り』は縦方向の動き、と言われております」とのこと。

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また、「『舞』には『型』が必要で、その習得が大切になってくること、儀式の中で天地をつなぐような役割を持っていること、大人数にはならないこと、（中略）

甲野善紀 @shouseikan

｢一方、『踊り』は、誰でも参加でき、大人数になることができ、その中でいわゆるトランス状態のような集団的な興奮状態に持っていくことができる、などでしょうか」とあった。

甲野善紀 @shouseikan

そして最後に、「『舞』と『踊り』の違いというのは、今まで考えていた以上に大切なことのような気がしています」と結んであった。

甲野善紀 @shouseikan

昨日ツイートしたバリ舞踊の小谷野氏からは他にも面白い話を伺った。例えば、バリ舞踊で、見ていて鳥肌が立つような、ある種の霊性を感じさせるような舞をする舞い手が少なくなってきており、その分岐点には芸術大学と”鏡”の出現があるそうだ。

甲野善紀 @shouseikan

鏡の問題は武術でも言われていて、自分の動きを鏡に映して確認することは、見た目だけをマネすることになりかねないので、今でも「決して鏡を見ながら稽古してはいけない」と指導しているところもある。

甲野善紀 @shouseikan

元々、バリ舞踊は神事で、各村の舞い手に見初められた子どもにしか継承されない、一子相伝に近いようなものだったらしく、師匠が弟子に手取り足取り、一対一で教示されていくものだったらしい。

甲野善紀 @shouseikan

そこでは姿見の類は一切なく、師匠の舞を見たり、一緒に舞ったりしながら「型」を覚えていくそうだ。「型」を習得していくと、「型」は定められた動きであるにも関わらず、まるで自ら湧き出でてくる動きのように感じ、自由ささえ感じるそうだ。

甲野善紀 @shouseikan

ところが、芸術大学の出現により、バリ舞踊を学びたい者が学べるシステムが入ってきて、鏡のある部屋で一度に30人くらいが「この曲は、こういう振りで踊る」という風にバリ舞踊を習うようになると、舞っているポーズや動きは綺麗だが、それ以上の”何か”が伝わってこない踊りになってしまったそうだ。

甲野善紀 @shouseikan

小谷野氏の感想では、形だけが綺麗な踊りには、「今日の、この場の音楽には、この動きしかない」という必然性が感じられないとのこと。ただ、譜面通りの振りを”なぞったり”、”こなしている”動きには「天地をつなぐような役割」を持った舞の凄みが出てこないのだという。

甲野善紀 @shouseikan

これは、武術の「型」の在り方にも繋がってくる話だと思う。

甲野善紀 @shouseikan

実際に、小谷野氏はバリ舞踊の名手と言われる方の舞で、何度か「これは凄いものを見た！」という場面に合ったことがあるそうだが、そういう舞は撮影しても、その舞が映っている部分だけ黒くなっていたり、その舞のシーンだけ撮影されていなかったりするらしい。