稲川淳二のつぶやき怪談　2017年10月27日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、船、出て行く。 湖の半ばぐらいまで来た時に、 その湖の水でもって、味噌汁作ったり、 ご飯炊いたりするんだそうです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、釣りをして、魚、取るでしょ？ それをおかずに食べて、それでまた船を漕いで。 で、ようやく向こう岸着いたそうですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

まあ、えっらくねえ、のんびりしてるんですよねえ。 そんなとこ、だったんですよ。 水路のある、その辺りは。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

だから、色んな話が、ある。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ついこの前まで、そういう生活をしてたんですよね、皆。 地元の人は。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

今でもね行ってみると、のんびりしてますもん。 皆さん。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で・・・、そこでのお話なんですがねえ。 滝本さんていう、お爺ちゃんなんですが。 この人が、若い時に体験した話なんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

親類に用事があって、滝本さん、隣村に行った訳だ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、用も済んだんで、帰ろうかなと思ったら、 「まあ、久しぶりなんだから、まだまだ良いじゃないか」と。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「もっとゆっくりして行きなさいよ」 って、引き止められてねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

酒が入って、だんだん良い気持ちになって、喋っているうちに、 「ああ、随分と遅くなっちゃったんで、そろそろ帰るわ」 「これは駄目だ。遅くなっちゃったな」 「じゃあ、これで、もう引き上げますよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

いざ、帰ろうと思ったら、その段になってねえ、 ひょいっ、と、外に出てみたら、明かりが無いんだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

月がないんですよ、珍しく。 闇夜、なんだなあ・・・・。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

当時の闇って、本当に本当の真っ暗だったそうですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

街灯なんて無いから。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたら、その親類の人が、 「これ持って行きなさいよ」 って、提灯、貸してくれたんで、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「じゃあ、悪いけど、借りて行くわ」 それ持って、堤防の上に、細い道があるんですが、そこをねえ、 とっ、とっ、とっ歩いて行った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その堤防の道って、湖に沿って、ずーっとあるんです。 で、北浦の湖岸って、だいたい真っ直ぐですから。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

だから、ずーっと、どんどんどんどん、真っ直ぐ行けば、 自分の家に帰れるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

分かり易い訳だ。 余分な道も無いしね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

だけど、分かり易いって言ったって、なにしろ闇夜なんですよ。 そこ、歩いて行く訳でしょ。 しかも、片側は、広い湖ですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

黒い水面が、 シーン と、広がってるんですよねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でー、もう片一方はと言うと、ずーっと畑が続いている。 人家が無い。 それで、そっちにも明かりが無いんだな。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

提灯の周りだけは、うっすら明るいんですけど、 あとはもう真っ暗ですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、そこを、一人で、 とっ、とっ、とっ、とっ、歩いて行く。