コールド・ワールド #2
「AAAAARGH……!」ニンジャといえど、この灰色の海で船を失えば、死の運命は免れまい。ゆえにこそ彼はあのとき船員を生かしたのであろうか。だがそれももはや無意味か……エイブは破砕する船のへりにしがみつき、無駄な思考をさ迷わせた。「イイイイイヤアーッ!」ニンジャスレイヤーが、跳んだ! 23
2017-12-01 23:03:00「ゴアアアアア!」ウラシマ・ニンジャが吠えた。ニンジャスレイヤーが掴みかかった。海に呑まれながら、エイブは神話的イクサ光景を目に焼き付けた。「親父」彼は声にならぬ言葉を呟いた。水、泡、残骸。破滅が全てを飲み込んだ。 24
2017-12-01 23:05:36ドオン。……ドオン。灰色の波が、灰色の砂浜を洗う。寄せてかえす波の狭間に、赤黒のニンジャは倒れ、動かない。 26
2017-12-01 23:10:00ドオン。……ドオン。灰色の波が、灰色の砂浜を洗う。寄せてかえす波の狭間を、赤黒のニンジャは歩く。赤黒のニンジャの首根を掴み、ズルズルと引きずっている。 27
2017-12-01 23:12:40ドオン。……ドオン。灰色の波が、灰色の砂浜を洗う。寄せてかえす波の狭間を、赤黒のニンジャは進む。いつしか再び一人。(((マスラダ。バカめ。未熟))) ニンジャは呪詛を漏らしながら、足を引きずるように進む。 28
2017-12-01 23:14:37ドオン。……ドオン。灰色の波が、灰色の砂浜を洗う。寄せてかえす波の狭間を、赤黒のニンジャは進む。メンポは砕け、剥がれ落ちる。波に足をもつれさせ、倒れかかる。マスラダは歩く。その足跡を灰色の波が消してゆく。 29
2017-12-01 23:17:18「現れたか」砂の上に佇む長い髭の男が、マスラダを目で追う。裾の長い、鈍色にくすんだ衣が、この浜辺のグラデーションの一部を形成している。「そう何度も助けはせんと、俺は言ったぞ」男は顔をしかめた。マスラダはただ前を見て、よろよろと進み続ける。 30
2017-12-01 23:22:56「アイツ、どうするつもり」鈍色の男の傍ら、ダウンジャケット姿の小柄な少女が問う。「ゾーイ」鈍色の男は少女を見る。少女は不服げだ。「アンタはどうせ、ちょっかいかけるに決まってる」「奴が否応なく俺のもとへ向かってくるのなら、それは仕方ない。運命だ。そういうものだろ」 31
2017-12-01 23:26:35既に彼女の隣に男はいない。ゾーイがふたたび波打ち際を眺めると、残骸めいた赤黒のニンジャが進む先、鈍色の男は立っている。「ちぇ」ゾーイは肩をすくめた。 32
2017-12-01 23:31:28