2017年12月3日

アシちゃんと狂気の館

自らのにょろわーソロSSを書く奴がいるらしい
0
アシス@カクヨム @asis3521

さて、問題です。 目覚めた瞬間に見知らぬ光景が広がっていた場合、人間はどのような反応を示すでしょうか。

2017-11-26 21:59:33
アシス@カクヨム @asis3521

答え。 その時はまだ夢の続きをみているのかと思った。だけど、意識がはっきりするにつれてそれは違うのだろうと思い始めた。 目覚めたのは見知らぬ部屋の床だった。ベッドも何も置かれていない、何も置かれていない棚と机だけがある書斎のような部屋だ。

2017-11-26 22:07:04
アシス@カクヨム @asis3521

……とりあえず、私自身の記憶を掘り返すところから始めよう。少なくともこんな部屋で寝た記憶はない。己の意思でこんなところに来たというわけではなさそうだ。 で、あれば私が眠っている間に誰かに連れてこられたというのが筋だろう。

2017-11-26 22:14:42
アシス@カクヨム @asis3521

誘拐、という単語が頭に浮かんだ。 「ひっ……!」 思わず自分の身を抱きしめた。あたりをキョロキョロと見回す。人影らしきモノはない。 ……落ち着け。落ち着け。冷静に。冷静に、ね? 仮に誘拐だとしたら、まったく拘束されておらず、見張りすらいないのはどういうことだ。

2017-11-26 22:21:42
アシス@カクヨム @asis3521

これでは簡単に逃げられるじゃないか。と、窓へと近寄る。下を覗いてみると、今の位置は高いことが分かった。ここは三階くらいだろうか。窓越しにあたりを見回してみるが、つたって降りていくこともできなそうだ。こちらからの脱出はむりだろう。

2017-11-26 22:30:26
アシス@カクヨム @asis3521

じゃあ、その反対側にある扉からはどうだろうか。そそくさと、扉の方へ向かう。耳を扉に押しつけて外の様子を窺うが無音。誰かがいるようには思えない。流石に鍵が開いてるとは思えないけどなー、と身体を扉に押しつけながらドアノブを回すと……。 開いた。

2017-11-26 22:36:39
アシス@カクヨム @asis3521

あまりにアッサリといったので、思わず顔がにやけてしまった。 そのままゆっくりと開き、顔だけひょっこり出して左右を見る。誰かがいる気配はない。 「……よし」 確認を取れたので私は部屋を飛び出した。素早く、なるべく足音を立てないように廊下を駆け抜ける。

2017-11-26 22:42:24
アシス@カクヨム @asis3521

廊下は窓がなく、明かりらしきものもないせいで日中だというのに薄暗い。階段を探して下に降りようにも注意深く探さないと見逃してしまうかもしれない。 てか、広い。思ったよりも広い。お屋敷かなにかなのだろうか。 これは階段を見つけるのにも苦労するかもなー、と思ったときだった。

2017-11-26 22:51:15
アシス@カクヨム @asis3521

異質な“何か”が視界に入った。 思わず急ぐ足を止めた。 視界が悪くてよく分からないが、何かが廊下の上に横たわっているのは分かった。 「え、何、あれ……」 近寄る。少なくともこちらを襲ってきそうな気配はない。 ただ近づくにつれて、私の鼻を嫌な匂いが襲ってくる。

2017-11-26 23:04:07
アシス@カクヨム @asis3521

錆びた鉄の臭い……。いや、これは……。 分かっていた。見てしまえば私は必ず後悔することになるだろうと。 だけど、それ以上に知りたかった。『このお屋敷の中で何があって、どうして私がこんなところにいるのか』と。 だから、本能から鳴り響く警鐘を無視して私はそれに近寄り、凝視した。

2017-11-26 23:07:59
アシス@カクヨム @asis3521

あぁ…………。 見た。 理解する。 理解した。 理解してしまった。

2017-11-26 23:09:25
アシス@カクヨム @asis3521

それが人であると。 いいえ、人であったものであると。 内蔵の殆どが獣に食い荒らされたようにぶちまけられ、恐怖に歪んだ顔を浮かべたまま転がる人間の死体であると。

2017-11-26 23:12:00
アシス@カクヨム @asis3521

胃の中からわき上がる嫌悪感。口を押さえ、なんとか我慢しようとしたが、無理だった。 「……ゲホッ、ゲホッ」 身体を曲げて咳き込んだあと、私は踵を返して歩き出した。視界が潤んで歪んでいるが関係ない。走る元気はないけど、とにかくその場から離れたかった。

2017-11-26 23:18:28
アシス@カクヨム @asis3521

「……何、なんで……?なんで、私がこんな目に……」 私は思わず呟いた。 「た、助けて……。誰か、助けてよ……!!」

2017-11-26 23:22:43
アシス@カクヨム @asis3521

──さて。 ──狂気の針をもう一度進めるとしよう。

2017-11-27 22:47:23
アシス@カクヨム @asis3521

私は、とぼとぼと歩きながらトイレか洗面台がどこかにないかと探していた。口の中がどうにも気持ち悪いし、それ以上に抑えようとして手が汚れてしまっている。 いくら広いお屋敷とはいえ、というかお屋敷だからこそこの階のどこかに水が流れる場所があってもいいだろう。

2017-11-27 22:58:12
アシス@カクヨム @asis3521

結果、簡単に見つかった。私は汚れていない右手でドアを開けた。 ……広い。 ぱっと見三畳ほどはありそうな空間に便器と洗面台だけが置かれていた。空間の無駄遣いもいいところである。 とそんなことはおいておいて、だ。 私は洗面台へと向かい蛇口をひねった。

2017-11-27 23:05:19
アシス@カクヨム @asis3521

ふと思った。この家には誰もいなさそうだし、既に水道なんて使い物にならないのではないかと。 結局それは杞憂でしかなかった。ジョロジョロと水が流れ落ちる。 だけど。 「……ひっ!」 私は腰を抜かしてそのまま後ろに倒れ込んだ。 「あっ……あっ!」 流れてきた水が赤色に染まっていたからだ。

2017-11-27 23:15:57
アシス@カクヨム @asis3521

それが血かどうかは、薄暗いトイレの中では判別できない。 平時であればちょっと驚くだけですんだだろう。だけど、折れかけていた私の心を砕くには十分なトラップだった。 「やめてよぉ……。やだよぉ……。なんで私がぁ……」 嗚咽が漏れる。揺さぶられに揺さぶられた私の感情はとうに限界だった。

2017-11-27 23:22:53
アシス@カクヨム @asis3521

泣いた。ずっと泣いた。気がすむまで泣いてやった。 そして。 「……ああ」 どれほどの時間が経ったかは分からないが、とにかく長い時間が過ぎて私のあふれ出た感情はようやく消えた。 耳に水の音が入ってくる。洗面台のほうを見上げると透明な水が流れ出ていた。

2017-11-27 23:30:08
アシス@カクヨム @asis3521

「……なーんだ」 私は立ち上がって手を洗う。流石に口を濯ぐ気にはなれないが。 ふと正面の鑑に目が映る。涙で崩れまくった顔で苦笑を浮かべる少女がそこにはいた。 「酷い顔だなぁ。こんなんじゃあ帰っても合わせる顔がないかも」 …………帰る、か。

2017-11-27 23:35:13
アシス@カクヨム @asis3521

「そうだよ。どんだけ酷くても帰らないと、ね」 私の心配をして、帰りを待ってくれている人がいるはずなのだから。 その期待を裏切るわけにはいかない。 こんなところで泣き崩れてる場合じゃない。 帰るんだ。私の帰るべき場所に。

2017-11-27 23:37:33
残りを読む(29)

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?