Affair Story 「また会える日まで」

『冬』に愛着わき過ぎてまた突発に長編したり。最初が長過ぎですなー。もっとちゃんと考えながら書かないと。プロット作れよ。
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音が鳴る。目覚ましの音だ。俺は薄く目を開き、目覚まし時計を見つけ、その頭を叩く。音が鳴りやみ、もう一度意識がまどろみ始める。よし、もう少し寝よう。そう思ったが、「起きろ!」さっき目覚ましにしたように、俺の頭が叩かれた。

2011-03-30 21:14:35
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もう一度目を開ければ『音』がいる。視線をずらせば、さっき止めたはずの目覚まし時計がまた音を立てている。「起きなくていいのか?」「起きるよ。だから手下ろしてくれないか?」「だったら――」『音』の視線を追えば目覚まし時計。その音を止めれば、『音』が拳を降ろして消えた。

2011-03-30 21:15:34
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さて、起きるとは言ったがどうしたものか。俺は目覚まし時計をちゃんと停止させて置き直し、枕に顔をうずめる。「起きへんのどすか?」訪ねてくるのは『睡魔』だ。俺は顔も上げず、「起きたいけどまだ眠い……」「きょうび暖かくなってきたんやし、ほんならもう一眠りしまひょか?」

2011-03-30 21:17:41
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そうだなぁ、とまどろみの中布団を引っ張る。今までは寒さを防いで眠気を増進させてくれていたそれも、今は重さの方が大きい。暖かくなってきたことを実感させる。

2011-03-30 21:19:08
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「起きるんどすなぁ」上体を起こした俺に『睡魔』は少し残念そうな顔をする。「また夜に頼むよ。今日はちょっと、やりたい事できたからさ」「そうでっか。ほな、また夜に」『睡魔』が立ち上がるのに合わせ、俺も布団を畳む。押入れに入れる頃には『睡魔』はもういない。

2011-03-30 21:20:26
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カーテンを開ければ暖かい日差しが部屋に差し込み、窓を開ければ、「やー!」元気な『風』が入りこんでくる。「おはようございます!」「ああ、おはよう。元気だな」「はい! 今日は天気よくてポカポカですよ!」そう言って抱きついてくる『風』は、確かに冷たくない。

2011-03-30 21:21:52
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手早く朝食をとって『風』と一緒に外に出る。部屋の中よりも外の方が暖かいと思う程度には日差しもあり、横の『風』も走り回るのではなく、周りに目を向けながらゆっくり歩くもの。和だ。これは、そう。もう来ているのだろう。「こんにちは~」

2011-03-30 21:23:53
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挨拶に顔をあげれば、思い描いていた顔がある。「よぉ、久しぶり」「はい、お久しぶりですね~」「元気だった?」「ええ、元気ですよ~」ふわりとした髪と、おっとり笑顔。そして柔らかい物腰。

2011-03-30 21:26:08
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『風』が走り『春』に抱きつけば、俺の手が引かれる。見下ろせば『匂い』がいた。漂ってくるのは暖かい日の匂いと、「桜、そろそろ?」「はい、今年は少し寝坊しちゃいましたけど、もうすぐ咲きますよ~」「本格的に春になるんだな」「またしばらく、宜しくお願いしますね~」「ああ、うん。よろしく」

2011-03-30 21:28:04
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向けられた笑顔に俺も笑顔を返す。しかし、その俺の笑顔を見て、『春』は笑顔を弱めた。「どうかしましたか~?」「え?」「笑顔、作れてませんよ~?」言われ、頬に手を当てる。それで今の俺の表情が分かる訳ではないが、手を引く『匂い』と、『春』に抱きつく『風』の表情を見れば分かる。

2011-03-30 21:30:02
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「悲し、そう……」『匂い』のおずおずとした声が届く。俺は身をかがめ、『匂い』の頭に手を置いて眉尻を下げる。「ああ、そうかもな……」衝撃に目を向ければ今度は『風』が抱きついて来ていた。「どうし――」力を込めてきた『風』が、少し冷たい。これは、と顔を上げ『春』に目を向ける。

2011-03-30 21:31:24
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『春』は両手を挙げて伸びをする。「ん~、今日は日差しがよくて気持ちいいですね~。私、少しお昼寝しちゃいたくなってきました~」くす、と。目で弓を引き、「サボっちゃいましょ~。その間、『冬』ちゃんにもう少し頑張ってもらいましょうかね~」「お前……」「夕方くらいに、また会いましょう~」

2011-03-30 21:32:38
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『春』が手を振りながら去って、俺は立ち上がる。見上げてくる『風』と『匂い』、それぞれの頭に手を置き、「悪い、用事ができた」「ぬー、今日はしょうがないですね……」「が、頑張って、ください」「ああ、またな」

2011-03-30 21:33:30
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さて、『風』と『匂い』と別れはしたがどうしたものか。あいつはどこにいるのだろう? こんなことなら二人に聞いておけばよかったかもしれないが、「いや、男たるものこういうときくらい何でもやってのけるぜ的背中をみせるもの……」ふむ、すなわち今の俺はカッコつけて失敗した男か。

2011-03-30 21:35:50
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何だすげえカッコ悪いな、これ。うーむ、しっかり見つけ出して名誉挽回せねば。思い、周りを見回しながら歩いていると、「あら」と馴染みのある声。「何か探し物?」『君』がゆっくりと歩いてくる。「あー、探し物って言うか、探し人……あれ、人か? ん? 探しモノ?」

2011-03-30 21:37:05
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何それ、と笑う『君』に俺は苦笑いを返す。「探し物の前に、悩み事?」「え?」「たぶん、だけどね」『君』は反転して俺の横につくと、こちらではなく前を見ながら、

2011-03-30 21:38:41
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「貴方は、彼女を見つけようと思えばすぐに見つけられるはずよ。どうすればいいのか、理解してるはずだもの。でも見つけられない。何故でしょうか。それは、貴方がまだ彼女に会おうとしてないからじゃない? 貴方は――」

2011-03-30 21:40:34
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「――本当に、今、彼女を探してる?」

2011-03-30 21:40:54
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どうなのだろう。俺は確かに、探している。会おうとしている。しかし、会ってどうする? 何をする? 何を言う? そこが、空っぽだ。

2011-03-30 21:41:21
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「まいったな……」「見つからない?」「うん。理由が」「じゃあ整理しましょうか」「え?」

2011-03-30 21:42:37
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「貴方は、どうして会いたいの?」「それは……もう会えなくなるから」「また会えるじゃない」「そりゃ、また会えるは会えるけど……しばらく会えなくなるし」

2011-03-30 21:43:19
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「会えなくなるから会いたい。どうして?」「どうしてって……それは……」「会っていいたいのは、別れの言葉?」「それもあるけど、それ以上に……」

2011-03-30 21:44:20