【エピック・オブ・ニョロワー/禍津尾神狐伝】(えげつない展開注意)

ムーンちゃんの幕間の物語
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ムーン @ZevoryuSyon

色々あって、むーんが目を覚ました時、周りに姉(ということになっている)、ムーン姿はなかった。 置き手紙には 『自分を見つめ直すため、再び旅に出ます』 の一文のみ。 今……彼女は…… 1 #EoNyoro

2018-01-01 22:30:21
ムーン @ZevoryuSyon

【■■■■■■/禍津尾神狐伝】 2 #EoNyoro

2018-01-01 22:34:18
ムーン @ZevoryuSyon

彼女、ムーンは今………… 景色のいい海の見える丘にいた。 「ふう。やっぱりこの場所は気持ちいいわね〜」 彼女の持ち物はいつもの服何着かに、それなりの野外生活キット。博士のお札数枚に、護身用の短杖。 あえて人の少ないところやいないところを回るのが彼女のやり方だ。 3 #EoNyoro

2018-01-01 22:41:05
ムーン @ZevoryuSyon

「さて、次はどこに行こうかしら」 長年使い古した地図を広げる。 「ここは削られて人が住むようになってきたし、こっちらへんかしら。それとも、こっちに……」 地図をみ、次の行く先を探す。 今回の旅は、見つめ直す旅だ。帰るべき場所は…… 「帰って、いいのかな……」 4 #EoNyoro

2018-01-01 22:52:17
ムーン @ZevoryuSyon

(あの場所には、私が一番大切にしたい人と、その人が一番大切にしたい人がいる。告白した以上、そのあの人や、その大切にしたい人は安心して暮らせないかもしれない……いやいや、うん。それをすっきり振り切るための旅でしょ!今回は……) 彼女は地図から顔を上げる。目の前には雄大な海 5 #EoNyoro

2018-01-01 22:58:09
ムーン @ZevoryuSyon

夕刻過ぎ、雄大な海に太陽が沈む。そうすれば彼女が好きな月が空に現れる。しかし、彼女の気持ちは晴れない。 「また今夜も……あの"夢"見るのかなぁ」 ……彼女は夢を見るようになっていた。幸せだったあの居場所では、見なかった夢、昔は頻繁に見ていたを…… 6 #EoNyoro

2018-01-01 23:03:22
ムーン @ZevoryuSyon

夢の内容は、最初はあらゆるところがぼやけ、よくわからなかった。 繰り返し見ることで、次第に鮮明になる、そんな夢だった。 朧げな世界から、次第にそれが森の中だとわかってゆく。無音の方がマシな雑音は、次第に木々が揺れる音と、誰かの叫び声に…… 7 #EoNyoro

2018-01-01 23:09:29
ムーン @ZevoryuSyon

そしてもう一つ、彼女にとって気ががりなことがあった。旅の途中に見かける、私と同じ後ろ姿を持つ、赤黒と黒の影。彼女の大切な人達とは違い、凍るような雰囲気を持つ存在。 今回の旅は何かが違った。そう、何かが違うのだ。 8 #EoNyoro

2018-01-01 23:16:37
ムーン @ZevoryuSyon

「あっ、そろそろ寝床探さなきゃ」 次第に太陽は海に沈み行く。彼女は海辺から立ち去り、森の中に入る。ここから適当な、雨風防げる場所を探し、そこを寝床とするのだ。 「あっ……」 ……徐に空を見上げる。今夜は新月。普段は空に輝く月はない。 9 #EoNyoro

2018-01-01 23:24:03
ムーン @ZevoryuSyon

--------------------- 新月が見えないため、少し難儀したが、今夜もちょうどよく雨風しのげる岩場を見つける。そこに害獣よけの結界を貼り、寝床とするのだ。火を起こし、暖と灯りを取る。簡易的な食事と、気分だけのアルコールを取り明日の準備をする。 ……その時だ 10 #EoNyoro

2018-01-01 23:29:16
ムーン @ZevoryuSyon

「っ!」 彼女は森の先に、例の冷たい雰囲気を持つ黒い影を見つけた。近くに置いてある短杖を持ち、警戒態勢をとる。 その存在を目と妖力で追う。その存在はふらふらと森を漂ったのち、ふと消滅するように消えた。 (毎晩こんな感じだし、戻るかどうか、考える暇もないわね) 11 #EoNyoro

2018-01-01 23:33:44
ムーン @ZevoryuSyon

いなくなった後も、警戒は続ける。ふとしたタイミングでまた現れる可能性があるからだ。 「もう……いいか……」 ……警戒を説いたのは、それから数時間ほど後だった。 気がつけば時刻は24時を過ぎている。 警戒で疲れ切った彼女は、短杖を近くに置き、そのまま寝袋に入る。 12 #EoNyoro

2018-01-01 23:39:39
ムーン @ZevoryuSyon

寝袋に入ると、急速に無くなって行く意識。寝袋の暖かさが彼女を包む。……彼女に包まれた時ほど、安心や幸福感はなかったが、それでも眠るには十分だ。そして……彼女が意識を手放す直前 彼女の目の前に、あの赤黒い姿と黒い九尾の尻尾の持ち主が、彼女と同じ顔を持つものがいた。 13 #EoNyoro

2018-01-01 23:45:53
ムーン @ZevoryuSyon

------------------ 「……んっ……ここは……」 彼女が目を覚ましたのは、木々が揺れる森の中。きっと例の夢の中なんだろう……。 「今日は……夢って感じじゃないわね……」 手を握ったり開いたり、軽く体を動かす。感覚は、特に現実と変わりないようだ。 その時だ 14 #EoNyoro

2018-01-02 00:10:29
ムーン @ZevoryuSyon

「マガツビ様が出たぞー!」 森の先から、誰かの叫び声が聞こえる。彼女はその声がする方に勢いよく駆けてゆく。そして、森の開けたことところに出る。 目を上げると、九本の尾を持つ山ほどの大きさを持つ狐。そして、それに蹂躙されている町。 15 #EoNyoro

2018-01-02 00:14:45
ムーン @ZevoryuSyon

「何よ……これ……」 彼女は呟く。彼女の目の前に広がる光景は圧倒的だった。しかしそれ以上に彼女を混乱させたのは、目の前の巨大狐……マガツビの存在だ。 「私と……同じ……?」 そう、そのマガツビと呼ばれる存在からは、彼女と同じ力を感じることができたからだ。 16 #EoNyoro

2018-01-02 00:18:21
ムーン @ZevoryuSyon

「そう、あれは私たちの大元、禍津日神の分霊の一つ。災厄の獣、マガツビ」 ムーンは声のする方を振り向く。声の主は、まるで鏡写しのように、ムーンと同じ姿をした存在だった 「あなたは誰!」 その存在にムーンは問う 「私はあなたよ。奥手で優しさに飢えてて、振られちゃったムーン」 17 #EoNyoro

2018-01-02 00:23:19
ムーン @ZevoryuSyon

彼女達の会話の後方で、マガツビは街を破壊してゆく。人の反抗する声と、悲鳴が辺りに木霊する。 「懐かしいでしょう?人々を踏みつぶしたり、燃やす感覚。ゾクゾクしない?」 彼女と同じと名乗る存在はムーンに語りかける。 「私と一緒とか、人々を潰すとか何言ってるのよ!これは何?!」 18 #EoNyoro

2018-01-02 00:29:46
ムーン @ZevoryuSyon

「これは何って……あなた、もしかして覚えてないの?」 「覚えてないも何も、私がこの姿になったのは、最近のことよ!こんな昔のことは知らない!」 その存在は、ニヤッと邪悪に笑った。 「あらぁ〜そう。じゃあ、思い出させてあげないとねぇ。二度と人の中に戻れないように、ね」 19 #EoNyoro

2018-01-02 00:33:41
ムーン @ZevoryuSyon

その存在が、指を鳴らす!すると、彼女達の周りの光景が、急激に変わってゆく! 「さあさあ、最初に見るシーンは私たちの大元、マガツビの誕生からでしょう!」 その存在は楽しそうに笑う。目の前には九尾の狐。周りには列をなす大勢の人間。 「これは……祀られてるの?」 #EoNyoro

2018-01-02 00:37:31
ムーン @ZevoryuSyon

「そう、まだ怪異が世に蔓延る時代。私たちの大元は祀られてたのよ。災厄を止め、魔を穿つ獣、マガツビとして」 人の列は、続々と伸びてゆく。その存在は、感慨深いようにその光景を眺める。 「実際私たちの大元は頑張ったのよ。時には怪異の類を沈め、時に晴れを生み出したり、ね」 20 #EoNyoro

2018-01-02 00:43:50
ムーン @ZevoryuSyon

「でもね、そんなのも、怪異が頻繁に現れなくなるまでの話」 次第に列が短くなり、やがて一人としていなくなる。 「怪異の数が少なくなるのと人が怪異に立ち向かえるようになると、人は全くとしてこなくなった」 語り部の存在はムーンの方を見た。 「貴女も感覚なら、覚えてるんじゃない?」 #EoNyoro

2018-01-02 00:48:48
ムーン @ZevoryuSyon

「……私は……確かに知ってる……。人に触れ合う喜びと、それが無くなる、一人になる強い、どうしようもないくらい強い寂しさを……」 その事を聴くと、語り部の存在は頷いて。 「えぇ、このくらいのことは覚えているようね。さて、寂しい中でも、私たちの大元は生きていったわ」 22 #EoNyoro

2018-01-02 00:55:10
ムーン @ZevoryuSyon

「実際、崇められるにつれて、どちらかといえば神獣の側としての側面が育っていったのね。寂しさに耐えながらも、霞を食べ、雨で喉を潤して、生きていったの。でも、それも突然終わりを告げるわ」 再び世界が流転する。目の前には九尾の狐。そしてそれを囲む人々。手には矢。 23 #EoNyoro

2018-01-02 01:00:07
ムーン @ZevoryuSyon

「人々は、自ら怪異を打ち倒せるようになると私たちの大元を殺しに来たの。かの存在が、今まで人々や街を守った事を忘れて、ね。」 語り部の存在はムーンの方を見る。 「この光景って……まさか!」そう言いながらムーンは矢を構える人を止めに行く。しかし、ムーンは触れることができない 24 #EoNyoro

2018-01-02 01:04:23
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