「海外の真似」ではない、東京都水道局の「民営化」の経緯

どちらかというと、人(なかんずく公務員)を増やしづらい状況で、必要に迫られつつ海外をむしろ反面教師にして、質を維持するための活動、という側面での、大貫剛氏による解説
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大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

僕が水道局にいた10年ぐらい前には世界中で水道民営化の失敗事例が上がっていて、それをいろいろ研究し、体制や法の整備を進めてようやく現在の民営化に辿り着いてるんだけど、そういうの知らずに「失敗しただろ、ダメだ」って言うのはいわゆる老害と同じ論理だと思うんだよね。 twitter.com/tsuyup/status/…

2018-01-04 17:46:19
つゆぴ @tsuyup

水道民営化なんて世界中でダメだこりゃになってるのに「世界の流れ」と掻き立てる日経新聞はなかなかすごいと思う。多分大きい会社だから、現場の記者が書いた記事がデスクに上がるまで五年、校正に五年、印刷に五年くらいかかってるのだと思う。

2018-01-04 07:33:05
のあしぐま @wIFptg2U0IdNHtG

@ohnuki_tsuyoshi すみません、そういった経緯があるとは知らずにリツイートしておりました。よろしければ現在の改善された民営化について、どのように調べれば知ることができるか教えて頂けますか?

2018-01-04 20:25:48
FABO @Fabo0130

@ohnuki_tsuyoshi 「体制や法の整備を進めてようやく現在の民営化にたどり着いている」と仰っていますが、具体的にどのような法律で、民営化のデメリットを払拭できたのか、すごく興味があります。

2018-01-04 22:42:01
ゆーぢ(岐阜県産) @_inkbn

@ohnuki_tsuyoshi @WangChangHardy 調べても出てこないのですが、具体的にはどの様な体制や法の整備が進んだのでしょうか?人の生存には何よりも水ですから、災害時などにおける責任の所在や、いち早く上下水道の復旧をするなどを考慮した場合、インフラの中では一番民営化してはならないと個人的には思います。

2018-01-04 20:47:45
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

この話に「だから成功すると言っている人がいる」みたいなコメントを複数見たけど、僕は「だから成功する」とは一言も言ってない。過去の失敗例ばかり挙げて、中身を見ずに「だから失敗する」と決めつけるのは間違いだと指摘しただけ。それは単なる停滞。 twitter.com/ohnuki_tsuyosh…

2018-01-06 10:19:34
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

それと「現状のままで問題ない」と言う人もいるが、それは現状を自分の視点でしか見ていない。まず問題意識があるからこそこういう話をしているのだし、海外の状況もつぶさに調べた上で問題解決の方向性を検討している。「問題ない」という理由で門前払いするのもまた、老害的思考。

2018-01-06 10:22:23
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

もうひとつ、僕は必ずしも民営化が唯一の選択肢とは思っていない。公営の大規模な水道事業体を作ることも有力な選択肢と思う。それが不可能な大きな理由は、日本には「公務員は減らすべき」といったコンセンサスがあり、公務員による水道事業の維持自体が困難になっていることが挙げられる。

2018-01-06 10:24:51
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

人口は減りつつあり、公務員も減らされ、市町村ではほんの数名~数十名の職員で水道を運営していることもある。知識、経験、マンパワーなどが絶対的に不足する。市町村合併で規模を大きくできればいいが、住民は合併を「住所が変わる」としか理解しないから、こういったことに必要性を感じない。

2018-01-06 10:29:49
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

こういう問題は水道だけではなくて、福祉とか経済振興とか、新しい制度や理解するべき社会情勢とかは膨大にあるのに、公務員は減らされるので能力的にパンクしつつある。民営化でなくても広域連合などの解決策もあるが、住民はそういうことに関心がないので、デメリットばかり言い立てる。

2018-01-06 10:40:18
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

つまり、水道民営化の根本的な視点は ・公務員削減への対応 ・専門性の高まりに適応できる人材確保 ・スケールメリット を同時に解決する方法は水道事業の外部委託しかないということ。

2018-01-06 10:44:36
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

その外部委託先は民間資本である必要はなく、公的主体でも良い。その代表例が、東京都水道局。

2018-01-06 10:45:52
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

東京都水道局は、本来市町村業務である水道を、特別区では都が担うことになっているために設立された、地方公営企業。局という名前だが、東京都庁から独立した法人。

2018-01-06 10:49:18
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

東京都水道局は本来、特別区の水道事業のための組織だが、多摩地域の大半の市町の水道事業を移管されてる。このため各市町は個別の浄水場などを持たず、専門家が多摩地域全体を担当しているので、人的にも効率が良くなった。

2018-01-06 10:52:05
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

ところが東京都水道局は多摩地域の市町から水道業務を移管されるにあたって、公務員の定数増を充分に認められなかった。市町の水道担当がなくなる分、全体では純減になってしまう。その分を補ったのが、民間委託だった。

2018-01-06 10:54:02
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

また、この「多摩水道モデル」に埼玉県も着目した。多摩地域も埼玉県も、独自水源のない狭い市がたくさんある。広域の水道事業体に移管した方が効率的なのは同じ。しかし市業務と県業務を兼ねる東京都と異なり、埼玉県やさいたま市にはそこまでの素地がない。

2018-01-06 10:57:36
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

東京に隣接する埼玉県内の市の水道を東京都水道局に移管する案もあったようだが、さすがに東京都が埼玉県内まで面倒を見るのは本末転倒だった。

2018-01-06 10:58:57
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

一方、東京都水道局の悩みも増えてきた。公務員なので増員が困難、若い経験者を中途採用したくてもできない、ベテランを60歳で退職させると技術継承が困難、などなど。そこで、水道局と設備メーカーなどとの合弁企業「東京水道サービス」を設立し、そこを受け皿にした。

2018-01-06 11:03:12
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

東京水道サービスは、東京都水道局の一部エリアをまるごと担当したり、東京都職員に対する研修を行うなど、公務員では困難な専門性のある仕事を担当する企業として業務を拡大している。また水道局の定員を削減し、東京水道サービスへ出向させて双方の人材育成もしている。

2018-01-06 11:05:38
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

東京水道サービスは業務エリアを東京都内に限定されないので、近隣自治体の水道事業も引き受けることができるし、海外の水道事業への技術協力もしている。厚生労働省は東京水道サービスが「日本版水道メジャー」になることを期待している。

2018-01-06 11:07:36
生田よしかつ @ikutayoshikatsu

@ohnuki_tsuyoshi なるほど。大分解ってきました。ありがとうございます。 海外の漏水率は30%なんてザラだそうですね。これは頼もしい商材ですなぁ。

2018-01-06 11:13:37
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

@ikutayoshikatsu はい、東京都職員は技術交流はできても、金をもらってコンサルティングするようなことはできません。その金で職員を増やすことができないからです。東京水道サービスにはそのような役割も期待されていますね。

2018-01-06 11:09:07
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

@ikutayoshikatsu 海外の水道事業民営化がいろいろ失敗しているのは、設備を売って元をとったら人材も育てずに引き揚げてしまうからです。日本は、現状分析と改善の模索、技術協力と人材育成で水道事業を育てることを輸出する。そういう「日本版水道メジャー」を育てることが彼らの夢です。

2018-01-06 11:17:26
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

東京都水道局の玉川浄水場には研修開発センターがあり、最新の施工方法や、旧式設備の補修方法などを、実物を使って訓練する設備がある。設備は都のものだが、講師は水道局OBの東京水道サービス職員で、一般の水道工事会社や海外からの研修生も受講できる。こういうことも純公営の水道局では不可能だ。

2018-01-06 11:14:12
大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною @ohnuki_tsuyoshi

このように、少なくとも東京都水道局の民営化は「海外が民営化しているからうちも」という発想ではなく、独自にひとつずつ進めてきたもの。その過程で海外の事例はつぶさに調査しているし、海外事例は失敗、反面教師と考えている。海外を無批判に真似ようとしていると考えるのは的外れと思う。

2018-01-06 11:32:15

ちょっと追記:「民営化」の定義問題