ちょっとだけ ＆ 月の話

ひつじ(ひっつん) @mogumogu_1260

#ちょっとだけ 275 〜電車の遅れをお知らせします〜 『はぁ…遅れか』 携帯の電源をつけようとすると 「月！！！」 『え？』 亮が私のもとへ走ってきてる 「はぁ…はぁ…間に合った」 『どうしたん？！今日合格発表やなかったん？』

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#ちょっとだけ 276 「せやで！もう見てきた！」 『どうやったん？』 「俺やで？合格やろ！笑」 『おめでとう！！！！すごいじゃん！』 亮の手を掴むと、ちょっと亮の顔がくもった 『どうしたん？』 「俺な…お前にひどいことしようとしてた」 『え？』

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#ちょっとだけ 277 「村上先生から手紙預かってたんやけど、渡すの迷ってた」 『村上先生？』 「これ…」 手渡されたのは、薄いピンクの封筒 「昨日、村上先生に会って頼まれてん…」 『ありがとう…電車の中で読むね』 「あぁ…あとな、俺夢見つけたから！」 『え？』

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#ちょっとだけ 278 〜電車の到着をお知らせします 遅れておりました電車が間もなく到着いたします〜 「俺な！俺、脚本家になる！そしてお前の舞台の脚本書く！せやから…お前絶対 頑張れよ！」 『うん！絶対がんばるから！また会おうね』 涙で視界が濡れてなにも見えない

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#ちょっとだけ 279 「当たり前や！じゃあな！」 亮と友達になれてよかった 亮と舞台に立ててよかった ありがとう

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#ちょっとだけ 280 隅の椅子に腰をかけ、封筒をひらく 震える手で涙を拭う 村上先生…

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#ちょっとだけ 282 私はイヤホンをして "サヨナラ"を聞いた 先生の車で歌った"サヨナラ"を 涙が止まらない 先生…"サヨナラ"

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#ちょっとだけ 283 …… 「月ちゃん！本番五分前です！」 『はい！』 ザワつく、お客さんの声 光り輝くライト こっちの世界と、現実を分ける赤いカーテン そして、白い衣装を着る私 やっと主演を勝ち取ることができた

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#ちょっとだけ 284 「おい！月！！これ忘れてるぞ！」 『あっ！ごめん！』 亮は大学を卒業後、私と同じ劇団に入り今は脚本家の補佐をしてる 「なぁ…さっき村上先生みたいな人がおったんやけど」 『うん…村上先生だよ』 「え？」 『先生は絶対約束を守る人でしょ？』

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#ちょっとだけ 285 「は？何言ってんの？笑」 先生…見ててくださいね 私が主役を務める姿を 先生が見つけてくれた夢を叶えた姿を そして、ちょっとだけあの頃よりも輝いている私を end

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#月のはなし 1 「ほらっ！月！これ持ってや」 『はーい！せんせいはそっち重くない？』 「ん、大丈夫や」 長い長い階段を上っていく。ふたりで 「もうすぐやで」 『久しぶりにこんなにお外に出てる気がする』 「お前最近忙しそうやもんなぁ…体大丈夫か？」

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#月のはなし 2 『ぜんぜん大丈夫！楽しいから』 セミは至る所で鳴いていて、まだ夏を終わらせない 「そっか！錦戸は？」 『あ！次の舞台は亮が脚本やるって』 「そうなんや！デビューかぁ…すごいなぁ」 前からは小さな女の子がお母さんと手を繋ぎ降りてくる

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#月のはなし 3 古くなったお花の束をギュッと小さな手ににぎりながら 『それの主役は私やります』 「ほんま？？絶対に見に行くな！！」 『ホントはまだ言っちゃダメなんだけど笑 まぁいっか！せんせいだし』 「なんやねんそれｗ 着いたで 」 他の石に比べたら新しいお墓だ

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#月のはなし 4 『はじめまして。森野月です』 「ちょっと！月！ちゃうやろ」 『あっ…村上月です』 「よろしいｗ」 『この度、せんせい…いや信五さんと結婚することとなりました』 「しおり？まぁそういうことや…」 『せーの！』 『「どうぞ見守っていてください」』

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#月のはなし 5 しおり？聞いてくれる？俺の妻の話 水を下に汲みに行った妻の姿をぼーっとみながら語りかける "信五の口から、妻ってなんだか笑える〜" なんて空の上で笑ってるやろ？ 「まずな、あいつまだ俺のことをせんせいって呼ぶんよ」

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#月のはなし 6 さすがに俺の知り合いに会ったりする時は 『信五さん』って呼ぶけど、二人きりの時は 『せんせい』って "なんて呼ばれたいの？" 「せやなぁ…」 お前は信五って呼んでたからなぁ 無難に信五さんがいいかなぁ いや、信ちゃんもええなぁ

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#月のはなし 7 って何言ってるんやろ…俺 あとな、俺の妻なミュージカルやってんねんで 俺の妻がやで？笑うやろ すばるとか会うたびに 「よう！ｗ ミュージカルの旦那！」っておちょくってくるねん そうそう！すばるな、すずちゃんと結婚するねんて やっとやろ？

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#月のはなし 8 たぶんもうすぐ会いに来るんやない？ 義理の姉ちゃんになるねんから 「うっわ！よくよく考えたら、しおりがすばるの義理の姉になるんか！めっちゃ笑えるやん」 "すばるにすずを泣かしたら許さないって言っておいて"

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#月のはなし 9 「おうおうｗ あいつすずちゃんにぞっこんやから大丈夫やろ」 あとなぁ、なんか話したいことあったんやけど… 『せんせー！！お水とってきました』 「ほーい！大丈夫かー？」 『大丈夫でーーーす！ちょっと待っててね〜』

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#月のはなし 10 水の入ったバケツを両手で持って、階段を上がってくる 何度も俺が行くって言ったのに 『大丈夫です！私が行きたいの！』って たぶん俺としおりをふたりきりにしたかったんだろう 「俺にしてはよく出来た妻やろ？」 "私もよくできた彼女だったでしょ？"

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#月のはなし 11 「せやなぁ…2人とも俺にはもったいないくらいやわ」 小さな影が近づいてくる 『ふぅ〜！』 「重かったやろ？」 『ぜーんぜん！ はい！せんせい、柄杓持って！』 月から受け取った柄杓に水をなみなみといれてしおりにかける

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#月のはなし 12 『しおりさん気持ちいかな〜？』 「気持ちいわぁって言ってるｗ」 『やっぱり？』 「あぁ…」 『今日来れてよかったですねっ』 「せやなぁ…さぁ！帰るか」

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#月のはなし 13 長い長い階段を下る ふたりで 太陽の光は、月にも太陽にも似ていた 「ほらっ歌ってみ」 『またですか〜？今日はなんの曲？』 「せやなぁ…久しぶりにAimerかな」 『じゃあせんせいはロミオパートね』 また来るな…しおり また行こうな…月