ちょっとだけ ＆ 月の話

ひつじ(ひっつん) @mogumogu_1260

#ちょっとだけ 25 昨日の2倍はあるように見えるプリントの量 これを全部？ 「そんな驚くなや…今日は俺も一緒にするから」 『えぇっ』 「なんでそんな驚く？！ 嫌なんか？」 『いえ…そんなことは！！部活は？』

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#ちょっとだけ 26 「今日、雨降ってるやん？ せやから中で体幹トレーニングとかやから、俺は行かなくてええねん」 『そうですか…』 窓の外を見ると、バケツをひっくり返したような雨が降っている 「……」 『……』 やりにくい…やりにくいよ

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#ちょっとだけ 27 こんな定員2人みたいな部屋の中で、先生と2人きりだなんて 「あのさ…」 『はっはい』 「ロミジュリ嫌やった？」 『正直に言っていいですか？』 「おん」 『とっても嬉しいです！！』 「え？」 口と目がまん丸になってる先生

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#ちょっとだけ 28 『小さい時、一度だけミュージカルに連れてってもらって…ロミオとジュリエットを見たんです！それが忘れられなくて…いつも1人でジュリエットごっこしてたんです笑 あっ…すみません』 「いやいや…森野がそんなん言ってくれたら嬉しいわ、ちょっとやってみｗ」

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#ちょっとだけ 29 私が言ったら嬉しい？ それって生徒だったら誰でもいいんですよね？ 『いやです笑』 「やってーや」 先生からそんなこと言われたら 歌わずにはいられないじゃん 深呼吸をする 『Aimer 君だけを Aimer 愛している…たとえ貧しい時も…』

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#ちょっとだけ 30 「あ…森野…上手やなぁ」 『だ、大丈夫ですか？』 「ちょっとごめん、出てくる」 どうして先生…泣いるの？ 先生の前で歌ったことの恥ずかしさより、先生が泣いたことへの疑問の方が勝ってる 教えてください

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#ちょっとだけ 31 それから30分後くらいだったあと 職員室へ先生の様子を見に行くと職員室はもう誰もいなかった その中、村上先生は 『え…』 倒れ込むように机に顔を置いていた 少しだけ右を向いている先生の目からは一筋の涙が零れている

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#ちょっとだけ 32 早くここからでなきゃと入口の方へ体を向け先生から離れようとすると 『…！』 腕を掴まれた 「しお…り」 『え？』 私の声に気づいたのか驚いたように起きて、頭を掻きながら 「あ…ごめん、森野 俺寝ちゃってたわ」 『いえ…』

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#ちょっとだけ 33 「ほんまごめん、1人でやらせてたな…残り俺がやるから帰ってええで…ほんまごめん」 『失礼します』 バックを持って、走る 私の目からも涙が零れていた 先生、今悲しいの？ 先生、しおりさんって誰？ 先生…

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#ちょっとだけ 34 …… 次の日のホームルーム、先生はいつも通り太陽だった 「昨日言ったとおり、主役決めるぞ〜！」 『まじでロミジュリ〜？』 「ありえなーい！」 「そこ！つべこべ言うな！！ほらっやりたいヤツ〜？」 一瞬、先生と目があった気がした

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#ちょっとだけ 35 できるわけないじゃん、私なんかに 「誰も挙げへんのか？ほらっやりたいやつー？」 いつもはうるさい教室もしんとしている 「じゃあ俺、決めてもええ？」 『はぁ？』「えぇーー？」 また騒がしくなる

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#ちょっとだけ 36 「森野！！！お前やれ」 『…え』 私に視線が集まる… 「ええな？」 強制の拍手が鳴り止まない たぶんなんであいつ？でもやってくれるならいいやって感じ 『……』 黙って頷くしかなかった 「んで、ロミオは錦戸！！」 「「「え？！！」」」

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#ちょっとだけ 37 女子の驚いた顔とは反対に 錦戸くんは 「……は？」 めちゃくちゃ怖かった 「じゃあホームルーム終わります」 そう言って、先生は教室を出た すると、錦戸くんは私の前にきて 「なんでこんな地味女と…俺はごめんや」 って言い捨ててどっかに行った

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#ちょっとだけ 38 クラスメイトの視線がいたい でもちょっとしたらみんな何事もなかったかのように、教室から出ていく またこれだ… 私も何事もなかったかのように、勉強道具を出して 問題を解いていく でも…涙で滲んでなにも見えない

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#ちょっとだけ 39 「森野？」 顔を上げると、先生が立っていた 「よかった…まだおって」 『ど…したんですか？』 「お前ぇー！泣いてるやないか！！」 そう言ってガサツに親指で私の涙をぬぐう 『ちょ…』 恥ずかしくて、でも離しては欲しくない

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#ちょっとだけ 40 先生の親指はすぐに離れた 「そんなに嫌やったんやな！ほんまごめん！いや、昨日の森野みてやってもらいたいって思ってな…」 『そう…じゃなくて』 「え？」 『いや、なんでもないです！私、やります』 なんであんなこと言っちゃったんだろう

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#ちょっとだけ 41 答えは簡単 村上先生に頼まれたから 村上先生の少しでも近くにいたかったから 「ほんま？…で、なんで泣いてたんや？」 『いや、ちょっと目にゴミが…』 「もーりーのー？」 私のほっぺたを引っ張りながら、ちょっと怒ったような顔をする

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#ちょっとだけ 42 『いひゃい〜言います！言いますから』 そんなこと誰にもするんでしょ？ 「よし！」 『えっと…錦戸くんが…私とやりたくないみたいで…』 「錦戸が？」 『はい…』 「あいつなぁ…人見知りやからなぁ！懐いたらすっごいかわいいんやけどなぁ」

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#ちょっとだけ 43 「あぁ…よく、村上せんせーって来るで」 そう言って、ニンマリと笑った 『想像できない…』 「あいつはできる奴やから…自分が認めたやつにしか心を開かへんねん」 『はぁ…』 「ということは？」 『へ？』

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#ちょっとだけ 44 「あいつを認めさせたらええねん」 腰に手を当て、自信満々に言う先生 『……』 「なんか、言えや！」 『私なんて…』 その時、先生は嫌な顔をした 「俺は、私なんて…って言うやつ嫌いやで！じゃあ部活戻るな！」

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#ちょっとだけ 45 私は白い世界にたった1人で浮いている気分 嫌い…嫌い…きらい…キライ 嫌いって言われて、ショックだけど はっきり言ってもらえてスカッとしてる 私もそういう自分が嫌いだから 変わらなきゃ…今、 ちょっとだけでも…今、

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#ちょっとだけ 46 走って先生を追いかける 遠くに肩を回しながら、歩く先生の姿が見えた 『村上先生！！！！』 「ん？」 『えっと…あの、』 「聞こえへーーん」 先生の声は長い廊下でも響く

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#ちょっとだけ 47 『そっち行きます』 先生の元へ走った 今までの嫌いな自分から逃げるように 「なんや？森野」 『えっと、私！錦戸くんに認めてもらいます！！がんばります』 「え？」 『ぜったい、錦戸くんを見返してやります…それでは！！』

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#ちょっとだけ 48 恥ずかしくなって、すぐに先生に背を向けて教室へ戻る ちょっとは変われるかな？ 変われるかな？じゃない…変わるの

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#ちょっとだけ 49 …… その日から、なにをすればいいか分からずとにかく歌った 劇に歌が必要かどうかもわかんない だけどなにかしなくちゃ 待ってろよ！錦戸くん！ 学校の行きも帰りも、ミュージカルの音源を聞いて音程を完璧に取れるようにしていく