【憑依:艦娘】[艦これ二次創作]『深海disこれくしょん』-5廻。

初めての二次創作という名の盛大な破壊劇。その、五話とでも呼ぶべきわすれもの。 何もかもがどうしようも無くなりゆくさまを楽しめる方向け。
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九重七志@憑依特化 @yorishirosama

曇り空、荒れ気味の波。 波間を越えて進むのは、単縦陣に並んだ艦娘たちの水上打撃艦隊。 通称『扶桑隊』

2017-04-07 03:15:39
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

先陣を切るのは航戦 扶桑、山城が背後に控える。 その後ろには戦艦 長門、陸奥が続く。 殿を務めるのは、重巡 青葉、古鷹。 赤く染まった海原を、颯爽と進む扶桑隊。 彼女たちは、ある場所へと向かっていた――。

2017-04-07 03:16:22
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「――厄介な事になったものだ」 "彼"は青葉の中で、声にならない呟きを漏らす。 現在の目的地は、当海域の首魁がいると思われる場所。 青葉の進言により推定された、敵将たる「姫」級の深海棲艦の所在地である。

2017-04-07 03:17:09
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

"彼"は知っている。 彼がリ級であった頃、間違いなく聞いた。 召集の声にあった、集合地点。 そこが、「姫」級の居場所だ。

2017-04-07 03:18:16
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「姫級の深海棲艦……"移乗"さえ出来れば、この上ない戦力となるか」 姫級と称される深海棲艦は、いろは歌で数えられるような凡百の深海棲艦とは、格が違う存在だ。 普通の深海棲艦が兵士であるとすれば、姫級は将官や上級将校に例えられるだろう。

2017-04-07 03:18:57
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

奴等は明確な知性を持ち、我国の言語を解する個体も少なくはない。 戦闘能力に関しては、語るまでもなく強力だ。 圧倒的な火力、浮沈艦の如き耐久、徹甲弾さえ弾き返す装甲など、評価点は枚挙に暇がない。

2017-04-07 03:19:43
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

だが、それでも。 例え姫級とて、深海棲艦であることに代わりはない。 「そう、"出来れ"ばではない。"果たす"のだ」 「必ず、奪ってみせる――必ずだ」 "彼"の言葉は青葉の中でのみ完結し、青葉は何一つ口にすることはなかった。 『……』

2017-04-07 03:21:04
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『索敵隊、敵艦隊を発見! 編成は姫級1、戦艦2、重巡2、輸送艦1!』 『山城、いける?』 『はい! でも、姉様より先で良いのかしら……瑞雲隊、全機爆装! 発艦!』 『いよいよ主力とご対面だ、胸が熱いな!』 『あらあら、油断しない様にね?』 『重巡洋艦の良い所、必ずお見せします!』

2017-04-07 03:24:30
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

青葉は少し考えると、"いつものように"こう言った。 『――よく見えますねぇ。敵はまだ、こちらに気づいてないよ!』

2017-04-07 03:24:48
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

爆撃が終わり、砲の射程距離内に入る。 徐々に敵の姿が目視できるようになる。 距離はまだ随分とあるが、艦娘の視界であれば容易く見通すことが出来る。

2017-04-07 03:25:16
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

編成は、先程の報告通り。 flagship 戦艦タ級、それが二隻。 同じくflagship 重巡リ級が二隻。 flagshipの輸送艦ワ級が一隻。 そして――

2017-04-07 03:25:36
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

――人のような声が、周囲に鳴り響く。 『――不粋ナ……』 嘆くような、嘲るような、それでいて、どこか歌うように。 『……ヤクタタズ共メ、沈ンデシマエ……!!』

2017-04-07 03:25:57
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

深海拠点泊地、最終防衛艦隊  旗 艦   重 巡 棲 姫 ――戦 闘――開 始――!

2017-04-07 03:27:15
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『行きます――主砲、副砲、撃てぇ!』 扶桑の砲撃が、前方正面、重巡リ級の装甲を粉砕する。 リ級は爆炎を上げながら水底へと沈んでいく。 「……夾叉さえ無しの一射必中、見事なものだ」 "彼"は青葉の中で一人、嘯く。

2017-04-10 01:01:02
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『主砲、よく狙って、てぇーっ!』 続く山城の砲撃は、戦艦タ級を狙ったものだ。 輪形陣の右翼側を守るタ級に、山城の徹甲弾が迫る。 こちらの狙いも鋭く、実に正確なものだ。

2017-04-10 01:01:32
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

だが、タ級は右手側の艤装部分を盾代わりにして、直撃を既の所で食い止める。 黒煙を吐くタ級。 艤装の破損は重篤なれど、主砲は未だ健在。航行も可能と見える。 あれでは精々、中破といったところだろう。 まだ油断はできそうにない。

2017-04-10 01:03:33
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『選り取り見取りねぇ、撃てっ!』 陸奥は逆側、輪形左翼側のタ級を狙う。 ――直撃。だが、撃沈ならず。 大破、されど艦は健在か。 ほぼ無力化出来た。そう考えても良いだろう。 陸奥は、投げキッスでもするような勢いだ。

2017-04-10 01:03:59
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『ビッグセブンの力、侮るなよ! 全主砲、斉射ーッ!』 長門の主砲が劫火を噴く。狙うは旗艦、重巡棲姫。 中央のリ級が、重巡棲姫を庇うように躍り出る。 ――直撃。轟音を上げて爆沈するリ級。 直後の中破したタ級の砲撃も難なく躱し、不敵な表情で次弾を装填する。

2017-04-10 01:04:14
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『主砲、狙って……』 古鷹が重巡棲姫を狙う。 既に水偵は発艦させており、弾着観測射撃の構えだ。 『――そう! 撃てぇー!』 水偵からの位置情報を元に、2基の主砲を同期させた連撃が放たれる。

2017-04-10 01:04:40
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『ウァァアッ! …オノレェッ!』 ――夾叉。後、直撃! されど、装甲を撃ち抜くには至らない。 多少の損害は与えられたが、軽微。中破にすら至らない。 好都合。

2017-04-10 01:05:01
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「……さて」 艦隊戦となった以上、青葉の身体を遊ばせておく訳にはいかない。 「狙うは重巡棲姫の躯……無駄に傷つけるのは悪手だ」 沈みかけの船を奪った所で、"ヤツ"を倒す力には成り得まい。 出来るのならば無傷で奪いたかったが、背に腹は変えられない。

2017-04-10 01:05:27
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『よく見えますねぇ~、まずはザコから潰します!』 青葉の身体を動かし、傷ついたタ級を狙い撃つ。 青葉の体を動かしているのは、青葉の脳で。 青葉の艤装を動かしているのは、重巡青葉の艤装妖精だ。 その練度は、当然。 "彼"に乗っ取られる前の青葉と、変わらない。

2017-04-10 01:05:46