石山寺参籠中のシュウゾウアヅチガリバー訪問

言語、意味、非意味
1
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

さて、昨日は一日仕事を休んで、石山寺に行きました。同時に参籠中の美術作家、シュウゾウ・アヅチ・ガリバーさんを訪ねるためです。ガリバーさんは現在、国立国際美術館の「風穴」展に参加している伝説的な前衛美術グループ「プレイ」にも在籍していたという人です。

2011-04-06 06:14:43
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

ガリバーさんの代表作は、死んだら自分の肉体を80の部分に分割して保管してくれと依頼して契約書を交わした《肉体契約》というプロジェクト型の作品です。このほかにも奇怪な作品が山ほどあり、概ねはこちらに記してあります。 http://bit.ly/ejszWx

2011-04-06 06:17:39
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

ガリバーさんが現在、石山寺に参籠しているのは偶然の成り行きによるものですが、同寺は過去にも多くの文人を受け入れてきた、おそらくは日本最古クラスのアーティスト・イン・レジデンス施設です。これまで同寺で滞在制作した作家には、紫式部、松尾芭蕉、島崎藤村がいます。

2011-04-06 06:27:42
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

ちなみ石山寺を開いた良弁僧正は、あの奈良の大仏のプロデューサーでもあり、快慶作の大日如来像を所蔵しています。しかも同寺は現在もそうした芸術家の後援を続けており、定期的にさまざまな現代作家に声をかけては、こうした滞在制作や収蔵を行っているのだそうです。

2011-04-06 06:45:08
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

自分がふだん仕事をしているのは、ギャラリーや美術館といった近代的な美術の空間ですが、それよりはるか以前から、仏教寺院は芸術家を後援し、滞在させ、制作させ、その作品の収蔵と展示にあたってきた。これだけ複合的な機能を持った施設は現在でもなかなかありません。

2011-04-06 06:40:15
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

石山寺は平安時代以降に密教色を強めていきますが、密教には有名な「マントラ」という概念があり、言葉、それも言葉の表す概念ではなく、音そのものに呪術的機能が宿ると考えてきた宗派です。そのためでしょうか、同寺に寄寓した作家には、不思議と文学者が多いのです。

2011-04-06 06:57:05
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

偶然ですが、いま石山寺に滞在するガリバーさんは「言語」を核にして作品を作り続けてきた作家です。言語による契約そのものを作品にした《肉体契約》をはじめ、身体を司る言語である遺伝子をテーマにした一連の作品を制作、近年では記号のようなドローイングを発表しています。

2011-04-06 07:07:39
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

マントラが概念を運ぶ記号である以前に「音」であるように、ガリバーさんの作品における記号は、往々にして意味を横滑りさせていきます。それは遺伝子の読み取りエラーによって進化を遂げていく生命現象にも似た、伝達エラーを内包した記号体系なのです。

2011-04-06 07:11:34
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

昨日私たちが何を話したのか、私は既に正確には覚えていませんが、気がつけば私たちは言語を巡る話ばかりをしていたように思います。龍樹、デリダ、ウィトゲンシュタイン。そうした固有名詞が出ては消え、相互に結びつこうとしては解けていきました。

2011-04-06 07:19:53
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

昨日一日に私が体験したことがどういう意味を持つのか、もしくは持たないのかについては、いましばらく整理の期間が必要ですが、それはこうした哲学談義にありがちな深刻さとは無縁の、ある種の駄洒落にも似た軽快な体験であったことは間違いありません。

2011-04-06 07:23:07