愛読書

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【75】 ブツブツ言いながら机の下に潜る。 「買う？買わへん？どっち！」 「あ、」 「いらんのやったらあいつに連絡して。てか、その辺おるやろ。さっき出てったばっかりやから」 「！」 走り出した背中に、 「おい、雑誌どうすんねん！」 とお兄さんの声が聞こえた。 pic.twitter.com/71LGSCFAEc

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【76】 （安川さんが好き） 本屋さんが示した方向へ走る。 と、その後ろ姿。 「安川さん！」 大声で呼ぶとびっくりした顔で振り向いた。 「波琉ちゃん、どしたん？！」 「本屋さん、言った、安川さん、雑誌…どうして？」 ふふっと笑う安川さん。

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【77】 「日本語崩壊しとるで？」 「わたし、ずっと買ってました」 そのキラキラに追いつきたかった。 安川さんは少し黙って下を向いた。 「うん。知ってる」 「どうして…」 小さく息を吐いてこっちを見る安川さん。 「ごめんな、波琉ちゃん」 「え、」

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【79】 ＊＊ 「初めて会ったときな、ホンマは知っててん。ダイビングに興味があったことも、まだ潜ったことなかったことも」 （なぁ、ダイビングするん？） 「あ…、」 うん、と頷く安川さん。 「ダイビング雑誌、俺が買いに行ったら売り切れてることあって。

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【80】 今までそんなことなかったのに。誰やって、友だちの店員に聞いてん」 「守秘義務やなんや言うて教えてくれへんで。でもまぁ毎月買うなんてよっぽど好きなんやなって。けどそうじゃないらしい言うし、じゃ何やねんって」 「で、ある日今買って行ったでって言われてどんな奴やって…」

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【81】 「ほんなら、公園におって」 わたしを指さす。 「キラキラした目で夢中で読んでて。俺、このコならええかって」 「せやから、初めて一緒に潜ることになったとき嬉しかった。潜る気になったんや！ってさ」 安川さんのまっすぐな瞳。 「波琉ちゃん」 「、」

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【82】 「俺。俺、波琉ちゃんのこと、」 「あ、あの！待って！」 安川さんの言葉を遮る。 「待ってください」 「アカンか」 下を向く安川さん。 「こないだの、」 「あの、わたし！」 「ん？」 「わたし…」 踏み出したい。

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【83】 「安川さんのことが…好き、です」 「ずっと、ずっと好きでした」 小さな声、何も言わない安川さん。 「あ、あの…」 お願い、何か言って。 「こういうこと聞くんもどうかと思うんやけど」 「、」

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【84】 「抱きしめてもいい？」 え、 「…今？」 「うん」 「…ここで？」 「うん」 「わたし…どうしたらいいですか」 「黙って立っといてもらえたら」 「は、い…」 頷くと同時に包まれる。 フーッと息を吐く安川さん。 「ちょっと変えてもええかな」

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【85】 「え？」 「腕、回して」 安川さんの広い背中。 「こう？」 「いや、もっと」 「好き。俺、波琉ちゃんのこと好きや」 腕の力が強くなった。

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【86】 ＊＊ ずっとずっと憧れてた人。 涙が頬と伝う。 「ハルウやな」 「え？」 「波琉ちゃんの目から降る雨」 と安川さんは笑って拭ってくれた。 ＊ ゆっくり近づく安川さんの唇。 ♪～（着信音） ！！ 「んぁ～…」 目を閉じたまま天を仰ぐ安川さん。

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【87】 タップした携帯から大声が漏れた。 「どうすんねん雑誌！！」 本屋さん。 「もう…」 二人で苦笑い。 「うるさいから取りに行くかぁ」 「はい」 「今度からは一緒に取りいこうな」 「はい！」 差し出された安川さんの手を握った。 pic.twitter.com/w4z2AGNJEp

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