“星のひみつ”を読む[1]ー謎解き『バレエ星』(谷ゆき子)

谷ゆき子が昭和44~6(1969-71)年に小学館の学年雑誌(「小学一年生」「同二年生」「同三年生」「同四年生」)に連載したバレエ漫画『バレエ星』が、完全復刻版として半世紀を経た読者の前に蘇った。 連載期のリアルタイムに読んだ一読者としての回顧的な備忘録と作品に関する一連の考察ツイート。
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花田先生の喫煙習慣は、実はかすみとの師弟関係に遠因があるのではないか、という推論

Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)作中での花田先生の喫煙描写は、かすみがとにもかくにも「バレエ星」台本を書き上げて花田先生のもとに馳せ参じ、「幼稚園のおしばい」と酷評される場面が初出。この時の先生の表情は固く、突き放すような態度は冷たい。その日、果たして彼女に何があったのか。(続)

2018-01-13 13:15:32
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

【追記】ただ花田先生初登場の場面、応接室には灰皿らしいものが描かれているので、それまでに喫煙の習慣がなかったわけではない、とも考えられる。もちろん訪問客用など、当時のリビングの風景として普通に見られるものではあるが。

2018-01-13 13:29:36
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)それまでの経緯を整理してみると、滝行事件および野犬との山中徘徊事件の後、かすみはようやく母と妹との再会を果す。しかし母は病床に就いたまま、また花田先生のもとに引き取られたアーちゃんはあざみさんの虐めの標的となり、やむを得ず生活の場を病院に移す。(続)

2018-01-13 13:16:00
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

【追記】母の死後、花田先生はかすみの病院住込み継続を(おそらく不承不承)承諾するが、「アーちゃんだけでも預かりましょうか」と申し出る。しかしそれこそかすみの避けたかった一事であり、謝絶する他はなかった。ここで既に、かすみと花田先生の間に心の溝が生まれてしまっている。

2018-01-13 13:32:26
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

【追記】そもそも、あざみさんが虐めに向う心の病(あれはかなり病的な領域にも思われる)を花田先生がどうにか出来ればよかったのだが、そこはいろいろ事情(後日考察)があって難しかったのだろう。

2018-01-13 13:34:14

※この先生とあざみさんの関係については、こんな憶測もチラッとつぶやいた事がある。(あくまでも憶測だが…)

Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

@abeilleclippia @uchiwan03 あざみさんは、実は花田先生のパトロン(とか有力出資者)の娘ではないか、と個人的には推測しております。3ヶ月以上に及ぶ欧州研修の費用の出所とか(文化庁や企業の助成もあるでしょうが)、その当りに鍵があるのかも。 #バレエ星

2017-12-19 10:06:40

閑話休題…

Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)この病院住込みは、かすみ姉妹にとって緊急避難でもあったわけだが、花田先生にとっては自分自身の保護責任を問われているように感じられたのではないだろうか。加えてここで、かすみの社会生活—就学問題が花田先生の立場をややこしくする…少なくともその可能性は高い。(続)

2018-01-13 13:16:37
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)学年が切り替わるこの時期、学校側では後見人である花田先生にかすみの生活状況を訊ねたのではないか。通常の家庭と異なる事情を勘案しても、子供が保護責任者のもとを離れて生活するという状態はいかにも歪に見える。家庭訪問で根掘り葉掘り訊かれるのも避けられないだろう。(続)

2018-01-13 13:18:11
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

【追記】この頃の家庭訪問は、各家庭の訪問時間が今時よりも長い。応接室に通されお茶を飲みながら談笑するという風景も珍しくなかった。

2018-01-13 14:53:09
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)こうした状況が、花田先生にとって頭痛の種だった事は容易に想像される。そしてストレス発散の喫煙が常態化するのもやむを得ない事ではある。煙草をふかしながらの「幼稚園のおしばい」発言も、そんな鬱憤の溜まった末の言葉ではないだろうか、と思われる。(続)

2018-01-13 13:18:52
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)かすみからすれば、母を喪って間もない時期、母との絆の象徴である「バレエ星」台本を、後見人と頼む花田先生に厳しく拒絶された事は奈落の底に突き落とされたに等しい。同じ年頃の子供よりしっかりしているとはいえ、この状況を受け止めるにまだ幼いかすみは、衝動的に死を選ぼうとする。(続)

2018-01-13 13:21:09
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

【追記】ここまでの「バレエ星」台本で、かすみによる加筆部分には「母の喪失」「死による浄化」のイメージがうかがわれる。この頃のかすみの心象には、何かのきっかけで容易に死に向いやすい危険性が顕われていた、とも言えなくはない。

2018-01-13 13:35:10
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)一旦は死を思い止まるものの、台本の完成という大きな目標に挫けてしまったかすみには、以前のようなバレエへの打ち込む姿勢が萎えてしまっていたのではないか。その点を花田先生に叱責され、彼女はこれからの人生を悲観するばかりとなる。かすみの心の闇が本編中最も暗くなる一段。(続)

2018-01-13 13:22:04
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

【追記】ただ花田先生も指導者としてそれなりに配慮はしている。「コッペリア」ではかすみに主役のアンダースタディを任せており、それだけ彼女の実力を評価している表れでもある。しかしその伝達がきちんとなされていなかった点は致命的な落ち度であろう。

2018-01-13 13:36:11
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)この時点において、かすみと花田先生との間に生じた深刻な心の溝は、あざみさん転落事件で混迷に拍車をかけ、遂には森山バレエ団潜入疑惑での退団勧告に至る。後に「はじめから判っていた」と呟く場面はあるが、疑惑を知った当初は本気でかすみを疑っていたのではないだろうか。(続)

2018-01-13 13:23:15

あざみさん転落事件以来、二人の間にはどこか円満とは言えないわだかまりが残ってしまったようだ。この事が尾を引き、ヨーロッパ行きの選抜試験では、花田先生はかすみの「風の課題」の群を抜いた結果を認めながらも黙殺するという、指導者としてはかなり問題のある情実裁定を下してしまった(パリ・バレエ団オーディションへの推挙は、もしかしたら彼女に対する不当な扱いへの罪滅ぼしの気持ちがあったのかもしれない)。

そんな不安定な二人の関係が続く中で登場するのが、バレエ団のもう一人の逸材・バーバラである。あざみさんの一件は彼女に有利な状況をもたらしたのだった。

Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

【追記】このお互いの疑念によってバーバラはヨーロッパ研修という“漁父の利”を得たとも言える。とは言え、そのおかげでかすみは日本でアリア先生と出会い、なおかつパリでの舞台デビューにつながったわけで、何が利するかわからない。人生万事“塞翁が馬”ではある。

2018-01-13 18:24:30

そのバーバラも、後には不興を買ってバレエ団を出る羽目になるのだが…そこには花田先生の別の側面が起因しているようだ。

Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)それに先立つバーバラへの移籍勧告にも見られるが、花田先生は同業者に対する面目を潰される事を非常に嫌う傾向があるように読める。森山先生の面前でのかすみに対する厳しすぎる譴責は、そうした一面も影響しているように思われる。(続)

2018-01-13 13:23:48
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)しかし、その前に「強く正しく生きる」事をアリア先生に誓っているかすみは、自分に落ち度のない事を主張し、一ヶ月以内に白川かず子を探すという難題を受け入れる。そして「いつかきっと探し出して帰ってくる」と書置きを残し、彼女なりに筋を通してバレエ団を去る。(続)

2018-01-13 13:24:36
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)かすみの孤児院巡りは昭和46年夏頃、夏休み期間がこれに費やされたと見られる。猪苗代の親戚の家では秋祭があり、9月のある程度の時期までは東京に戻ってこなかった事になるだろう。という事は、ここでまたかすみの学校の問題が再浮上する。(続)

2018-01-13 13:25:20
Hiroyuki SAEKI @RandomWalkKSHR

(承前)新学期になっても登校してこないかすみについて、学校側からは再度花田先生のもとに連絡が来た事だろう。この年の冬から春にかけては海外に滞在していたという名目もあったが、今回は言い繕いのしようもない。まさに「先生あわてたわよ」だったのだろう。(続)

2018-01-13 13:26:18
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