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帽子男
@alkali_acid
主神は説き聞かせる。 「阿修羅の王が悪行を重ねていたころ、地は焼け、海は暴れ、空は荒れ、人も獣も鳥も魚も、草木にいたるまでその命は危うく、苦しみは満ち満ちており」 「いやです」 少年はあおむけに倒れて手足をばたつかせる。 「いやだいやだいやだいやだいやだ!」
2018-03-21 16:32:37
帽子男
@alkali_acid
「そのように激しく暴れては縫い合わせた体がばらばらになってしまう」 「いやだいやだいやだいやだいやだ!!」 「なんとしたことか。お前がそのように聞き分けのなかったことは一度としてない」 「いやだいやだいやだ!!」 「…我が子よ」 「いやだ!!!」 「分かった」
2018-03-21 16:34:06
帽子男
@alkali_acid
主神はふたたび向き直る。 「賢く分別のつくように育ったと思ったが、まだいたらぬところも多いようす。阿修羅の王にははやいものとみえる」 「いや、もはやこの子と神のきずなは、いかにしても分かちがたい。阿修羅は神のしもべとなる訳にゆかぬ。あきらめよう」 太母はそう応じた。
2018-03-21 16:37:14
帽子男
@alkali_acid
ほかの我が子の体から次々に矢を引き抜くと、まとめて弓とともに置き、また轟とともに去って行った。 「我が子よ。お前がそのように愚かしいふるまいをするとは」 「僕は主神様のそばにおります」 「ではそうするがよい」
2018-03-21 16:39:07
帽子男
@alkali_acid
少年は弓と矢と筒を供物として捧げると、神殿の祭人としてすみずみまで掃き清め、社を詣でるものたちにしきたりを教え、祈りを捧げながら暮らした。
2018-03-21 16:41:10