ショタのところに色んなきれいなママが集まって奪い合う話

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帽子男 @alkali_acid

はーショタのところに色んなきれいなママが集まって来て「私が母親よ」「いいえ私」って奪い合うやつほしいな。 「右腕を生んだのは私」 「左足を生んだのは私」 主神が裁定して 「人間で一番大切なのは頭である。よって頭を産んだものが母親である」 と結論付けて終わるやつ。

2018-03-21 15:24:42
帽子男 @alkali_acid

でもそこでショタが立ち上がって 「待って下さい。この人たちは僕の手足や頭を産んだあと、こわがって神殿に預けてゆきました。そのことをはしかたないと思います。でも僕をぬい合わせて動くようにしてくれたのは主神様です。もし親がいるとすれば主神様だと思います」 これには主神もほろり。

2018-03-21 15:26:53
帽子男 @alkali_acid

「実はお前は前世で悪行の限りを尽くした阿修羅であり、いたしかたなく私が討ち果たした際も、不敵に笑っており、あるいは神通力でもって必ず生まれ変わり復讐を果たそうとするのではないかと疑いを抱いたものだ」

2018-03-21 15:33:40
帽子男 @alkali_acid

「私は気を付けていたが、お前は阿修羅の女ではなく、人間の女から密かに産まれようとした。なにぶんすさまじい神通力を持つゆえ、ひとりの腹からではとうてい出てこれない。そこで何人もの腹からそれぞれ手足胴首などがばらばらにあらわれたのだ」 主神のこのような説明を聞いて少年は得心した。

2018-03-21 15:34:56
帽子男 @alkali_acid

「どうして阿修羅の生まれ変わりと知って体を縫い合わせて、動けるようにして下さったのですか」 「生まれ変わったお前にはまだ鬼気が見られなかった。いずれお前が阿修羅の性(しょう)に目覚めるようなことがあれば、悪行を始める前に必ずや私が討ち果たそう。そう決めて今日まで育てた」

2018-03-21 15:37:33
帽子男 @alkali_acid

主神はさらに教える。 「お前の脚は下民、手足は常民、胴は武人から、頭は僧侶、それぞれ異なる階級から生まれた。お前に阿修羅の性が眠っているとすれば、下民や常民のあいだで育てば力なきものどもを大いに苦しめるだろう。武人の家で育てば、その力を伸ばし、私に抑えきれなくなるやもしれぬ」

2018-03-21 15:41:06
帽子男 @alkali_acid

「頭が生まれた僧侶のあいだで育てば、経典を学び、心を静め、善行について知る。頭は五体を統御するものである。ゆえに母としてふさわしいのは頭を産んだ僧侶の家である」

2018-03-21 15:42:48
帽子男 @alkali_acid

少年は考え込んでから答える。 「いえ。僕はやはりこの神殿の祭人として主神様のそばにとどまります。五体よりも大切なものがあるとすれば、魂魄で、それは主神様にいただいたものですから親は主神様をおいてほかにおりません」 「子をわがもとに置きたいとする母たちの願いはどうする」

2018-03-21 15:45:44
帽子男 @alkali_acid

「ではそれぞれの家にいき、孝行をいたします。畑を起こし、商いをし、戦いと祈りもいたします。それが終わったら戻ってきて主神様のそばにとどまりましょう」 「そうするがよい」

2018-03-21 15:47:01
帽子男 @alkali_acid

少年は六人の母のところへ順に訪れる。まず左足を産んだ下民の母のもとでは、その上を通ろうとするものを呪い殺す大岩を大地から引き抜き、山にぶつけて粉々にすると、空いた穴に水を引いて溜池とした。 母の同胞はおおいに感謝し、岩の欠片から鏃をあまたこしらえて贈った。

2018-03-21 15:49:30
帽子男 @alkali_acid

右足を産んだ下民の母のもとでは、吹きつける病の風を防ぐため、城壁より頑丈で、絹よりしなやかな聖なる大樹を植える。その種苗は阿修羅の庭から持ち帰る。阿修羅は相撲に勝てばくれてやると言い、少年は応じて見事に相手を投げ飛ばす。母の同胞は喜び、聖なる大樹の枝から矢柄を作って贈る。

2018-03-21 15:52:22
帽子男 @alkali_acid

右腕を産んだ常民の母のもとでは、消えた鍛冶場の炉の火をとりもどしにゆく。雷が雨のごとく降る山で、龍蛇が火種を抱え込んでいる。歌比べに勝てばくれてやると言うので、応じて歌い負かす。火が戻ったことを母の同胞は寿ぎ、神鉄を溶かし、見事なひとはりの弓を鍛えて贈る。

2018-03-21 15:56:52
帽子男 @alkali_acid

左腕を産んだ常民の母のもとでは、遠い異国から来た隊商の贖い求める、珍しい宝を手に入れる。海の浮島に巣をかけ、泳ぎ魚を漁る巨鳥の卵の殻。荒波の下を潜って巣に入り、割れた殻の一つをとると雛が襲うが退け、親鳥にも振り切る。母の同胞は喜び、抜け落ちた巨鳥の翼から矢羽を作って贈る。

2018-03-21 16:01:10
帽子男 @alkali_acid

胴を産んだ武人の母のもとでは、姉である姫君のもとに、羅刹の王侯が押し付けてきた婚約を押し返す。角や牙を持つ七人の王子を、剣、槍、棍棒、駆け比べ、馬比べ、船比べ、将棋でしのぐ。母の同胞は喜び、姫君は黒々とした髪を一筋断って縒り、弓弦を作って贈る。

2018-03-21 16:06:51
帽子男 @alkali_acid

頭を産んだ僧侶の母のもとでは、旱魃を終わらせるための祈りをひとりで。滝に耐え、火を渡り、食を断ち、虫をまといつかせるさまざまな苦行をこなし、経典を一言過たず唱えて雨を呼ぶ。母の同胞は喜び、聖なる言葉を記した矢筒を作って贈る。

2018-03-21 16:09:06
帽子男 @alkali_acid

こうして六人の母への恩返しを果たした少年は帰って来ると、主神の前にひざまずく。 「主神様。産んでもらった恩を返して参りました」 「よくぞやった。それぞれの母はいっそうお前にそばにいてほしいと願うだろうが、しかしお前のつとめは果たした。これからは私のそばで働くがよい」

2018-03-21 16:11:05
帽子男 @alkali_acid

やがて大地が揺れ、大空に裂け目が走って阿修羅の軍勢がおりてくる。 先頭に立つのは、四頭の虎に弾かせた戦車に乗る、三面六臂の女である。 「あれはなんでしょう」 「阿修羅の太母である。前世のお前を産んだのはまぎれもなくあのものだ」 「僕の七人目の母…」 「いかにもそうだ」

2018-03-21 16:13:38
帽子男 @alkali_acid

阿修羅の太母は神殿にやってくると岩も割れんばかりの大音声(だいおんじょう)で叫ぶ。 「ここに息子がいる。阿修羅の王となるべき息子が」 「阿修羅の王であったお前の息子は生まれ変わり人となった」 「下民か常民か武人か僧侶か。未練が残らぬよう一族を皆殺しにしてくれる」 「いずれでもない」

2018-03-21 16:15:48
帽子男 @alkali_acid

少年は言う。 「僕の親は主神様のほかにはいない。手足胴首がばらばらに生まれた僕を縫い合わせて今日まで育てて下さったのは主神様だ。だから僕の同胞は主神様をおいてほかにはない」 阿修羅の太母は三つの顔を怒りに変える。 「ならばよし。主神を殺し、お前を連れ帰るまで」

2018-03-21 16:17:58
帽子男 @alkali_acid

太母が合図をすると、阿修羅の王子達が襲い掛かる。皆少年の前世の兄弟である。 少年は神鉄の弓に王女の髪の弦を張り、ありがたい文字を刻んだ矢筒から、聖なる樹の矢柄と呪いの岩の鏃、巨鳥の矢羽で作った矢をとって、放つ。

2018-03-21 16:19:58
帽子男 @alkali_acid

阿修羅はそれぞれ膝や肩を射抜かれ、大地に落ちてもがく。 「おのれ、同じ阿修羅に弓をひくというのか」 「僕は阿修羅ではない。主神様の子だ」 「許さぬぞ」 阿修羅の太母が鞭をとって打ち付け、弓に巻き付けて奪い取る。 「頭から飲み込み、我が腹で再び産み直してくれる」

2018-03-21 16:21:31
帽子男 @alkali_acid

少年は拳を固めるが、そのとき主神が割って入る。 「子は母に乱暴を働いてはならぬ」 「でも」 「たとえ前世のつながりであっても、子は母に乱暴を働いてはならぬ」 少年がひきさがると、主神は阿修羅の太母に向き直る。

2018-03-21 16:23:01
帽子男 @alkali_acid

「このものの前世であるところのお前の息子、阿修羅の王を私が討ち果たしたのは、三界の秩序を守らず、みだりに人の世を騒がし、命を奪いあるいは狼藉をほしいままにしたため。しかし生まれ変わったあとは、荒ぶるところはあるが、善行にとどめている」

2018-03-21 16:24:43
帽子男 @alkali_acid

「このものの心はもはやかつての阿修羅ではない。王に迎えるのであれば、阿修羅もまた変わらねばならぬ。それでよいか」 太母は前世の息子をながめて言う。 「それでも我が子にはそばにいてほしいのだ」 「ならば、礼儀を尽くして王にふさわしく招くがよい」 そこで少年は口を挟む。

2018-03-21 16:26:56
帽子男 @alkali_acid

「僕は阿修羅のあいだには参りません」 「王として阿修羅を正しく治めれば、これにまさる善行はない。三界の秩序のため、私もおおいに望むところである」 「いいえ。僕は主神様のおそばにおります」 「それよりは阿修羅の王となり、人や神の国とをつなぐかけはしとなるべし」 「いいえ」

2018-03-21 16:30:05