不知火に落ち度はない５7（海防艦）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「なんであいつにこやかなの？」 「すごいフレンドリーですね。罪悪感ゼロという感じです」 「なんで幼女首輪ついてんの？」 「不知火的には女児調教という単語が一番確実だと思います」 「今度は歩哨がどきましたよ」 「手ぇ振ってんな。来いってことだろうな」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「行きますか？」 「冗談──と言いたいが、どうもなあ」 すんごいフレンドリーにされてるし、歩哨も騒いでないし。 幼女飛び跳ねてるし。 「ちなみに不知火は指示があれば即ネットアップロード可ですが」 「待て。その、なんだ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

異常なのかもしれん。異常なのかもしれんけど。 「事実を確認してみようか」 「不知火はおすすめできませんが仕方ありません」 そうして俺達は誘導に従い──駐車場に車を置きに行くのであった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお、俺達が車を移動させる際、幼女がリードを引っ張られてその場に転倒していたのが、目視で確認できたことも伝えておきたい。 なにここ。なにこれ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「どうも初めまして、葉山で──」 「佐渡様だぜ──！！！！！！！！」 車を降りた瞬間、挨拶も済ませる間なく幼女のほうが俺に突っ走ってきて── #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

踏切は軽やかに。 小さな足で地面を蹴り。 その小さな体を１mは上に浮かせて。 身体を一瞬縮めてから。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「どーん！！！！！！！！！！！！！！」 めり。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

何が起こったか説明しよう。 幼女──いや、佐渡っていうガキンチョ様が、俺の胸板めがけてドロップキックかましやがったのである。 これには不知火も思わずポカーン。 俺も思わずポカーン。 そして、提督もリードを持ったままポカーン。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そして俺の制服の胸板には、きっちり足跡が２つ。 一方の佐渡と名乗ったガキンチョは、そのまま地面に落ちるかと思いきや。 くるりと空中でバランスを取り戻し、綺麗に着地して俺を指差しこう言った。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いひっ！ 油断大敵だぜ他所のオッサン！！！！」 あ。うん。 俺わかっちゃった。 俺今すっげー肌でわかっちゃった。 今までの謎が全て理解できちゃった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

つまりあれなのね。 つまりそういうことなのね。 「すすすすすすす、すみません兵頭提督ー！！！！！！！！！」 顔を真っ青にして、ちぎれたリード片手にこっちに駆け寄ってくる葉山提督を見ながら、俺の想像は大正解だったと思い知ったのである。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いや。気にしないでくれよ、葉山提督」 「お。全然堪えてねえってツラだなオッサン！！ やるな！！」 「佐渡ちゃん！！！ こら！！！」 「あ、なんだよ司令！？ 話ん途中だろー！！」 ずるずるずる。 佐渡と言われたクソガキ様が、腕を掴んで引きずられていく。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「あれは偉い人なんだよ、佐渡ちゃん！」 「全然みえねー！！ チンピラヅラだ！！」 「そう見えるかもしれないけど、偉い人なの！！」 「嘘だ！！ あんなんパチンコ屋に入り浸ってるツラしてるぞ！！！！」 わー。すげー。 ガキンチョって、言葉一切選ばないのすげー。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「失礼でしょうが！！ ホントにそう見えてもちゃんと偉い人なの！ 兵頭提督は！！」 「うっそでー。なあ、オッサン偉いの？」 おい、ぬいぬい。 さり気なくこっちに背中向けて、肩震わせてんじゃありません。 笑うならせっかくだから笑えよ。思いっきり笑っていいぞ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さて、埒が明かねえから、どうしたもんかな。 ぬいぬいはまだ笑いをこらえようとして身動きが取れない。 葉山提督は説き伏せようと必死で顔を青くし、佐渡ちゃんというガキンチョ様はすでに羽交い締め状態である。 うむ。ここは俺がキーポイントか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「一応偉いぞ。とーちゃんより階級３コ上」 「金か！！！！！！！！」 ぶふっと、不知火が吹き出してしまった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「金じゃねって。実力よ実力」 「うっそくせー。実力パワー感じねーぞオッサン」 おい佐渡ちゃんおやめください。 パパの顔色真っ青を通り越して、金魚みたいに口パクしてるから。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いや、こう見えても地球３回くらい救ってるからな」 「マジで！？ 地球破壊ミサイルとか止めたことあんの？」 「おう。太陽に投げ帰した」 うむ。ガキンチョ相手のトークならこのレベルにはったりかましていいよな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「すげー！！！！！！！」 「すげーだろー？」 よし、ノッてきたな？ 「なわけねーだろオッサン。海防艦舐めんなよ」 ぶふふっ。 不知火が再度吹き出した。 珍しい。ここまで不知火の笑いのツボ押さえたやつは初めてだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ったくガキだと思って侮ってんじゃね……もがっ！！？？」 「ひょひょひょ、兵頭提督！！！！！！ ！！！ 謝罪は後ほど正式に文書にしますから！！！ 少々お待ちください！！！」 「ん！！！？ んーー！！！！！！！！！？ んんんーー！！！！！！！」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして、葉山提督は真っ青な顔でガタガタ震えながら、足早に去っていく。 そして一方俺はというと── 「ぬいぬい」 「……しばらく……ぶふっ おまち……ください……ぶふっ」 壁に手ぇついて必死で笑いこらえてる超レア不知火を待つことになったのであった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「誠に申し訳ない！！！！！！！ どうかお許しください！！！！！」 「あー、いいっていいって」 そして、現在。 俺達は葉山提督の基地の応接室にて話をしている。 眼の前には茶菓子が一山置かれており、茶はなかった。 それはそうである。用意できる精神状態じゃねえ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「不知火としましては、再教育が必要なレベルだと判断しますが」 「や、やはりそうですよね！！……あああ……」 これ、ぬいぬい。追い詰めてあげなさんなって。 葉山提督頭抱えてんじゃん。 制服にドロップキックの痕はついちまったけど、別に骨がイってるわけじゃねえ。 #不知火に落ち度はない