図書室のネヴァジスタ 2018エイプリルフールまとめ

選択肢への投票に応じて展開された4月1日のエピソード。(選択肢の内容はtogetter上では表示されませんのでTwitter公式にてご確認ください。) 瞠君、誕生日おめでとう!
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TARHS Entertainment @neversista

俺は津久居賢太郎。少年犯罪専門の記者だ。 どんなに用心深く狡猾な子供の嘘にも俺は騙されない。 だが、今日はあいつの誕生日だ。 pic.twitter.com/TKexvpel7H

2018-04-01 20:14:31
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予定の時刻より遅れて幽霊棟に到着した。 頼まれた荷物をぶらさげながら、インターホンを押し、くわえた煙草に火をつける。 扉を開けたのは……。

2018-04-01 20:14:32
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生クリームまみれの煉慈だった。 「随分楽しそうだな。他に浴びたいものはあるか。ナッツ? チョコ?」 頬についたクリームを拭って、煉慈は低い声で唸った。 「シャワーだ」 「ケーキなら買ってきたぞ」 「おまえと連絡がつかないから即席でデザートを作ってたんだろ」

2018-04-01 20:32:38
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「春人は何してる?」 「あいつの名前は出すな。あの役立たず……」 「ボールを押さえておけって言わなかったのは辻村だろ。泡立て器をいきなり突っ込んだのもそっちだ」 煉慈の言葉を、キッチンの向こうの春人の声がかき消した。春人も生クリームまみれだった。 口論を聞き流して、俺は食堂を見渡した

2018-04-01 20:32:38
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「床に刺さってる包丁はなんだ?」 煉慈はため息を付いて、包丁の柄に手をかけた。ぐいぐいと引っ張っても包丁はびくともしない。 「和泉がやった。金槌で叩いて刺したから抜けない」 「危ない、触るな。こんなものがあったら晃弘が嫌がるだろう」

2018-04-01 20:45:28
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春人が困ったような顔で俺に金槌を渡した。 「賢太郎、刃物が見えないところまで打ち込んでよ。そうすれば茅も怖くないと思う。俺たち今忙しいんだ」

2018-04-01 20:45:29
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俺は金槌を受け取って、床に包丁を打ち付けた。咥え煙草の煙に目をしかめながら、トントンと重たい音を響かせる。 料理を皿に盛り付けながら、春人が小声で言った。 「賢太郎、静かに」 「ああ、悪い」 謝罪を告げて、俺は我に返った。 「おい、何故俺がこんなことをしなけりゃならない」

2018-04-01 21:06:33
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「どんな理由があれば、咲は包丁を床に刺したくなるんだ」 忙しそうにしていた煉慈と春人は、ぴたりと足を止めて互いを指さした。 「辻村のせい」 「白峰のせいだ」

2018-04-01 21:06:34
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「俺は先に言ったよ。和泉は絶対に怒るって。大丈夫だ、任せろって言ったのは辻村だろ!」 「元はと言えば、おまえが言い出したんだろ。久保谷にサプライズパーティーを開きたいって!」 その時、階段から人が降りてくる音が響いた。2人は血相を変えて俺を振り返る。

2018-04-01 21:06:34
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「賢太郎、誰も食堂に入れないで」 「うまく引き止めてくれ。俺たちは忙しいんだ」 背中を押されて階段の方に押し出される。自分勝手な学生たちに腹を立てたが、目の前に現れた人物に口を噤んだ。

2018-04-01 21:06:34
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「津久居くん」 俺は槙原の前方を塞ぐように立ちはだかった。 「よう」 「よう、じゃないよ。こんな時間にどうしたの。なんかあるの?」 薄情な台詞に俺は眉を寄せた。 「何って瞠のサプライズパーティーをするんだろ? 聞いてな……」

2018-04-01 21:39:00
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聞いてないのか、尋ねかけた瞬間、槙原の後ろから現れた晃弘に口を塞がれた。 「津久居さん、それはまだ秘密なんです」 晃弘は何故か私服の上にネクタイをぶら下げている。手を振り払って、俺は尋ねた。 「槙原にも?」 「サプライズ・パーティーするの!? 聞いてな……」 晃弘は槙原の口も塞いだ。

2018-04-01 21:39:01
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「聞かなかったことに」 晃弘は俺たちに事情を説明した。 「白峰がサプライズ・パーティーを計画したんです。ですが、久保谷は僕らの隠し事を見抜いてしまう特技があるでしょう。だから、辻村がミスリードを仕掛けた方がいいと」 「ミスリード?」

2018-04-01 21:39:01
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「何も知らない先生と、槙原先生にエイプリルフールのサプライズをすると思っている和泉と、僕と久保谷の合同誕生日の催し物を計画する僕です。つい先ほど聞かされました」 つまり、サプライズパーティー以外は偽企画だったということだ。 「自分の計画をダシにされたら、咲は怒るだろ」

2018-04-01 21:39:01
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「怒りました。それで和泉をなだめるためにサプライズは決行されたんです。本当は食堂で殺人事件が起きるはずだったんですが、妥協してもらって辻村の部屋で辻村に殺されました」 「だから辻村くんの誤魔化しが雑だったんだ……」 「僕もがっかりしましたが、白峰は僕の企画は合同誕生日会にやろうと」

2018-04-01 21:39:02
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「瞠と咲は?」 「辻村の部屋にいます。食堂の準備は終わりましたか?」 「いや、まだだ」 俺たちの会話を聞いて、槙原は頷いた。 「じゃあ、僕は部屋に戻って久保谷くんを引き止めておくよ」

2018-04-01 21:39:02
TARHS Entertainment @neversista

「頼む」 槙原を見送って、晃弘には部屋で待つように告げた。 パーティーの準備が整い始めた食堂に戻って、金槌を叩いていると咲がやってきた。 聞いていた話より、不機嫌な顔はしていない。 「機嫌は直ったのか?」 「フェイクだよ。晃弘も煉慈も下手くそだから」 咲は俺を一瞥すると、口端を上げた。

2018-04-01 22:08:11
TARHS Entertainment @neversista

「今夜のエイプリルフールに、僕が一番上手な嘘を吐いた」 得意げな咲に、俺も口元を綻ばせる。 「最低な奴だ」 「どういう意味?」 「エイプリルフールさ」 咲は機嫌よく、俺の背中にのしかかった。その衝動で包丁の刃が根本まで床に沈み込む。

2018-04-01 22:08:11
TARHS Entertainment @neversista

準備に忙しい煉慈と春人を見やって、ふいに俺はぎくりとした。 彼らが何故、槙原に計画を秘密にしていたのか。 嘘が吐けない槙原に話せば、瞠に隠し事が筒抜けになってしまうからだ。

2018-04-01 22:08:11
TARHS Entertainment @neversista

「よし、もういいだろ。白峰、茅と久保谷を呼べ」 「わかった」 煉慈と春人は声を弾ませている。咲は特等席で携帯を構えて、瞠があっと驚く決定的瞬間を撮影しようとしている。晃弘も足早に食堂にやってきた。 そして、遠くから、瞠の声が響いてくる。 「えー? なになに、マッキー」

2018-04-01 22:08:12
TARHS Entertainment @neversista

空とぼけた声に、俺は苦笑いを浮かべて、新しい煙草に火をつけた。 きっと、瞠はうまくやる。今までで一番上手に嘘をつくだろう。 瞳を輝かせて、彼を騙そうとする友人たちが、彼の驚嘆を待っていることを知っているから。

2018-04-01 22:08:12
TARHS Entertainment @neversista

扉が開く。 今日の主役の大げさな声と、いくつもの祝福の言葉が重なる。 瞳を細めて、俺は告げた。 【ending用選択肢】

2018-04-01 22:08:12
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「ハッピー・バースデー」 友人たちに無邪気な笑顔を広げていた瞠が、瞳の端で俺を見上げる。 ひそやかな笑みを浮かべて、指の裏で、俺の手首に触れた。 口封じのチップを渡すように。 照れ隠しのように。 【END】

2018-04-01 22:17:26
TARHS Entertainment @neversista

ラスト長くなっていってしまった…。即興でバタバタしてしまいましたが遊んでくださった皆様ありがとうございました、楽しかったです! 瞠の誕生日へのお祝いも感謝です! マシュマロは後日お返しいたします〜! 残り数時間、楽しいエイプリルフールをお過ごしくださいませ!

2018-04-01 22:20:02