トーナメント 序章

トーナメント開催の経緯
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ファーファ魔物 @behindpurple

こんばんは。創作のキャラでトーナメントをやろう。という話をまともにやろうということで、前提となる話を書いてきました。この話があって、後日トーナメントをやる感じになります。

2018-05-06 23:09:53
ファーファ魔物 @behindpurple

この話に出てくる主なキャラはこの人ら。ヤクザの頭三人と男娼館の経営者です。黒いのはゼスおじさん、赤服はキルヴェロンさん、青シャツはイズルシン、紫スーツはギリアン(経営者) pic.twitter.com/6PXVdICKb5

2018-05-06 23:12:04
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ファーファ魔物 @behindpurple

1 人ー或いは人ではないものーがこの区画を形容する時、脳裏に蘇るものは想像に難くない。あらゆる場所を照らすけばけばしいネオンの光、その影に見える無限に続く路地裏、根城にしている者達の剣呑さ、そして、その中央に居を構える一際巨大な建物。

2018-05-06 23:12:53
ファーファ魔物 @behindpurple

2 その施設は、周囲の猥雑さとは対極の、ある種の優美さを持ちながらにして、確かに、この区画の象徴と化していた。大仰で巨大な両開きの門構え、そこから一歩入ると広がる、手入れの行き届いた広大な庭、そして、その奥には、途方もなく巨大で壮麗な建築物が悠然と佇んでいる。

2018-05-06 23:13:24
ファーファ魔物 @behindpurple

3 今様でありながら、どこかに異な建築様式が含まれたー加えて、この建物は頻繁に、時として1日単位で外観が変わるという都市伝説めいた異様さでも有名であるーそれこそが、この区画で非合法組織からの治外法権を獲得している数少ない存在、『男娼館』であった。

2018-05-06 23:13:55
ファーファ魔物 @behindpurple

4 常夜の巨大都市ーこの街には空がない。空を見た事がある者もいない。空の代わりに見えるは永劫に続く剥き出しの配線、巨大生物の血管めいて錯綜するパイプ群であるーで淫靡な光を放つ歓楽区画、その中央に座する男娼館。その内部、赤のカーペットが敷かれた長廊下を、四体の生き物が歩いていた。

2018-05-06 23:14:26
ファーファ魔物 @behindpurple

5 一体は全身を黒で包まれた巨大な怪物だった。黒の革靴、黒のスラックス、黒のベルト、黒の半袖Tシャツータイトなそれは、その下の隆々たる肉体を主張しているー。 「相変わらず胡散くせえ場所だ、気に入らねぇ」 その声は低く、獰猛で、赤黒い筋繊維の塊が発するに相応しい。

2018-05-06 23:14:50
ファーファ魔物 @behindpurple

6 角ばった地獄の獣牙めいた構造の抽象的な顔面は、拳に纏っているものと同じ金属質の甲殻で出来ており、その中央に赤黒い光を灯らせている。 全身から剣呑さを漲らせる、230センチの巨人。この生物こそが、歓楽区画の支配を三分する三つの非合法組織のトップの一人、ゼスだった。

2018-05-06 23:15:25
ファーファ魔物 @behindpurple

7 「ヤクザが三人雁首揃えてガキの先導でご案内たァな。楽しい遠足だぜ、くくく」 ゼスの左隣で嗤ったのは、イズルシンだった。タトゥーを刻まれた黒い屈強な肉体を統制する頭部は、白金の装甲を纏い、一目で人のそれでは無いと判る。

2018-05-06 23:15:45
ファーファ魔物 @behindpurple

8 蜘蛛の巣の意匠が目立つインディゴブルーの半袖シャツに冷たい白のスラックス、白の革靴に身を包んだこの非合法組織の長は、一見軽薄だが、今長い廊下を歩いている全員が、この人外の本質がそこに無い事は承知している。 目を細めると、イズルシンは喉を鳴らしてもう一度嗤った。

2018-05-06 23:16:09
ファーファ魔物 @behindpurple

9 「急にすまなかったね」 隣を歩く二人の人外のぼやきを無視して先導するスーツの少年に、穏やかな声で労いの言葉をかけたのは、三組織の長の最後の一人、キルヴェロンだ。上品な色合いのワインレッドのスリーピース・スーツを纏いゆったりと歩くその様は、ある種の優雅さを伴っていた。

2018-05-06 23:16:38
ファーファ魔物 @behindpurple

10 頭部は冷たい金属の兜でも言った造形で、髪にも見える流線型の造形と、複数のスリットを持つ鉄仮面様の造形で構成されている。無論、それは仮面でも兜でも無い。これがキルヴェロンの顔なのだ。 「いえ、構いません」 歩みを止めずにそう言った少年は、青い髪に褐色の肌をしていた。

2018-05-06 23:16:58
ファーファ魔物 @behindpurple

11 一目で客では無いと解る、三人の非合法組織の長を先導していたのはアズラーク。れっきとしたこの館の職員である。黒のスーツに身を包んだその姿は、この区画には不釣り合いな程、そしてこの場所にいるべき存在では無いと思えるほど、気品に満ちていた。 「館主は基本的に暇ですから」

2018-05-06 23:17:19
ファーファ魔物 @behindpurple

12 少し微笑みを湛えた声でそう言うと、アズラークは永劫に続くかと思われた廊下を左に折れた。三人の人外はゆっくりとそれに続く。 「クソが、長ぇんだよ。勿体振りやがって」 巨体を揺らしてゼスがぼやくと、長い一本道の先に、一目でそれと解る大仰な扉が見えた。

2018-05-06 23:17:40
ファーファ魔物 @behindpurple

13 過剰なまでの装飾に彩られた両開きの扉の前にぴし、と立つと、アズラークは4回ノックをし、お連れしました、とやはり流麗な調子で扉の向こうの存在に伝える。 「はーい、どうぞどうぞォ〜!」 気の抜けた返事にイズルシンが鼻を鳴らして嗤うとと、アズラークがゆっくりとその扉を開く。

2018-05-06 23:18:04
ファーファ魔物 @behindpurple

14 悪趣味の領域に脚を突っ込んでいる部屋に三人が入室したのを確認すると、褐色の秘書めいた少年は、人外たちの背後で扉を静かに閉め、外に消えた。 「どぉ〜もお久しぶりでぇ。まま、かけなよ」 ギリアンは笑みを浮かべ、執務机の奥の椅子に座ったまま大仰な手振りで面会者を迎えた。

2018-05-06 23:18:34
ファーファ魔物 @behindpurple

15 「ホラ、そこそこ、ソファね」 そう言って指をさす。三人の前にはそれぞれ三人の体型を測量して設えたかの様な黒革張りのソファが鎮座していた。その前には白の巨大なソファーテーブル。 「薄気味悪ィ野郎だ」 ゼスは忌々しそうに言うと、一目で自分用と解るそれにどかりと腰掛けた。

2018-05-06 23:18:56
ファーファ魔物 @behindpurple

16 「暖かい歓迎、感謝するよ」 ソファに腰掛けながらそう言うキルヴェロンを傍目に、自らもそれに腰を下ろしながら、イズルシンはその発言が本心なのか皮肉なのか一瞬考えた。おそらくは本心だろう。このいけ好かない鉄仮面野郎は、こう言う事をさらりと言える能力に恵まれているのだ。

2018-05-06 23:19:27
ファーファ魔物 @behindpurple

17 「いえいえぇ。なんせ御三方の来訪となればねぇ!俺としても緊張しちゃって!」 なんの書類も載っていない、ただひたすらにその巨大さと高級感をひけらかす執務机に脚を組みのせると、ギリアンはニコニコと笑った。

2018-05-06 23:19:49
ファーファ魔物 @behindpurple

18 「ったく、楽しい野郎だなァ……化かし合いだの猿芝居合戦する気はねェ。本題に入ろうや」 そう言うとイズルシンもまた、ソファーテーブルにがすんと両足を組み載せる。 「そうそう、その本題っつー話なんだけどねェ?」 「シラァ切ってんじゃねェぞタコが」

2018-05-06 23:20:13
ファーファ魔物 @behindpurple

19 「まぁ、待って」 キルヴェロンが自身の右に座って極めて非合法組織らしい口調で恫喝し始めたイズルシンを制する。 「いつまで経っても雑魚臭ぇなあオイ」 ゼスがイズルシンを揶揄して唸る様に笑った。 「脳筋のクソがホザくんじゃねェよ」 イズルシンが吐き捨てる様に応じる。

2018-05-06 23:20:36
ファーファ魔物 @behindpurple

20 「まぁ、待って」 キルヴェロンがもう一度制し、場を繋ぎ止める。 「おぉう、怖い怖い……んふふ」 微かに笑ったギリアンをキルヴェロンは見やる。 「ギリアン、君がそういう態度を取るのは百も承知している。けれど、僕らとしてもそろそろ提案に対する反応を見せて欲しい」

2018-05-06 23:20:58
ファーファ魔物 @behindpurple

21 「アンタらの誰かにつけってアレでしょオ?」 「そう、それだね」 治外法権を有する『男娼館』だが、その本質を担っているのはギリアンなのだ。この紫色のスーツを着込んだ痩身長駆の人外は、規格外の能力を持った正真正銘の怪物だった。

2018-05-06 23:21:35
ファーファ魔物 @behindpurple

22 そもそも、ギリアンの持つ能力を明確に定義できる者は誰もいなかった。一夜にして男娼館を「出現」させたと思えば、いつの間にかその中はこの街に決して存在しない亜人を含む少年達で満たされていた。出所不明の莫大な金を盛大にばら撒き、方々の非合法組織と不干渉の契約を締結した。

2018-05-06 23:21:59
ファーファ魔物 @behindpurple

23 何度か、この不干渉が破られた事があった。ばら撒く金があるなら全て奪えばいいと、愚かな非合法組織が男娼館ー当時の男娼館の外観は今のそれとはまた似ても似つかないものだったがーを襲撃したのである。そして、彼らは2度と帰って来なかった。文字通り消えたのだ。

2018-05-06 23:22:23