ハート・オブ・ダウントロッデン・ソウルズ #2
彼のニューロンにマスラダのものでない記憶が去来した。キツネ・オメーンのニンジャの断末魔が浮かび消えた。今繰り出したカラテは記憶と違う。どこか禍々しくイビツだった。イビツでありながら、しかし、補われ、新たな形をとろうとしていた。さながらそれは割れた器を金で繋ぐワザのように……! 24
2018-05-07 23:14:18「グワーッ!」KRAAASH!ザルニーツァのイサライト・アーマーの一部が蛍光色の飛沫をあげて爆ぜた。「グワーッ!」KRAAASH!別部位が爆ぜた。「グワアアーッ!」KRAAAASH!ザルニーツァが仰け反った。装甲の三割が剥離し、焼けながら散らばった。ザルニーツァは倒れた。 25
2018-05-07 23:17:08ニンジャスレイヤーは着地に失敗し、肩から地面に落ちた。地面を掴み、強いて身を起こす。敵を振り返った。ザルニーツァの無貌のフルメンポが割れ、金髪が流れ、傷だらけの白い背中があらわだった。(((殺せ。マスラダ)))ニンジャスレイヤーは頷き、腕をしたたる血からスリケンを生成した。 26
2018-05-07 23:20:40……シトカ某所、氷のホール。ソファの上でシンウインターは膝に手を乗せ、スカムTVを見ていた。見ていたが、見ていない。こんなとき、ミギとヒダリは無暗に話しかけはしない。それは激しい怒りを招くと知っている。……やがてシンウインターは呟く。「ザルニーツァ。我が娘」 27
2018-05-07 23:24:15ミギとヒダリは緊張して主を見た。「失うわけにはゆかぬ」シンウインターは抑揚のない声で言った。「昨日のように思い出す。ようやく見つけたのだ。失わせてはならん。失わせては……わかっておるか」『現場に到着』スノーマンの通信が彼に返った。 28
2018-05-07 23:27:47「ザルニーツァ。あの日以来、ずっと俺を愛し、俺を信頼し、俺に応え続けた。愛しい娘だ。このつまらぬ敗北が、お前の愛の結末であってはならない」『確保します。生存を確認。バイタル信号は微弱……』「わかっておる」シンウインターはソファに深くもたれた。 29
2018-05-07 23:32:04『ニンジャスレイヤーと遭遇』スノーマンは言った。『どちらを優先いたしますか』「ザルニーツァだ。当然だ」シンウインターは言った。そして呟いた。「決して許さぬぞ。ニンジャスレイヤー」 30
2018-05-07 23:34:39……「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。スノーマンです」「ドーモ。スノーマン=サン。ニンジャスレイヤーです」対峙する二者はアイサツを終えた。ビッグニンジャのスノーマンはほとんど無雑作に、肩でニンジャスレイヤーのスリケンを止めていた。スリケンは筋肉に沈み込み、消えた。 31
2018-05-07 23:37:35「ザルニーツァ=サンを殺す事はボスが許さん」無表情のスノーマンは無感情に言った。「ニンジャスレイヤー=サン。俺は今すぐお前を殺したい。残念だ」「それは貴様が決める事ではない」ニンジャスレイヤーは言った。スノーマンのメンポの顎が獣めいて開く。彼は口からスリケンを吐いて捨てた。 32
2018-05-07 23:42:03「どのみちお前はこのシトカを出る事はできない。檻の中のネズミだ」スノーマンはザルニーツァを抱え上げた。「じきに殺してやる。お前が消されるより早く、俺にその機会が与えられればの話ではあるが」「イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを二発投げた。スノーマンは手をかざす。33
2018-05-07 23:45:18スノーマンはほとんど面倒そうに、掌でスリケンを受けた。スリケンはスノーマンの身体に呑み込まれた。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。スノーマンは向きを変えた。「やめておけ。俺はボスが恐ろしい。ザルニーツァを運ばねば。幸運だったな、ニンジャスレイヤー=サン」 34
2018-05-07 23:48:41「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」更に三発のスリケン!スノーマンの腕が、肩が、スリケンを呑み込んだ。ニンジャスレイヤーは焦げた息を吐き、よろめいた。スノーマンのうつろな一瞥は無感情であったが、確かに侮蔑のニュアンスがあった。「イヤーッ!」スノーマンは跳んで去った。35
2018-05-07 23:51:24ニンジャスレイヤーは膝をつき、地面を殴りつけた。もう一度殴りつけた。数分の停止の後、彼はゆっくりと身を起こした。「理解不能。理解不能」……横倒しのモーターサイクルがUNIX電子音を発し続けている。彼はそちらに向かう。おぼつかぬ足取りは、一歩踏み出すごとに力強さを徐々に取り戻す。 36
2018-05-07 23:54:47