ドラゴン・インストラクション #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(シンウインターの目は表情を動かさない。「冷徹なる父の存在と暗黒のカラテがなくば、家族は守れぬ。今お前がそれをわかる必要はない。子は親に従えば、それでよい」「……!」ザルニーツァは呻いた。足元の重力が失せたような錯覚が襲ってきた。目の前に、恐るべきニンジャが立っている。)

2018-09-24 21:36:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ザルニーツァは奥歯を強く噛みしめた。挫けかけた己を強いて、カラテを引き出そうとした。イサライト・アーマーが応えた。ザルニーツァはシンウインターの手を跳ねのけた!「イヤーッ!」「ウヌッ」シンウインターは意外そうにした。微かに怯んだ隙に、ザルニーツァは再びゾーイの手を取ろうとした)

2018-09-24 21:37:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(シンウインターは右腕を掲げた。丸太めいた力強い腕を、超自然のオーロラの輝きが這った!「イヤーッ!」ザルニーツァは拒絶する! ポン・パンチを繰り出す!「イヤーッ!」シンウインターはオーロラを纏った腕を振り下ろした!)

2018-09-24 21:38:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ドラゴン・インストラクション】#5

2018-09-24 21:39:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シンウインターのチョップはザルニーツァの拳を上から打ち、そのカラテを殺した。渦巻くオーロラが腕から身体に伝わり、ザルニーツァはその寒々しい感覚に慄いた。「その拳の意味は何だ、我が娘よ」シンウインターはザルニーツァに問うた。 1

2018-09-24 21:42:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私は」ザルニーツァは言葉を探した。視界が霞み、過去の光景がフラッシュバックする。(探したぞ、愛しい我が娘よ)そのとき、窓越しの眩しい明かりで、父の顔は黒い影になっていた。(あれが、まさか俺の子を宿していたとはな。想像だにしなかった事だ。こんな僥倖があろうか。ンッンッンッ) 2

2018-09-24 21:47:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(名はオリガと申しまして……)院長が揉み手して口を挟んだ。シンウインターは無雑作に院長の肩を押さえ、力を込めた。(邪魔だ)(ア!アイ、エエ、エ、アバーッ!)押さえた肩が砕けて下に沈み込み、院長は失禁しながら床に転がった。(お前は俺の子だ。こんな素晴らしい事はない。家族だ) 3

2018-09-24 21:50:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(私……私は)窓の外、空がにわかにかき曇り、稲妻が閃いた。(よかろう、ザルニーツァにでもするか。お前の名はザルニーツァだ。来なさい)シンウインターは一歩踏み出した。砂嵐めいたノイズが、記憶をかき消す。途切れ途切れの映像が紛れ込む。 4

2018-09-24 21:55:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(自分のガキが孤児院に居たと知ったらどうする?胸を満たしたのは、驚きと、喜びだ。俺にはもう子を残す力はない。だから嬉しかった。俺の愛と……正義感が燃えた……義心がな)混線じみた他者の記憶。ザルニーツァの背後、ゾーイの瞳孔は開き切っていた。ザルニーツァは呟く。「この娘が不憫です」5

2018-09-24 21:59:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何がだ」シンウインターが眉根を寄せた。「この娘は私と同様、あの孤児院で……」「何がだ?」シンウインターは繰り返した。彼の言葉に苛立ちが混じった。「お前は俺の愛しい娘だ。そこのガキは金の雌鶏で、サツガイの餌になる。同様?何が同様なのだ?何が、同じだ?本気で言っているのか、娘?」6

2018-09-24 22:04:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ザルニーツァはワン・インチ・パンチを繰り出す!シンウインターは受け止め、捩じり上げようとする!ザルニーツァはカラテを込め、圧倒的な力に逆らおうとする!「愛しい娘よ!家長に拳をあげることは……許さん!」シンウインターの眼光は冬空めいて厳しい! 7

2018-09-24 22:10:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザルニーツァの骨が、肉が、悲鳴めいて軋む。イサライト・アーマーが外骨格となって彼女の身体を守ろうとする。「イヤーッ!」ザルニーツァは逆の手で殴ろうとした。シンウインターは受け止めた。「お前は強い……実際強い!サイグナスのカラテとカタナの技術がお前を真の戦士に変えた!だが!」 8

2018-09-24 22:12:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オーロラがザルニーツァの身体に流れ込む!寒い!イサライト・アーマーのUNIXライトが苦しげに明滅する!「お前に全てを与えたのはこの俺だ!それを忘れるな!」「ンアアアーッ!」装甲が蒸気を噴き、ザルニーツァは膝をついた!「感傷は……」シンウインターは手を離した。「……いずれ醒める」 9

2018-09-24 22:16:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザルニーツァはうなだれ、動かなくなった。ピシピシと微細なスパーク音が鳴った。シンウインターは壁を数度殴りつけた。音を聞きつけて、警備クローンヤクザが廊下を走って来た。「ドシタンス!」「ガキの脱走だ。部屋に戻しておけ」「スッゾ!」ゾーイは抵抗する気力もなく、引き立てられていった。10

2018-09-24 22:20:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おいたわしや」カシマールは呟いた。シンウインターは重々しく頷いた。「これも試練だ。だが乗り越えられる。所詮は麻疹めいた、つまらぬ気の迷いだ。そして、迷わぬ者などおらんのだからな……ンッンッンッ」シンウインターは踵を返し、去ってゆく。去り際にカシマールに問う。「奴はいつ戻る」11

2018-09-24 22:26:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「時が整えば……ウ……ウフ……すみやかに」カシマールは震えた。「とても近い。見えたので御座います……神の座が……く、黒い、黒い連なりで御座います。太陽が上がりました。隠れるために上がったので御座います。近い……嗚呼」「そうか」シンウインターは歩き去った。カシマールは影に消えた。12

2018-09-24 22:31:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」カークィウスは跳躍からの連続蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは身を沈めて躱し、回転しながら蹴り上げる。いわば天と地の回し蹴り、アルマーダマテーロとメイアルーアジコンパッソの相克! 14

2018-09-24 22:37:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」蹴りが相互に空を切り、やがて二者はワン・インチ距離に!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」たちまち開始される木人拳めいた近接カラテ応酬!激しく動くお互いの両手はさながらパズルじみた複雑な相互作用組手!15

2018-09-24 22:42:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「イヤーッ!」」KRAASH!互いの打撃がぶつかり合い、砂に道めいた痕跡を作りながら二者の間合いが離れると、その奥ではサイグナスとサツバツナイトが同様に激しいカラテのせめぎ合いを繰り広げていた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」 16

2018-09-24 22:44:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツバツナイトはサイグナスの攻撃を防ぎ続けた。まるで嵐だ。一つの打撃をガードすれば、その間に新たなサイグナスが重なるように生じ、次の打撃を押し付けてくる。サツバツナイトの目が橙に燃える。一度やりあった相手だ。同じように押され続けて終わるようでは不甲斐無し! 17

2018-09-24 22:46:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「イィーヤヤヤヤヤヤ!」」ニンジャスレイヤーとカークィウスは飛び道具をぶつけ合った。ニンジャスレイヤーはスリケン、カークィウスは羽根を変じたクナイである。手数は共に凄まじい。そしてカークィウスの羽根はスリケンに弾かれるや外へ逸れ、この戦場を今や取り囲む羽根嵐ドームに加わる! 18

2018-09-24 22:50:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「イィーヤヤヤヤヤヤ!」」なおも飛び道具をぶつけ合う二者!ニンジャスレイヤーは投げ、投げ続けた。腕を振り抜き、逆の手にカラテを込め、振り抜く。カラテが速度を生み、金属を生み出して、それがスリケンとなって敵のもとへ飛ぶ!カークィウスは同様に羽クナイを射出し続ける! 19

2018-09-24 22:54:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

既に戦場を覆う羽根刃のドームは攻撃に転じるに十分の濃度を備えつつある。彼がジツを用いれば、ただちに羽根刃は四方八方から降り注ぐ殺戮の雨と化す!だがジツを用いるにはニンジャスレイヤーのスリケン連続投擲を止めねばならなかった。「イヤーッ!」「イヤーッ!」 20

2018-09-24 22:57:06