カウンシル・フジミ ＃４

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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【カウンシル・フジミ】#4

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（これまでのあらすじ：マスラダ達が対過冬会議を＜筋＞にて執り行っている頃、シトカのあちこちで危険なヤクザニンジャ抗争が発生していた。暗躍するクローンヤクザ。血祭りにあげられる双方のニンジャ達）

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（過冬の最精鋭戦士「ワイズマン」のスノーマンと、ソウカイヤの首領直属戦士「シックスゲイツ」のシガーカッターが対峙するのも必然と言えた。スノーマンはソウカイヤのイルストーンを殺し、シガーカッターと命のやりとりのアイサツをかわした……）

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着流し姿のサイバネ・ニンジャと、身長3メートル超のビッグニンジャは同時にオジギを終え、同時にカラテを構える。たちまち空気がゼラチンの煮凝りめいて重苦しく凝固し、陽炎めいて二者の姿を歪ませる。シャッター商店街の隙間を、ゴウゴウと音を立て、冷たい風が吹き抜けていった。　1

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商店街シャッターには桃色の象と黄色の象が睦み合う絵が描かれている。「大事911」。その素朴なタッチは殺し合おうとする二者にはおよそそぐわず、逆説的に、その凄まじさをより際立たせている。そして商店街のなお後ろには、異常発展を遂げたシトカの高層ビル街区の影がオーロラの光を受けていた。　2

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シガーカッターはカタナをいまだ鞘に納めたまま、やや姿勢を落とし、間合いを慎重に調節している。彼はイアイ使いだ。イアイドー即ち、攻撃の瞬間にのみカタナを鞘から抜き放ち、それまで押さえ込まれたエネルギーのコンマ数秒間の瞬間解放によって爆発的な殺傷力を作り出す、ケンドーの極北である。3

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イアイのタツジンはカタナの触れぬ距離にすら斬撃を届かせ、ショウジ戸の奥の敵を真っ二つに切り裂き、しかしショウジ戸にはささくれ一つ生じないという。あるいは、一息のもとに相手の首を刎ね、刎ねられた者は己の死に気付かぬままバーに立ち寄り、カウンターで生首をごろりと落として死ぬという。4

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スノーマンはシガーカッターのワザマエをはかる。「成る程」と呟く。チョンマゲ髪のシガーカッターはそのほぼ全身がサイバネティクス。カタナの長さはおよそ4フィート（約122センチ）。イアイの武器に用いるには大振りにすぎるが、それを敢えて用いるがゆえのサイバネティクスであろう。　5

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スノーマンにスリケンは効かぬ。打撃攻撃もおおむね反撃の機会でしかない。ではカタナの斬撃はどうか。彼はニンジャ動体視力、ニンジャ聴力、ニンジャ第六感を総動員し、シガーカッターの身体の緊張の推移、駆動機関の発する歪み音を感じ取る……。「イ……」ドクン。スノーマンの時間が泥めいた。　6

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「ア……」バチチ……かすかな火花がシガーカッターの肩口に生じる。スノーマンは全身にカラテを行き渡らせる。見えた。数瞬後のシガーカッターの腕の動きを感じ取った。スノーマンはかすかに目を大きく見開いた。「……イ！」シガーカッターの肩甲骨がスライドした！そして強引にカタナを抜いた！　7

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スノーマンの腹が、裂けた！……通常ならば！シガーカッターの大業物のカタナはスノーマンの胴体の4分の3を薙ぎ払った。スノーマンは無事であった！そのまま踏み込み、丸太めいた腕を振るって、拳を叩きつけた！「イヤーッ！」KRAAASH！「グワーッ！」シガーカッターはキリモミ回転して倒れ込む！　8

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「イヤーッ！」その時すでにスノーマンは空中！三回転して勢いをつけ、恐るべき両足ストンピングでトドメを刺しにゆく！「イヤーッ！」シガーカッターはキリモミ回転しながら片手で地面を支え、跳ねた！KRAAAASH！スノーマンのストンピングが地面に突き刺さった！　9

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「イヤーッ！」スノーマンは高速裏拳を繰り出す。砕けた石畳の破片が彼の周囲に舞っている。彼はそれを殴りつけ、スリケンじみてシガーカッターに飛ばす！「イヤーッ！」シガーカッターは空中キリモミ回転回避の中から目にもとまらぬ連続斬撃を放つ！致命石つぶて全てを切り払う！タツジン！　10

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ズシン！ズシン！バッファロー殺戮武装鉄道じみた勢いで、スノーマンは着地したシガーカッターをめがける。この者のイアイは恐るべき水準に達している。かなりのアブナイであった。だが二度目はない。スノーマンのジツはカタナの攻撃にあまり向かない。ゆえに得意である。対処訓練を積んでいる。　11

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「グヌ……」シガーカッターは顔をしかめ、向かってくるスノーマンを睨み据える。闘志の火は少しも衰えていない。たいしたものだ。スノーマンは称賛する。だが体軸にブレが生じ、サイバネティクスのナノ・モーターの駆動音にも微かな異音が混じっている。当然だ。ビッグニンジャの拳を受けたのだ。　12

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バカリ。音を立てて、シガーカッターのメンポの接合部が耐えきれず、脱落した。露となったのはクロームの骸骨めいた顎。顎から上、すなわち脳は生身。ビッグカラテ・チョップで頭蓋もろとも粉砕し、終わらせる。「イヤーッ！」「イヤーッ！」シガーカッターは反撃！納刀したカタナの柄で打ち返す！　13

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KRASH！スノーマンが打ち下ろしたチョップは弾かれた。意外ではなかった。これほどのイアイの使い手。ニンジャ第六感によって、スノーマンのジツの何らかの兆しを感じ取ったのであれば、対処もしてくる。瞬間的な打突の後、シガーカッターは極めて素早くカタナの柄を引き戻していた。捉え損ねた。　14

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「イヤーッ！」ならば掴みに行く。スノーマンは両側から挟み込むように掴みかかる。「イヤッ！イヤーッ！」シガーカッターの腕が残像を伴い、ブレる。スノーマンは眉根を寄せた。一瞬後、彼は大きく両手をひろげていた。そのビッグハンドを、小刻みに柄頭で弾き返し、拒絶したか。　15

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だがシガーカッターにとってもその防御行動の代償は大きい。関節部のパーツの幾つかが剥離し、足元に転がった。バシュッ……。圧縮空気が漏れ出た。スノーマンはビッグ前蹴りを淡々と繰り出す。たとえ後ろに跳び下がろうと、ビッグニンジャの蹴りのリーチ外へ逃れる事は絶対に不可能。「イヤーッ！」16

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「ミキッタリ」シガーカッターは呟いた。確かに呟いた。異常拡大した主観時間下、スノーマンの鼓膜にその不吉な言葉を確かに捉えた。慢心はならぬ！スノーマンはビッグ前蹴りを放つ一瞬前にその動きをキャンセルし、後方へ飛び下がった。冷徹なイアイ斬撃軌道計算を伴って。　17

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スノーマンは己の胴体の4分の3をカタナが通過する感覚を現実に先んじて味わった。彼は両手を組み、頭上に振り上げた。イアイを受けきり、腕を振り下ろし、シガーカッターを脳天から叩き潰し、殺す。「イヤーッ！」「イ……アイ！」　18

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ドクン。スノーマンは己の心臓のひと打ちを聴いた。その直後、主観時間がほぼ停止した。ゆっくりとシガーカッターが動いている。肩甲骨がスライドする。奴のヒサツ・ワザだ。だが彼のニンジャ第六感はより恐るべき段階を感じ取る。カタナだ。刃渡り4フィートのカタナ、その刀身が……スライドした。19

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斬撃の勢いを伴って、シガーカッターの刀身はスライドしてゆく。冷たい鋼の表面を静電気が駆け抜ける。間に合うか？スノーマンは肝を冷やした。間に合う。危ういところだ。このバックステップの判断をもうコンマ01秒誤っておれば……「イアイ！」シガーカッターの腕が、スライドした。　20

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その瞬間、シガーカッターのカタナ持つ腕の関節部が蛇腹じみて別れ、ムチめいてしなり、今や刃渡り8フィートに変形したカタナを……ナムサン……振り抜いたのである！「グワーッ！？」　21