カウンシル・フジミ #4

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スノーマンは己の脊椎が分断されたことを自覚した。肉体の100%を刃が薙ぎきり、通過した。(まずいな)彼はニューロン内で呟いた。自覚しながら彼は突き進んだ。シガーカッターは納刀した。死の覚悟をその目に宿し、しかし、絶望的な防御姿勢をとる。スノーマンは殴りつけた。「イヤーッ!」 22

2018-06-21 22:53:00
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K-RAAAAASH!スノーマンのチョップはシガーカッターの腕をへし折り、肋骨部を捻じ曲げ、深く抉った。「ゴボッ……!」電解液が迸った。シガーカッターは……ゴウランガ……倒れなかった。スノーマンはアッパレな戦士を見上げた。既にスノーマンの上半身は腰から別れ、地に伏せていた。  23

2018-06-21 22:55:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チョップを叩き込んだその瞬間、遂にスノーマンの身体は斬撃に耐え兼ね、その接合を失っていた。「信じられぬ」彼は素直にそう呟いた。「やるな。シガーカッター=サン。成る程」「……」ミシミシ、バチバチと異音を発し、小刻みに震えながら、シガーカッターはスノーマンを見下ろした。 24

2018-06-21 23:01:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スノーマンのアメナガレ・ジツは己の身体を流体化させるジツ。本来は身体をスライム化して潜伏したり、相手に巻き付いて窒息させる類のジツである。カタナ・リバプール社の先端テクノロジーを用いたナノ装束が、違った強さを彼にもたらした。流体化し、同時に、人の輪郭を保たせる。 25

2018-06-21 23:08:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、装束が分断され、その微細なテクノロジーが破損した今、彼は流体でもなく、無敵のニンジャでもなく、ただ死にゆく固形の、半身のニンジャであった。彼はザンシンするシガーカッターの肩越しにオーロラ輝く空を見た。「ザルニーツァ=サン。お前が心配だ」彼は呟いた。 26

2018-06-21 23:11:51
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シガーカッターはぎこちない動きでワキザシを引き抜き、掌でその刃を下向け、打ち下ろした。「……イヤーッ!」刃がスノーマンの頭を貫いた。「サヨナラ!」スノーマンは爆発四散した。シガーカッターはバチバチと火花を放ち、もはや動けず、膝をつき、うずくまった。ナムアミダブツ……! 27

2018-06-21 23:13:31
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ゾーイは硬いベッドに腰を下ろし、俯いた。「平気か」マスラダは横の椅子に座り、尋ねた。「平気」ゾーイは答えた。マスラダは重ねて尋ねた。「どうした」「ううん」ゾーイは首を振った。「ええと、疲れた。色々あって。色々」「だろうな」「下に居なくていいの」「勝手にやらせておけ」  29

2018-06-21 23:22:14
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「アイツ大丈夫かな……」ゾーイはシルバーキーに言及した。「お前がわからんのなら、おれにもわかる筈がない」と、マスラダ。「とにかくおれは、あの浜辺にお前を連れて帰る。シンウインターが邪魔だ。だから殺す。そうすればこの街ともおさらばだ。あとは勝手にどうにかしろ」「……うん」 30

2018-06-21 23:26:59
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ゾーイは弱く笑った。マスラダは見咎める。「どうした」もう一度訊いた。ゾーイも、はぐらかせない事がわかっている。彼女は答えた。「アタシ、ここまで来るのに必死だった。必死で逃げて、必死で戦った。アタシの力。便利だと思って。便利でしょ」「……」「ほら。ね」マグカップ二つ。熱いチャだ。31

2018-06-21 23:30:44
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マスラダは受け取り、チャを飲んだ。ゾーイはマグカップに口をつけ、「あつッ!」怯んで、苦笑した。「これくらいなら、全然平気。でも、お茶じゃ戦えないでしょ?だからアタシ、必死で沢山呼び出したよ。オムラの機械とか、銃とか、沢山。だから逃げて来れた。コトブキ=サンも助けてくれた」 32

2018-06-21 23:33:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「アタシ、何なんだろう?」ゾーイはマスラダを見た。「過冬の奴らに捕まったら、きっと、もっと沢山のものを引き出さないといけないよね。めちゃくちゃになるんだよ。だけどね、ただ便利なだけじゃなかったんだ、あんまり使ったらいけないんだ、アタシは何なんだろう?昔の事も知らない!」33

2018-06-21 23:35:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前が知らないなら、おれが知るわけがない」マスラダは椅子を立った。デスクにメモ帳が刺してある。彼は一枚剥がし取った。ゾーイは目で追った。マスラダはメモ用紙を折りたたみ、整え、ゾーイに手渡した。「ここに息を吹き込む」「……」ゾーイは言われたとおりにした。ツルのオリガミになった。34

2018-06-21 23:38:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「すごい」「覚えれば難しくない。いちいち取り出さなくても作れる」「……」ゾーイは頷いた。じっと掌の上のツルを見る。「それは、やる」マスラダは言った。「おれにはいらないものだ」「……アリガト」ゾーイは言葉を探す。言葉は出てこない。首にさげたお守りを手で探る。 35

2018-06-21 23:46:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダはゾーイの首の鎖を見た。「これ?」ゾーイは鎖を引き、首から下げていたものを見せた。「その……話せば長くなるんだけど。アタシが昔居た孤児院があってね、ええと、コトブキ=サンとそこに逃げて、そこで、アタシが昔に持っていたものだって、これを」 36

2018-06-21 23:48:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……それは、ランダムな八本の刃が飛び出した、特異な形状の、スリケンである。ゾーイはそれをマスラダの手に乗せた。「多分、これが、アタシの……?……?」ゾーイは目を上げた。石めいて凍り付いた沈黙。やがて彼は言葉をしぼりだした。「サツガイを……知っているか」 37

2018-06-21 23:51:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バラララララララ……バララララララララ……「エ?」ゾーイが訊き返した。バララララララララララ。バララララララララララララ!「ゴメン、何て言ッ……」バララララララララララララ!バララララララララララララ!爆音は<筋>のすぐ外から聴こえてくる! 38

2018-06-21 23:54:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バララララララララララララ!バララララララララララララ!バララララララララララララ!バララララララララララララ!バララララララララララララ!バララララララララララララ!それはヘリコプターの降下音!<筋>の一階、スーサイドとフジキドが表へ飛び出す!風圧が彼らの髪をはためかす! 39

2018-06-21 23:56:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「見給え!俺は真実しか言わんよ!わかってくれたかね?俺が信頼に足るジャーナリストだという事を!」店内、クローザーは小指を立ててワインを飲み、外で立ち尽くすスーサイドとフジキドの背中に声をかけた。「俺は本格派なのだ!クキキキキキ……!お出ましだ!シンウインター!シトカの王!」40

2018-06-21 23:59:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

然り。ほとんど気楽な買い物にでも来たように、店の前の路上にホバリングするヘリから無雑作に降り立ったのは、確かにシンウインターであった。スーサイドは思わず胸を押さえた。ニューロンの中で、彼は恐怖に搾り上げられる弱い己を殴りつけた。「正念場だ」彼は乾いた唇を舐めた。「正念場だ畜生」41

2018-06-22 00:03:55