【証言集】「サリン事件、その時私は…」体験語る連続ツイート集

浮草流雲 @r_fusoh

振り返ってみる。 1995年3月20日は翌21日に晴海の東京国際見本市会場で開催されるComicCityの前日設営日で、早朝に東京入りした私は有楽町駅前でタクシーを捕まえて晴海へ向かおうとしていた。

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（なんでわざわざタクシーなのかと言うと、当時、赤ブー事務局内に｢領収書のない交通費は精算できない｣とか抜かしたバカねーちゃんがいたので、じゃあ領収書のもらえる交通手段を使いますわ、と言う流れだった。ちなみに立ち上げ直後のグリーン18をコカす原因を作られたのも概ねこの方）

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いつもの如くタクシーを捕まえ、晴海会場まで、と告げたら運転手さんは困ったように「ガスで晴海通りが渋滞していて」。 ……ガス？ とは思ったもののここでごり押しをしても仕方ない、遅刻するよりはマシよ、と取り急ぎバス停へ向かい、晴海埠頭行きのバスに乗ろうとした。

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その時、なにを読んでいたかはもう覚えていないが文庫本に目を落としながらバス停でバスを待っていると、目前に重い音を立てて大型車が停まる気配があった。 ああ、バスが来たか、と顔を上げた目の前にはトラックの荷台部分に水タンクと薬剤の散布装置を架設したOD色の車輌……除染車だった。

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｢ガスって、そっちなのか……？！｣ ようやくガスが都市ガスではなく、なんらかの毒性のあるガスであろうと言うことに思い至り、愕然となった。 そのまま目の前の道路を見遣ると、車線を埋め尽くす陸自の車輌。 それはまさしく「自分の日常の中に非日常が登場した瞬間」だった。

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目の前を通過していく陸自の車輌の中には｢災害派遣｣の横断幕を取り付けたものが見られる。 「……そりゃ、そうなるだろうよ。つまりは、そういうことなんだろ……？」 愕然に続く呆然。 しばらくして晴海埠頭行きの都バスがやって来た。

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乗り口から車内の運転手さんに「晴海埠頭まで着けますか？」と尋ねると「行けますよ」との答え。 その言葉に「ありがとうございます」と答え、バスの車内へ。 空いているバスの車内で運転席の後ろの一段高くなった座席に座る。

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その眼前には延々と連なる陸自車輌。そして、ときおりその車列の横を駆け抜けていく緊急車両。消防、警察、都交通局等々。 思わず思い浮かんだのは「パト2かよ」、そして「カメラ持ってりゃ良かった」。不謹慎と言われるかもしれないが、これは偽りもなく忘れようもないことだ。

浮草流雲 @r_fusoh

座席に着いたまま、窓越しに連なる陸自の車列を、ときおり自分の乗ったバスとその車列を追い越していく緊急車両を眺める。 普段であればキャッキャするようなダメオタの私でも発生した事象の重大さを悟って神妙な顔付き……と言うか表情が消え去ってしまっていた。

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やがてバスは築地四丁目の交差点へと差し掛かり、私も向かって左の築地駅方向を見る。 覚えているのは前年の10月、その年の2月に見た東京消防庁のスーパーアンビュランスが展開している姿と、なぜかなにも音が聞こえなかったように感じていたことだ。

浮草流雲 @r_fusoh

私が乗っていた都バスは、その場で特に滞ることもなく築地四丁目の交差点を通過すると、そこから先は空いていた晴海通りを走り、東京国際見本市会場（晴海会場）へと到着した。 会場で落ち合った武田氏が「おう、大丈夫やったか｣と声をかけてくれたことが思い出される。

浮草流雲 @r_fusoh

そのまま、特に翌日が中止になると言う話も出ず、前日設営が進められた。 そんな中、東館の主催者事務室で留守番をしていると備えつけの電話が鳴った。 電話を取ると、会場の方で「問い合わせの電話が入っているので回す」とのことだった。

浮草流雲 @r_fusoh

｢問い合わせの電話が入りますよ」と業務無線で流し、その電話を受ける。 内容は「翌日は中止されずに開催されるのか？」と言うものだった。 これについては先に話が出ていたので私でも答えられる。 「はい、今のところ、中止と言う話は出ておりません。お気をつけてお越し下さい｣

浮草流雲 @r_fusoh

電話の相手は私に礼を述べると電話を切った。 「気をつけて、って言ってもなあ……」 自分で答えておきながらではあったが、どう気をつけるんだよとセルフつっこみを入れずにはいられなかった。 これが私にとっての「蒼ざめた春」の幕開けだったのだ。

浮草流雲 @r_fusoh

（余談として「私に転機をもたらすスーパーアンビュランス」と言う話もあるのですが、それはまた機会を見て）