ベリアル・アンダーカバー #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何を!」オホートニクは掴みを振りほどく。ホローポイントは唾を吐いた。そして言った。「サップーケイ」(ザッケンナコラー……)(スッゾオラー……)クローンヤクザの援護射撃の叫びがあっという間に遠ざかり、オホートニクは慄いた。「エッ……?」そこはもはや廃ガレージではない。 20

2018-07-20 23:46:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オホートニクは色彩のない不気味な廃ビル群の只中に己とホローポイントを見出した。遥か頭上ではサメの群れが泳いでいる。「ジツ!?フザケルナ!」彼はハープーンを召喚しようとした。できない!「何故!?」「イラついてしょうがねえ」ホローポイントはネクタイを引っ張って緩め、斜に睨んだ。 21

2018-07-20 23:49:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「怒りに任せて行動しても、何も生み出さないのよ」女のクスクス笑いが聴こえる。「こんな奴にキリングフィールドを使っちゃって……もうウンザリなんじゃなかったの?」「うるせェぞ!」ホローポイントは叫んだ。オホートニクは困惑し、素手のカラテを構える。「何……」BLAM!「グワーッ!」 22

2018-07-20 23:53:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!「グワーッ!?」BLAM!「グワーッ!」BLAMBLAMBLAMBLAM!「アバババーッ!」カラテで対応しきれぬ速度で撃ち込まれるニンジャの銃撃を受け、オホートニクは血ダルマでキリキリ舞いした。「尋問できたかもしれないのに」ディアボリカが呆れた。ホローポイントは引き金を引き続けた! 23

2018-07-20 23:57:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!「サヨナラ!」オホートニクは爆発四散し、モノトーンの世界は粉々に吹き飛んで、廃ガレージが戻って来た。「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」攻撃対象を失い、周囲で棒立ち待機していたクローンヤクザ達がチャカを構えるが、ホローポイントは虚空を撃ち続けた。 24

2018-07-21 00:02:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAMBLAMBLAM……銃弾の嵐が向けられるのはホローポイントの方だった。だが、狂気的な行動はほんの一瞬。彼は低く身を沈めたのち、撥ね、手近のクローンヤクザの顔面を飛び肘打ちで破壊したのを皮切りに、反射跳躍を繰り返して、あっという間に十数人を血祭りにあげた!「「アバババーッ!」」 25

2018-07-21 00:04:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クソが……クソが」ホローポイントはクローンヤクザの死体を蹴飛ばした。「クソがッ!」無意味なジツの行使を伴うオーバーキルを以てしても、彼の気持ちはさほど晴れはせず、キリングフィールド・ジツ失敗に始まる苦渋の体験が洗い流される事もなかった。ケチのつき始めは、要はこのシトカだ。 26

2018-07-21 00:09:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「戻って来られただけよかったじゃない」コンテナの上に腰掛けたディアボリカが脚を組み替えた。「私はずっと居てもよかった」BLAM!ホローポイントが眉間を撃ち抜くと、女は消えた。とにかく、ソウカイヤの連中との合流が最優先だ。彼は念じた。この状況は耐えがたい。 27

2018-07-21 00:13:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ガレージの奥に向かった彼は、その場で立ち尽くす。海賊ポータルは破壊されていた。のたうつ死んだ大蛇じみたケーブル群。鉄屑。考えてみれば当然か。この拠点はファックされた。そういう事だろう。彼はIRC通信を試みた。ノイズが返るばかりだ。「冷静になりなさいよ」ディアボリカが言う。28

2018-07-21 00:15:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フーッ」彼はジャケットを脱いで投げた。そして、目ざとく見つけだしたZBR粉末を、ボトルの飲料水で溶いた。シャツの腕を捲ると、ベルトで左腕を締め上げ、血管を浮き立たせる。手馴れてスムーズな一連の作業である。ディアボリカはそのさまを恍惚とした様子で眺め、やがて手で目を覆った。 29

2018-07-21 00:20:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……十分ほど後、廃ガレージから外へ出たホローポイントは既に折り目正しくヤクザスーツを着直し、その眼差しは仄暗い集中力に輝いていた。 30

2018-07-21 00:25:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は目についた危険ドラム缶を蹴り転がし、入って来た時より強い歩調で、スクラップ場の敷地から出てゆく。ZBR血管注射によって偏ったブーストがかかったニンジャ聴力が、遠い銃撃音、悲鳴、カラテ・シャウトを捉える。道の真ん中に痰を吐き捨てると、彼はそちらの方角に足を向けた。 31

2018-07-21 00:28:11