【第七回】一チョロうどん【4*3一本】

葛砂星音/藍葉 @Pinus_ind7126

「アイスクリームはいかがですか？」綺麗なおねえさんにそう言われて、兄さんの顔はそれこそアイスみたいに溶けてみえる。そうですよね、おれなんかよりやっぱり可愛い人が良いですよね。「ねえ、お前疲れてるんだろ？一休みしていこう？」……ああ、なんで。気づいてたの、兄さん。#一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

ああ、なんで。気づいてたの兄さん。夜の帳が落ちた銭湯の帰り道、「好きなんだろ？」なんて言われて季節にそぐわぬ冷や汗がつたう。「いつから」「そりゃ、気づくよ」だってそりゃ……続く言葉は聞こえない。代わりに、真っ赤になった耳が言葉以上に全てを伝えてきていた。 #一チョロうどん

ゆか @ICHI_CHORO_43

髪を茶色く染めた兄に苛立ちを覚えた。何故似合わないそんな髪にしたのだという気持ちよりも、ずっと好きだった綺麗な髪を傷物にされたことに苛立っていた。そういう奴だというのは分かっていても嫌だった。自分の好きなものを傷つけられたことが嫌だった。傷付けて良いのは俺だけだ #一チョロうどん

ネココ🍀寝落ちからの復活 @necocopy

そう、そのさらさらの髪がずっと好きだった。下がりがちな眉も、くるくる変わる心を映す小さめの瞳も。部屋の隅から見つめていたよ。説教や憎まれ口しか出てこないそのへの字の口も、たまに慈愛を含んだ笑みに変わる、その瞬間を待つように。 #一チョロうどん

とりにくちゃん @otoriniku

暑いといったらすぐに氷を生成する魔法使いの兄。小さい頃から何かいえば、直ぐに対応してくれる兄。喉が渇けば飲み物を、疲れたならば浮遊魔法を、子どもの夢という夢をかなえてくれた。何でもかなえてくれる自慢の兄。 「好きだよ」 その願い事だけは、未だ叶えてはくれない。 #一チョロうどん

葛砂星音/藍葉 @Pinus_ind7126

夏祭りといえば、かき氷、なんて誰が決めたんだろう。ともかく兄さんは、一目散にその屋台へと行ってしまった。手に持ってきたのは紫のかき氷。「やっぱりかき氷ってぶどう味じゃない？」ねえ、そんなの誰が決めたの。そもそもかき氷の味って色が違うだけで全部一緒なんですけど。　#一チョロうどん

あわわ @awwwww_14

夏祭り、兄弟達は屋台めがけて走り出す。今夜は暑い。何か食べるならかき氷かな。弟も同じ事を考えていたらしい。僕はメロン、あいつはぶどう。ひと口ちょうだいくらいは想定していたけど｢……混ぜてみない？｣味が変わるわけでもなし、意味なんてないのに何でこんなに恥ずかしいの #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

カップもコーンも嫌いじゃないけど、お前に塗ったらもっと美味いんじゃないかって思うんだよね。下卑た笑みを浮かべるのは一つ上の兄で、それ俺の台詞じゃないの？ああでも、体中のそこかしこに纏ったアイスを小さな舌で掬われたなら。真夏の太陽より熱い視線と妄想で溶けそうだった。#一チョロうどん

ゆか @ICHI_CHORO_43

最近感じる熱い視線。それは決して可愛い女の子からでも僕の好きなアイドルでも可愛い幼馴染からのでもなく一つ下の弟からのものだった。気のせいかと思っていたものもここまで来ると認めざるおえない。そして、その視線に映らないように僕は囁いた。 「好きだよ」 #一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

夏に突き刺さるのは、陽射しだけだと思っていた。まさか真夏の太陽より熱い視線が痛いと感じる日がくるなんて。「ぐ、偶然だね？！」顔を真っ赤にした兄が路地裏に立っている。一体いつからいたのか、見ていられなくて水を渡す。満更でもない、とか思ってるなんてそんな。まさか。 #一チョロうどん

日和見ひより☘ @hiyorimihiyori

縁側で昼寝なんて、今じゃ命がけだ。「起きなよ。熱中症になるよ」声をかけて揺すると、うっすらと目を開けた兄が、「ちゅーする？」と焦点の合わない瞳を向けてきた。「じゃあ、お言葉に甘えて」俺も兄も、暑さでどうかしてしまったに違いない。そう言い聞かせて兄の唇を奪った。 #一チョロうどん

twinkle@booth通販中 @ScorpiiCor

「なあ、お前顔赤いけど大丈夫!?」そう言う兄から視線を逸らす。それだと言うのに、鼻が触れんばかりの距離まで詰めてきた兄が憎らしい。「大丈夫、熱中症？」違う、違う、違う！そんな事が理由じゃない。珍しく開けられた第一ボタンから覗く鎖骨が目に毒だなんて言える訳ないだろ！#一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

珍しく開けられた第一ボタン。うなじに貼り付いた髪。首筋に垂れる汗。夏は嫌いだ。むらむらして、イライラして、そしてたまらなくドキドキする。なのにあの人は無邪気にわらって「どうしたんだよ？」なんて言ってのける。ああ、これだから夏は嫌いだ！ #一チョロうどん

S(えす)🐯-新規未来 @smr4173286

#一チョロうどん 兄は夏が嫌いらしい。曰く、無駄に暑いし蚊は鬱陶しいし日焼けはするし、とのことだ。同意はするが、おれは日焼けした兄が好きだ。真っ白な肌が赤く染まり、ちょっとした刺激に表情を歪ませる。そしてしばらくするとまた真っ白に戻る。それが、この世で一番色っぽいと思う。

とりにくちゃん @otoriniku

見ているだけで暑い、脱げ。理不尽は日常より唐突に襲い来る。 シャツを脱げ短パンを脱げパンツを脱げで真っ裸になる無防備な季節に。逆らわず真っ裸になったがそれ以降反応がない。どうしたのと顔を覗き込めば。 「いついうの、待ってんだけど」 と仕返しを待っていたようだった。 #一チョロうどん

佳澄（かすみ） @ksm_h11

「……近くない？」 胡乱げな視線を向けられるも、冷房が強いから、と言い訳する。なら何か羽織れば、と言う兄に、お前が脱げば、と反論した。 「脱ぐにしたって、お前が邪魔」 その態度は弟へ向けるそれで、恋人としては面白くない──ので、一松はその白いうなじへと噛みついた。 #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

この体位が嫌いだと知っていて持ち込んだ。白いうなじは自分と同じ形の筈で、それが無性に腹立たしく爪を立てる。「ねぇ、クーラー効かないくらい暑くしてよ」連日の猛暑では足りないと訴える男が夢中になるのは、俺だけ。腰を掴んで乱暴に穿てばほら、シーツの海に人魚が溺れていく。#一チョロうどん

暁猫🐈水分摂取強化期間🐾 @akanekosan24

冷たい、と言って兄が恨みがましい顔でこちらを見てくる。仕方ないでしょ、冷房なんだから。さっきまでは暑かったのに冷房の力は凄まじく、何も身につけていなかった体はすぐに冷えてしまった。それなのに気にせず素肌のまま触れてくるから。熱を奪ってやりたくなったじゃないか。 #一チョロうどん

ネココ🍀寝落ちからの復活 @necocopy

暑い。朝からうだるような暑さに、ことさらうるさい蝉の声。もちろん僕は外に出るような愚行はしない。冷房が恋人状態だ。「ただいま」この暑いのに路地裏に出かけていった弟その１が戻ってくる。猫を心配する気持ちは美しいよね。汗だらけの恋人には秘蔵アイスを振る舞うか。#一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

棒状の食べ物を口に含めばエロく見える、なんてのは素人で、僕くらいのシコリストになればどんな物でも下ネタに置き換えられる。つまり、丸いはんぺんを咀嚼する弟へ口づけたのも、上級者故だ。「あんたのスイッチ、唐突すぎ」呆れる男は、その眼が何よりの起爆剤だとまだ気づかない。#一チョロうどん

とりにくちゃん @otoriniku

「お金あげるからちょっとお願い聞いてよ」 おっさんみたいな言葉を吐いた兄、暫し悩んだが金には年中困っていて、まあこの兄ならばそれほど無茶な願いはしてこないだろうと二つ返事で了承した。 「先払いしたから拒否は聞かないから」 掌に握らされた百円、そして重ねられた唇。 #一チョロうどん

S(えす)🐯-新規未来 @smr4173286

#一チョロうどん 1000円払うから手握らせて。耳を疑った。僕達、お付き合いしてるんじゃなかったっけ。付き合うって、お金払って何かするものだっけ。少し頭に来て、差し出された1000円をぶんどる。そのまま1000円を突き付けて握った手を引っ張りキスをする。さぁ、この先はいくらだ。

映画を見たこなつ @konatsu_numa

兄はいつになくご機嫌だった。曰く、千円あったら結構いろんなことできるよね！はしゃいでいるらしい。隣はおれなのに。千円札持って、おれと歩いているだけなのに。そーだね、と返したものの、お前ってこんなことくらいで喜んじゃうわけ？と思うと何だか怖い。頭の中がぐるぐるした #一チョロうどん

映画を見たこなつ @konatsu_numa

ただいまと言えばうるさいくらいに返事が返ってくるのが当たり前の家に住んでいた。就職が決まったと兄弟が一人減り、二人減り、今では母さんが静かに言う「おかえり」だけがぼくを迎える。どこか分からない部分がじゅんと軋む。自慢げに家を出たお前は、今頃どうしているだろうか　 #一チョロうどん

とりにくちゃん @otoriniku

「壊してよ、全部、あんたの中の常識も、あんたの中の俺っていう固定概念を」 何度いっても伝わらない、同情、嘘、からかい。自己評価の低さに負けている俺の本心。俺一人じゃ、これから先、二人で進めないよ。 「二人で、壊れようか」 はかなく笑った兄は、もうこの家にはいない。 #一チョロうどん