【第七回】一チョロうどん【4*3一本】

S(えす)🐯-新規未来 @smr4173286

#一チョロうどん 「柔らかくもない膝の上の、何がいいんだよ？」困惑の表情で問われ、何がと言われても、と考えた。無駄な肉のない、線は細いが男性の膝を枕にするのが好きで、よく強請るのだが。何がと言われると、そうだなー。あぁ。「あんたの顔、独り占め出来てるみたいで、好き」「……そーかよ」

higuruma＠( ﾟдﾟ )＜ｸｹｰ @higu39

木陰って日差しが弱まるじゃん。読書に最適なんだよ。そう言ってわざわざサイクリングに持ってきたラノベ読んでる目の前の兄の胸元からサングラスをお借りして、木陰越しに太陽をちらりと覗いてみる。夏と日差しと兄の横顔と、そしてそこそこの気まずさは、今の俺には心地よかった。 #一チョロうどん

葛砂星音/藍葉 @Pinus_ind7126

学校の裏の大きな木。名前も知らない木。その木陰に入って、柔らかい光を見つめる。運動場の喧騒も遠く、目をつぶればさらさらと葉の擦れる音、そして。お前の高い体温、汗のにおいだけ。こうやって静かに昼寝をするのが好きだから、僕はいつもお前を誘う。他の誰でもない、お前だけ。#一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

特等席というのがある。屋根の上、縁側、二階のソファ。あの頃のおれにとって学校の裏の大きな木がそれだった。世界から少しだけ隔離されたような逃げ場所で、会話も特になかったけれどそれがよかった。特等席はふたつだけだったから。#一チョロうどん

佳澄（かすみ） @ksm_h11

くん、と服を引っ張られて後ろを振り向けば、そっぽを向いたすぐ上の兄の姿。 何か用かと問えば、別に、と一言。何を拗ねているのか伺えば、否定を返される。 兄弟なのに、この人の考えることはよくわからない。 「知り合って間もないからね。仕方ないね」 でも、今の関係は悪くない。 #一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

今の関係は悪くない。ぬるま湯に揺蕩っているようで、曖昧な距離をはかりながらゆっくり近づくのは嫌いじゃないんだ。だけどどうやら向こうはそうでもないみたいで。「オイってば！」パシリと手首を掴まれ、ぐいっと距離か縮まる。近い、近い近い。ぬるま湯が急に温度を上げた。 #一チョロうどん

とりにくちゃん @otoriniku

銭湯で次男が謎のジェスチャーをしていた。僕は意味がわからなくて、まあそれはいつもの事なのでスルーしていたんだけど、今日という日ほどそれを後悔したことはない。 「ばれちゃったね、これ」 なんてしめされた肌、何のことだと鏡越しに覗けばそこには小さな鬱血痕がついていた。 #一チョロうどん

あわわ @awwwww_14

いつにない猛暑。屋外よりも家の中の方が暑く感じる。扇風機の前に陣取ると、母さんから｢見てて暑苦しいからTシャツにでも着替えてきなさい｣と文句をいわれた。ごめんね母さん、それは無理。少しはだけた首元には鬱血痕。帰ってきたならあの馬鹿を殴ってやろう。 #一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

「ねーあのさぁ、それってワザとな感じィ？」長男がニタニタ厭らしい顔で指さしてくる。「ハァ？」「いンやぁ～流石酷暑！おアツいことでなにより」き、す、ま、あ、く！呆れ半分、揶揄い半分の顔を思い切り殴りつけて僕は大きな声で叫ぶ。「オイ一松ちょっと出てこい！！！！！」 #一チョロうどん

ゆか @ICHI_CHORO_43

「ちょろりーす！ちょろリンだリン！」 目の前にいるのは本当に一つ上の兄なのだろうか。兄の姿をしている知らない人間だったらどれだけよかっただろう。魔法使い見習いだと言い張る兄に、またキャパがオーバーしたのだと分かれば、また頼ってもらえなかった事実に小さく溜息を吐いた #一チョロうどん

とりにくちゃん @otoriniku

将来魔法使いになるといっていた兄が、もうすぐ三十路を手前に本当の魔法使いになるとあの時と全く同じ言葉を正反対のトーンでいったものだからつい笑ってしまった。 まあ、そうなったときは俺が魔法のステッキ挿入してあげるねといったら、顔を真っ赤にしてひっぱたかれた。 #一チョロうどん

ゆか @ICHI_CHORO_43

「一松にだけ魔法かけてあげる」 悪戯っ子のように笑った男の子は俺の初キスを奪っていった。 「へぇ、そんなことあったんだ」 求人雑誌を読んでいる目の前の兄は興味無さそうに言葉だけを紡いだ兄の唇を奪った。 「うん、チョロ松を好きになる魔法かけられた」 #一チョロうどん

ネココ🍀寝落ちからの復活 @necocopy

三十路を前にして真剣な顔で「話がある」といってきたあいつ。「お前はいいよな、このままじゃ僕は」魔法使いの資格バッチリだ。髪をかきむしったやつはさらに続けた「でも、お前のこと裏切るのいやだし……どうしよう、どうすればいいかな」そんなことで悩ませてほんとにごめん。 #一チョロうどん

KANA @RF_KANA

サクランボは正直あまり好きな方じゃない。味云々じゃなくチェリー＝童貞という事で散々弄られてきたからだ。でももうこいつは違うんだよな…と目の前の男を睨み付ける。「な、なに！？」肩を跳ね上げ目を泳がせるその口にサクランボを纏めて突っ込んで、上から柔らかな蓋をした。 #一チョロうどん

とりにくちゃん @otoriniku

差し出された舌に、そのまま指を絡めて虐めてやりたかった。 だが舌にのせられたのはサクランボの柄、くるくると口内で器用に結んでいくこの人は、幼いころからこれが得意だった。 試してみてよと差し出された柄。その指ごと食んでしまえば、少しは意識してくれるだろうか。 #一チョロうどん

ゆか @ICHI_CHORO_43

片手に夕飯の材料の入った袋を持ち、もう片方には残ったお金で買っていいと言われたアイスクリームを持って帰路についていた。そして隣には溶けそうなアイスを必死に食べる一つ上の兄。滴る汗にちらっと見えた赤い舌にエロいと思ったのは決して暑さにやられたわけではない #一チョロうどん

S(えす)🐯-新規未来 @smr4173286

#一チョロうどん 兄の声は、風鈴よりも夏らしい音だと思う。爽やかで涼しげな声を聞くのは嫌いじゃない。むしろ、昼寝をしたい時に聞きたくなる。あの声を聞きながら眠れたら、いい夢が見れそうだ。薄曇りしてきた視界にいる緑は、別の方を向いている。こっちを向いてれば、もっといい夢見れるのかな。

佳澄（かすみ） @ksm_h11

風鈴という夏の風物詩も、鳴らなければ涼やかさは感じない。むしろ風すらないのだと、余計に暑さが増したような感覚を覚える。だから、そう、涼を求めているだけで、これは不可抗力だと自分に言い聞かせる。このままここに居ても、熱中症になりかねないし。弟を涼みに誘う、それだけ。 #一チョロうどん

葛砂星音/藍葉 @Pinus_ind7126

ちりん。と。風鈴が鳴った。綺麗な音だけで騙されちゃう僕も僕だけど、なんとなく涼しい気分になるから不思議だ。「ねえ、兄さん」風鈴とは真逆の、でも心地良い低い声。風鈴は風を運ぶけど、お前は幸せを運んでくるよね、なんて言ったら。「兄さんが好きだから、揺れるだけ」って。#一チョロうどん

KANA @RF_KANA

チリチリと響く風鈴の音で目が醒めた。風鈴って夕方になったら取り外すものだろとこめかみをヒクつかせながら上半身を起こせば「あいた」と間抜けな声が。真上にいる、風鈴を手にしたひとつ下の弟は表情の読めないそのままでぽつりと呟く。「ね、今から散歩に行かない？ふたりで」 #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

風鈴の音で嬌声をかき消そう、なんて馬鹿な提案、受け入れたのはどうしても我慢出来なかったから。涼しい家屋から一歩も出ない兄弟は、僕らの禁欲を試すかのようだった。りんりん、煩いくらいの高音は涼より熱を運んできて、もっとイイトコ突いてくれないとささやかな響きに勝てない。#一チョロうどん

日和見ひより☘ @hiyorimihiyori

風鈴がチリンとなって、夏の夜風が通り抜ける。花火が上がる音に紛れて、お前が好き、と呟いた。触れた指が熱くて、その指先からたどるように視線をあげると、花火を見ているはずの弟が、真っ赤な顔で僕を見ていた。「本気にするよ？」花火に紛れて聞こえた声が、僕の心臓を焼いた。 #一チョロうどん

暁猫🐈水分摂取強化期間🐾 @akanekosan24

生き返るー、一つ上の兄がしゃくりとスイカの端っこを齧った。端から食べる訳を僕が問えば、美味しい所は最後に食べるもんでしょ！と兄は得意気に答える。なるほどね。ご馳走様、そう言った兄の口を僕は軽く食んだ。確かに、甘くて美味しい。ちりん、と風鈴が縁側に淡い影を落とした。 #一チョロうどん

ゆか @ICHI_CHORO_43

僕の目の前には明らかに不機嫌ですと拗ねている弟がベシベシと尻尾で床を叩いていた。何か忘れている気がしたが、にゃーちゃんのライブで本当に忘れていた。今日は二人で出掛けようと一松から誘ってきた日だ。あの時の僕に思い出せと言ってやりたい。...さて明日はちゃんと動けるかな #一チョロうどん

葛砂星音/藍葉 @Pinus_ind7126

「今は男でも日傘を差すんだよ！」なんて末弟がいうものだから。買ってしまった日傘。でもやっぱり差すのは恥ずかしくて、畳んだまま帰る。「ねえ、差さないの」突然背後から掛かった声に飛び上がる。「し、しょうがないなー」辛そうな一つ下の弟に、傘を差してやる、そう、それだけ。#一チョロうどん