「麥」と「來」の諧声関係

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Yusuke Matsushita @shiatsumat

麥(麦) は 來(来) に意符の 夊 がついた形声だと考えられていて、上古音では良く似た発音として再構されているみたいだけど、どうして中古音ではこんなに違う発音になってしまったんだろう? en.wiktionary.org/wiki/%E9%BA%A5… en.wiktionary.org/wiki/%E4%BE%86… pic.twitter.com/BVr5ofhc3B

2018-07-10 18:20:32
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【ゲムマ両サ-19】hsjoihs (はすじょい) @ 言語が好き @sosoBOTpi

@shiatsumat 入声字(麥)が平声字(來)と諧声関係を持つのはかなり珍しく(大半のケースでは入声字と関係を持つのは去声字)、色々な説が立っています

2018-07-10 18:30:38
Yusuke Matsushita @shiatsumat

@sosoBOTpi ほう!その視点はありませんでした。興味深いですね。

2018-07-10 18:36:17
【ゲムマ両サ-19】hsjoihs (はすじょい) @ 言語が好き @sosoBOTpi

@shiatsumat 「あまりにも常用される語だったので、例外的に末尾の*-kが痕跡を残さず消えた」などとされることが多いです。いずれにせよ、この*-kの消失に関しては例外的な変化であることは間違いないです

2018-07-10 18:38:24
【ゲムマ両サ-19】hsjoihs (はすじょい) @ 言語が好き @sosoBOTpi

@shiatsumat 「來」がもともと先頭に*mə-を持っていたことは、「麥」との諧声関係以外にももう一つ証拠があります。(「有」の直後に「能」など鼻音が来る場合、「員」「云」とも書かれる、という現象が「來」にも見られる)

2018-07-10 18:41:58
Yusuke Matsushita @shiatsumat

@sosoBOTpi そんな現象があるんですね、面白いですね

2018-07-10 18:45:16
【ゲムマ両サ-19】hsjoihs (はすじょい) @ 言語が好き @sosoBOTpi

@shiatsumat Baxterの再構音で書くなら、*[ɢ]ʷəʔ が鼻音の前では *[ɢ]ʷə[r] > *[ɢ]ʷən とも書かれた、ということになります

2018-07-10 18:48:33
【ゲムマ両サ-19】hsjoihs (はすじょい) @ 言語が好き @sosoBOTpi

@shiatsumat さて、ここまで来ればあとは大体規則的な変化です。 上古*rは、介音(頭子音と主母音の間)に来るときには主母音を前舌化させる作用があり、一方、音節頭に来たときは中古l-になり、主母音は前舌化しません。

2018-07-10 18:55:04
【ゲムマ両サ-19】hsjoihs (はすじょい) @ 言語が好き @sosoBOTpi

@shiatsumat Baxterの *Cˤə は、中古に至る過程で規則的に-jをなんか生やして /ʌi ~ əi/ らへんの音になります。一方、*Cˤrə- 系統は前舌化の対象になるので /-ɛ-/ 方面に行きます。

2018-07-10 19:02:01
【ゲムマ両サ-19】hsjoihs (はすじょい) @ 言語が好き @sosoBOTpi

@shiatsumat なお、介音*rは声母に/ˠ/とか/ᵚ/とかそり舌化とかみたいなことを発生させたりもします。ということで(鄭張再構音で書くなら)/mˠɛk̚/ と /lʌi/ などということになるわけです。 こんな感じの説明でよろしいでしょうか

2018-07-10 19:13:48
Yusuke Matsushita @shiatsumat

@sosoBOTpi 非常によくわかりました、ありがとうございます

2018-07-10 19:15:23

参考文献:
Old Chinese: A New Reconstruction ― William H. Baxter, Laurent Sagart
A Handbook of Old Chinese Phonology ― William H. Baxter

望之 @motijuki1017

来母と非来母の諧声、反り舌音の発生、二等韻と三等B類韻の起源、主母音の前舌化等々を紐付けして説明できる上古*r音説は、やはり凄い発見だと思う。

2018-08-01 01:32:18