フォ・フーム・ザ・ベル・トールズ ＃１

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

徐々に視覚と聴覚が戻ってきた。カーン、カーン、カーン……石を切り出す音がどこかから響いてくる。「「「ヨイ、ショ、ヨイ、ショ……」」」誰かの苦しげな声も聞こえてきた。数名ではない。大勢だ。ここはもしや、ジゴクだろうか。ジゴクでは、罪人たちがオニから永遠の責め苦を受けるという。　23

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だが……重金属酸性雨も、汚染大気も、湿った陰鬱なアスファルトも、過酷なセンタ試験もないのならば、ジゴクもさほど悪い場所ではないのかもしれない。「アハハ……どうせこれ夢だよ。私はまだ日帰りサイバネ手術中で、夢を見てるんだ……」　24

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テマリは暢気にそんなことを考えながら上半身を起こし、あたりを見渡した。「エッ？」そして酷薄なる現実を目の当たりにし、言葉を失った。そこは見知らぬキャニオンの只中に築かれた、広大な採石場であった。　25

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そして見渡す限り全方位に女子高生がいた！「「「ヨイ、ショ、ヨイ、ショ……！」」」山間のキャニオンに築かれた強制労働施設で、女子高生が何百人も、石の切り出しや運搬、労働バーの回転、穴掘り、あるいはまばらに生える樹木の伐採といった重労働を課せられていたのだ！セーラー服姿のままで！　26

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「アハハ、夢だよねこれ……？」テマリは力なく笑い、立ち上がった。そしてすぐそばで角材を運搬していた４人組の女子高生に歩み寄り、彼女らに話しかけた。「「「「ヨイ、ショ、ヨイ、ショ……」」」」「オハヨ！ねえ、ここは何処？」　27

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「ヨイ、ショ、ヨイ、ショ……ああ……あなたは新入りですね。カワイソウ……」一番後ろにいたオサゲ・ヘアの女子高生が、テマリに微笑みかけた。「新入り……ってどういうこと？」「ここは……女子高生収容所ですよ……ヨイ、ショ、ヨイ、ショ……」　28

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「女子高生、収容、所……」その言葉が、テマリのニューロンを雷撃の如く震撼せしめた。いつか聞いた不吉な都市伝説が、テマリの脳裏に蘇る。返済不能なローンを抱えてしまった女子高生は、ネオサイタマから遠く離れた収容所へと連れて行かれ、そこで終わりなき労働を強いられるのだという。　29

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テマリは思った。もしここが本当に、伝説の女子高生収容所だとしたら……ジゴクのほうが遥かに慈悲深い結末だと。　30

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【フォ・フーム・ザ・ベル・トールズ】#1 終わり　明日の #2 へ続く