ドラゴン・インストラクション #1
「アイエエ……アイエエエ!」悲鳴を上げる船長を捨て置き、ニンジャスレイヤーとサツバツナイトは別方向から海上を迫りくる新たな敵に注意を向けた。「撃破すべし」サツバツナイトはニンジャスレイヤーに言った。「恐らく……今のように容易な相手ではない」「……」ニンジャスレイヤーは睨み返す。20
2018-09-11 23:32:53「イヤーッ!」彼は言葉を返さず、船から船へ跳んだ。「誇り高いので魅力的な美女」号の甲板で、彼は仁王立ちになり、水面を接近してくる影を見た。成る程。今度のニンジャは二人。そして船を用いていない。一方は何らかのジツで足裏からジェット噴射を行い、一方は海面を走ってくる。 21
2018-09-11 23:36:10ニンジャスレイヤーはニンジャ視力で見通した。ジェット噴射のニンジャはサイバネティクスの力を借りていない。ジツの力だ。海面を走ってくる方もジツだ。水面を踏むたびにその表面を凍らせ、飛び石めいて走ってきているのだ。「「イヤーッ!」」彼らは好戦的な叫びと共に一気に接近してきた。 22
2018-09-11 23:39:27船上の二者は先手を打ってアイサツした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」「サツバツナイトです」その目と鼻の先、海上から過冬のニンジャはアイサツを返した。「ドーモ。シーサーペントです」「ビロウサージです」 23
2018-09-11 23:42:13「貴様がニンジャスレイヤーか。フン。ここで会ったが百年目。テッポダマ風情が漁師どもをたばかって、粋がってみたか」シーサーペントは言った。「キョウダイどもの仇をとらせてもらうぞ」彼は両掌を下向け、激しい空気の流れを作り出して宙に浮いている。そしてビロウサージ。「貴様は何だ?黒橙」24
2018-09-11 23:46:41「国際探偵だ。故あって参戦する」サツバツナイトは答えた。「探偵だと?探偵がヤクザに何の用だ?」ビロウサージは見下すように言った。「そこの狂人の口車に乗って、このイクサに巻き込まれた不幸を嘆くといい。我らは殺したくてたまらない。命乞いは聞かぬぞ」 25
2018-09-11 23:50:32「充分だ。今の戯言をハイクにしろ」ニンジャスレイヤーが言った。「おれ達には時間がない。それ以上喋るな」「ほざくがいい!」ビロウサージは目を見開いた。その周囲の空気かキラキラと輝き始めた。シーサーペントは両足から凄まじい勢いの水を放出して跳ね上がった!「イヤーッ!」 26
2018-09-11 23:55:53シーサーペントは足から水、手から空気を放出し、まさに神話の海蛇の胴体めいた軌跡を作りながら空中を旋回した。「アイエエエエ!」モータル船員が悲鳴をあげた。サツバツナイトは迎撃めいてスリケンを投擲!「イヤーッ!」シーサーペントは苦もなくチョップで弾き逸らす! 27
2018-09-11 23:59:18ニンジャスレイヤーはビロウサージを相手どる!「イヤーッ!」牽制のスリケンにビロウサージが片手をかざすと、空気中の輝きが増し、スリケンを弾いた。彼の肩の上で、同様の輝きが不穏なまでにその光量を増してゆく!(((マスラダ!これはコリニンジャ・クランのジツのひとつだ)))ナラクが告げる! 28
2018-09-12 00:02:26(((ササメコリ・ジツは奴らの秘儀の一つ。この輝きは奴が張り巡らせた冷気の結界だ。霜が光を返し、かよう胡乱な眺めを生ずる。この霜は……)))「イヤーッ!」ビロウサージが力を込めると、輝きは無数の針めいた微細なクナイとなってニンジャスレイヤーに襲い掛かる!(((然り、攻防一体也!))) 29
2018-09-12 00:07:15「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが側転で回避すると、氷の針は甲板上に結晶細工じみた痕跡を生じ、船員は船室にうずくまって、ただ悲鳴をあげる!「アイエエエ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはジグザグに甲板を踏み、海上のビロウサージめがけ跳んだ! 30
2018-09-12 00:10:40「イヤーッ!」抉るような拳の一撃を、ビロウサージは海上バックフリップで回避!ニンジャスレイヤーの攻撃の十数倍のコリ・クナイを浴びせ返す!「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーはビロウサージが踏み残した海上の氷片を蹴って再跳躍、危うくその危険な反撃を回避! 31
2018-09-12 00:13:42「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは跳び回し蹴りを叩きつける!だが、見よ!空気中の輝きがニンジャスレイヤーの蹴りの勢いを殺す!微細なササメコリがリアクティブアーマーめいてカラテを防いでいるのだ!(((油断するなマスラダ!)))(黙れナラク!)「イヤーッ!」ササメコリ!クロス腕で防ぐ! 32
2018-09-12 00:15:34SPLAAAASH!ササメコリは防ぐも、ニンジャスレイヤーは冷たい海に着水!頭上からはサツバツナイトのマークを振り切ったシーサーペントが襲いかかる!「イヤーッ!」アブナイ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは燃えるフックロープを放ち、付近の船の「大漁」の旗に絡め、巻き上げて移動!回避! 33
2018-09-12 00:18:20しかしビロウサージは執拗にササメコリでニンジャスレイヤーを追撃にかかる!ドクン……ニンジャスレイヤーの心臓が強く打ち、ニューロンが加速した。サツバツナイトはシーサーペントの自在なカラテを別の船上で弾き返す。彼はニンジャスレイヤーを一瞥、叫んだ。「ニンジャスレイヤー=サン!」 34
2018-09-12 00:20:50ドクン。ニンジャスレイヤーの心臓が再び強く打った。サツバツナイトはイクサのさなか、それ以上の言葉を続けなかった。だが、言わんとする事はわかった。("インストラクション・ワンだ!")ニンジャスレイヤーは舌打ちした。その目が赤黒く燃えた。「……イヤーッ!」 35
2018-09-12 00:22:53浴びせかけられるササメコリに、ニンジャスレイヤーはスリケンを投げ返した。スリケンがササメコリを打ち払い、小間切れに砕けて散る間に、彼は次のスリケンを投げていた。そのスリケンが砕け散る間に、彼はさらに次のスリケンを投げていた……!「イヤーッ!イィーヤヤヤヤヤヤヤーッ!」36
2018-09-12 00:24:36今やニンジャスレイヤーの両手は並のニンジャであっても残像すら捉えられぬほどの速度で動き、熱と風とカラテによって虚空からスリケンを新たに生み出しては投げつけ、ササメコリの面圧力に真正面から挑んでいた。彼とビロウサージの中間地点の空気が光り、焼け、爆ぜた。せめぎ合いが始まった! 37
2018-09-12 00:27:19ビロウサージはジツを行使しながら、相手が己の攻撃に対応し始めている事に眉根を寄せる。ニンジャスレイヤーは無限めいたスリケン投擲を継続する。精神はゼンめいた静寂の境地に踏み入り、時はその意味を薄れさせ、しばし前の記憶がニューロンに反復し始めた。 38
2018-09-12 00:30:22シンウインターとの戦闘で負傷したニンジャスレイヤーとサツバツナイトは、突入の前にその傷を急速回復する必要に迫られた。彼らは逸る気持ちを殺し、敢えて、アグラ・メディテーションを行った。二者はフジミ・ストリートを離れ、市街内の廃塔に身を潜め、向かい合い、アグラしたのである。 39
2018-09-12 00:33:36「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはビロウサージの攻撃をスリケンで押し返し、あまつさえその身体の周囲の守りを貫通して殺すべく、投げに投げ、投げ続けた。ニューロンにノイズが生じ、向かい合ってアグラするサツバツナイトの姿が霞んだ。 40
2018-09-12 00:35:40「百発のスリケンで倒せぬ相手だからといって、一発の力に頼ってはならぬ」サツバツナイトの厳かな言葉が、その厳しい眼差しが、マスラダの脳裏を駆けた。「一千発のスリケンを投げるのだ!」 41
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