西畑くんとの最後の記録

純 麗 でした @jitanjanaiyo

「、、、指輪、？」『左手出して？』言われた通り、大吾くんの方に差し出せば、綺麗に収まったリングがピッタリと私の薬指にはまる。「、、大吾くん？」彼の目を見れば椅子から降りて床に片膝をついて私を見上げている。『手術が終わったら、俺と結婚してください。』 #関ジュで妄想

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みるみるうちに視界がぼやける。「、、っ私でいいの？」やっとのことで振り絞った言葉。こんな未来の分からない私なんかで？そしたら私の目をまっすぐと見て自信たっぷりに『〇〇じゃなきゃダメやねん。』っていう大吾くん。 #関ジュで妄想

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私の視界をぼやけさせていた透明な血液は次から次へ私の頬を伝う。溢れ出たばかりの形の残った滴を腫れものを扱うように優しく親指で拭い、嗚咽をあげ始めた私を、立ち上がって覆いかぶさるように大吾くんは力強く抱きしめてくれる。「大吾くん、、」私の背中を摩ってくれている彼に

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「私、明日頑張るね」今できる最大級の返事をする。『絶対、絶対、、、。祈っとる、、待っとるから』"大丈夫"なんて、なんの根拠もないあしらいのような言葉を口にしないのが彼らしい。 私の耳元で鼻を啜る大吾くん。お互いの存在を確認するかのように強く強く抱きしめあった。 #関ジュで妄想

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いよいよ手術当日。今日は朝から大吾くんが来てくれてずっとそばにいてくれてる。私の個室から手術室に向かう時も立ち会いできる最後の最後まで私の右手を握ってくれた。泣く泣く指輪を外して彼に託す。「行ってくるね。」『待っとるから。』 #関ジュで妄想

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手術台に移されて目の前に広がるのは医療ドラマでよく見る光景。麻酔科の先生がやってきて深呼吸を促されて一気に睡魔に襲われた。

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鏡に映るのは綺麗にメイクをして、純白のドレスを着た私。柔らかい日差しの差し込んだキラキラとした部屋。コンコンと誰かがドアをノックする音。返事をすればガチャっとドアが開いて入ってきたのは私の大好きな人。シルバーのタキシードに身を包んでいつにも増してかっこいい。優しく微笑む彼に「どう

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かな？」と聞けば『、、、綺麗やで』なんて。恥ずかしい。『じゃあ、行こうか。』彼に手を引かれて部屋を出る。「緊張してる？」『そうでもないで？』「流石、舞台慣れしてる」『ちゃうよ(笑)』『緊張より幸せの方がでかい』「ふふふっ(笑)でた。ロマンチスト(笑)」『ええやん、今日くらい』『〇〇、俺

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と出会ってくれてありがとう』『、、俺と、結婚してくれてありがとう』「こちらこそ。これからずっと、よろしくお願いします。」じっと見つめ合う私たち。彼の顔が近づいてきて目を閉じると頬に柔らかな感覚。『本チャンはまた後でな』 #関ジュで妄想

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右手を誰かに握られている感覚がする。ゆっくりとまぶたを開ければ見慣れた白い天井。『〇〇、、？』タキシードを着ていたはずの大吾くんは黒いニット姿。「大吾くん。」『起きた？』「うん、、、。あ、手術、、」『終わったで』「そっか、、、」あれは夢だったのか、、、。 #関ジュで妄想

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聞けば手術は9時間にも及んだらしい。術後、普通だったら外科病棟からリハビリ病棟に移るはずなのに、なぜか私はまだ外科病棟のままだった。 手術から5日経って、やっと体調が回復してきたタイミングで術後の問診のために主治医の先生に両親と私とで呼び出された。

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そこでは長い長い話を聞かされた。正直よく覚えてないけどガンが取りきれなくて、次の手術で全摘をするということと、リンパに転移がある、ということだった。 全摘ってことは当然将来子供は産めないし、リンパに転移ってことは多分、いまこの瞬間も私は"余命"に縛られてるんだよね、？ #関ジュで妄想

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それから1ヶ月。大きな手術だったということもあり、身体に相当な負担がかかったことに加え、新たにできたガンのせいで体力が一気に落ちてきた。まだ若いから細胞の生まれ変わりが早い所為で転移したガンも取りきれなかった子宮のガンも進行が早いらしい。"若い"ことって普通だったら何事にもプラスな

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はずなのに、私はその若さに苦しめられてるなんて、、ね(笑)同じ世代の子たちはみんなハイヒールをコツコツと鳴らして若さ故の"キラキラ"をいろんな所に振りまいているっていうのに私は立つことさえままならない。 もう少し体力が回復しないと子宮の全摘手術はできないって言われたしリンパの化学療法

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すらきっと身体が負けてしまうからってできてない。今はひたすら左腕に刺されている細い針から痛み止めを取り込んでいるだけ。 鏡を見ればこけた頬と白い唇。本当に生きてるの？私、と疑ってしまうほど。でも毎日右手から大吾くんの体温を感じられるから生きてるんだろうな。 #関ジュで妄想

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生きてるんじゃなくて大吾くんに生かされてる。そう、大吾くんがいるから今もこうして私の心臓は動いているし補助されてはいるけど自分で酸素を取り込める。全部、大吾くんのおかげ。 #関ジュで妄想

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命の短い冬の太陽が今日もまたその終わりを告げようとしている。燃え尽きかけているオレンジ色が私と大吾くん、2人きりの静かな病室に差し込んで、私の左手の薬指、大吾くんと私の約束がキラキラと輝きを増した。 今日も右手からは彼の温かさが伝わってくる。 pic.twitter.com/sQRz7H3DoY

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『〇〇？』「ん？」『帰ろ？』「うん、、帰ろ」『帰って、家族になろ？』「うん。なろ、、、」大吾くんに握られている右手。そこからはみ出した親指に大吾くんがキスをする。こんなに幸せでいいのかな？私、、。「大吾くん、、」『なにぃ？』「大好き。今までもこれからも」「本当にありがとね。」

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目を閉じれば張力に負けた私の大吾くんの思いが重力に負けて私の目尻から一粒溢れた。『、、、〇、〇？』『〇〇！』大吾くん、そんなに泣かないで？大好きな貴方の声を以ってでも私の鼓膜がもう震えることはないけれど心は繋がってるんだよ？だから、これからはずっと、笑っていてね😊 #関ジュで妄想