西畑くんとの最後の記録

純 麗 でした @jitanjanaiyo

『うんま〜☺️』「本当に？よかった😌」ダイニングテーブルを挟んで私の向かい側で幸せそうな顔をして私の作ったクリームパスタを頬張るのは私の彼氏、大吾くん。お互いの友達が友達同士で、いつだかの飲み会で一緒になったっていうよくある出逢い方。その飲み会で話が合って連絡先を交換した。

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それが3年？くらい前。そこからちょくちょく連絡するようになった。住んでるところが近かったこともあって仕事終わりに飲みに行ったりお休みの日に出かけたりもした。彼といる時の居心地の良くて。彼の真面目なところ、面倒見の良いところにどんどん惹かれていった。 #関ジュで妄想

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人並みにそういう経験もしてきたけど私が付き合ってきた男の人は見事に全員ダメ男だらけで、"恋"に奥手になっていた。そのわだかまりをひとつひとつ解いてくれるように接してくれた大吾くん。そんな関係が続いて半年程経った頃。丁度2年前の春、大吾くんの方から告白してくれた。 #関ジュで妄想

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その時の澄んだ大吾くんの眼から真剣さが伝わったし、失敗だらけの恋愛をしてきた私にとって好きな人が自分のことを好いてくれてることが奇跡のように思えた。 時には小さなケンカもするけど、特に大きな波もなく今に至る。私の周りの友達に言わせると私と大吾くんは相当な甘いカップルらしい。

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自覚はないけどね😶 同棲を始めて丁度半年。一緒に住んで大吾くんの嫌なところが見えてしまうかと思いきやそれは全くの杞憂だった。毎日一緒にいられるお陰で日に日に彼のことが好きになる。本当、幸せ以外のなにものでもないよ。大吾くん。 #関ジュで妄想

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この幸せがいつまでも続けばいいな、なんて思ってしまうのは仕方ないよね？私だって女の子だもん #関ジュで妄想

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「、、、っ」『〇〇？どうした？また痛いん？』「ううん、大丈夫だよ」ここ最近、下腹が急に痛くなることがある。『ほんま、我慢せんで病院行った方がいいんちゃう？』「ありがとう。でも本当に大丈夫だから」心配そうに私の顔を覗きこむ大吾くん。優しいなぁ。 #関ジュで妄想

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最初のうちは生理前のいつもの痛みかも、って全く気にしてなかったんだけど日に日に痛みは増すし頻度も多くなる。 今日は痛みのせいで動けなくて仕事を休んでしまった。幸い大吾くんはお仕事でこれから1週間程帰って来ない。弱ってる時ほど彼に会いたくなってしまうけど心配かけたくないから良かった。

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意を決して病院に行くことにした。症状をお医者さんに話したら検査を受けることになった。なんとなく怖いから何を調べる検査なのかは意図的に聞かないようにした。 1週間分の鎮痛剤をもらって、検査結果を聞くために来週の予約を取って病院をあとにする。 #関ジュで妄想

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それからあっという間に1週間が経った。鎮痛剤のおかげで痛みは和らいでるしなにより大吾くんが帰ってきて安心感がすごい。ちなみに検査を受けてきたことはまだ言ってない。 検査結果を聞きに行く朝、いつも早くに仕事に出かける私がゆっくりしてるから『〇〇今日仕事は？』って聞かれたけど「午前休

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とった」って嘘ついた。そしたらふにゃふにゃの笑顔で『じゃあもうちょい一緒に寝ようや』って抱きついてきた大吾くん。かわいいなぁ。「でもちょっと用事あるんだ」ってその腕を振り解く。本当は私だって大吾くんと一緒に寝てたい。検査結果になんかあったらどうしようって正直不安。 #関ジュで妄想

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だけど"よくあるホルモンバランスの乱れですね"ってな感じで早く帰ってきて大吾くんのお仕事のお見送りをするんだから。 『そうなん？じゃあ俺もうちょい寝るな〜』「うん、多分仕一回帰ってくる」『わかった〜』"用事"って言って深く聴いて来ないところも大吾くんの好きなところ。 #関ジュで妄想

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私たちの信頼関係がよく表れてると思わない？ベッドで丸まっている彼に優しくキスをして病院に向かう。 先週より少し混み合っている待合室。番号を呼ばれて診察室に入ると深刻そうな表情をしている先生。 "検査の結果ですが単刀直入に申し上げますと、子宮頸がんです。" #関ジュで妄想

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シキュウケイガン、、、？ "大きな病院の紹介状を差し上げますのでそちらでの治療となります" 理解ができなかった。先生の話も全く耳に入ってこない。紹介状を渡されて看護師さんに促されるままに診察室を出た。 、、、気づいたら家の前。どうやって帰ってきたのかは何も覚えていないけど。

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ドアに手をかけると鍵が閉まってる。大吾くんはお仕事に行っちゃったのか、、。鍵を開けて部屋に入るとやっぱり大吾くんはいなかった。その代りベランダに、私がやり忘れてたはずの洗濯物が太陽の光を浴びて風に揺れている。"気持ちの整理"なんてできるわけもないけどとりあえず仕事に行かなくちゃ

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午後の仕事はずっと上の空でミスばかりだった。 仕事もやめないとな、、、。 帰りの電車でやっと実感が湧いてきて私の中にあるらしい得体の知れない"ガン"に押し潰されそうだった。

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今日2度目の帰宅。ドアの鍵は開いている。ということは大吾くんが帰ってきてるんだよね、、。よし、いつも通りいつも通り。自分に言い聞かせて部屋に入る。「ただいま☺️」『〇〇〜、おかえり』「大吾くん今日お仕事早かったんだね。」『そうだったんよ〜、急に早なって慌てたわ(笑)』

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それから2人でご飯を食べてお風呂に入る。そこにあるのは紛れもない"私たちの日常"だった。お風呂上がりの晩酌も明日大事なプレゼンがあるからってさもありそうなことを言って免れた。時刻は1時になろうとしている。ベッドに横に入って、目の前にいるのは大吾くん。 #関ジュで妄想

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『、、、〇〇さ、今日なんかあったん？』「え？！」不意を突かれて思わず過剰に反応してしまう。「なんで、、？」『うーん、俺の気のせいかもしれへんけどなんか変やった。今日の〇〇。』「えーそう？何にもないよ」『ほんまに？ならええんやけど』 #関ジュで妄想

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本当に大吾くんは全部お見通しなんだな、、、。今まで隠し事なんてしたことなかった。だけどね、今回に限ってはいくら大吾くんだからといって、ううん。大吾くん"だから"、そう簡単には言えないよ。 #関ジュで妄想

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それから2週間が経った。いよいよ明日から治療が始まる。この14日間、何度も何度も大吾くんに打ち明けようとした。、、、だけどできなかった。 正直大吾くんがどんな反応をするか怖かったから。それと、私の中でちゃんとけじめをつけるのに時間がかかってしまったから。 「大吾くん」 #関ジュで妄想

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ダイニングテーブルの椅子に腰掛けてひとつ深呼吸をしてソファに寝っ転がって動画を見ている彼の名前を呼ぶ。「話があるの。」何かを察したのか大吾くんがキョトンとしてこちらを見ている。『どうしたん？急に』「いいから。ここ座って？」私の向かいの椅子を差しながら言った。 大丈夫。伝えられる。

純 麗 でした @jitanjanaiyo

『おん。』ゆっくりと起き上がり、ソファにスマホを放ってこちらに歩いてきて私の言われたように椅子にストンと腰掛ける大吾くん。なんてことない"いつもの大吾くん"に涙が溢れそうになる。けどそれをグッと堪えた。 よし。彼の顔をまっすぐと見る。「大吾く、あのね『あ、別れ話なら聞かへんからな』

純 麗 でした @jitanjanaiyo

私の話を遮った大吾くんの声に心が一瞬、グラっと揺れる音が聞こえた。 なにしてんの、私。決めたことなんだから。大吾くんと私のために。 「ちゃんと聞いて欲しいの。」『うん、なに？』「私ね、、ガンなの、、、。」 #関ジュで妄想

純 麗 でした @jitanjanaiyo

『は？』「子宮頸がん。」『うそやろ、、、？』「本当。」『、、、。』明らかに血の気が引いて徐々に青くなっていく大吾くんの顔。「明日から入院して治療なんだ。」『明日？！急すぎやろ』「言うのが遅くなっちゃってごめん」『なんでもっと早く言ってく「だからね、大吾くん。もうお別れしよ。」