『声の届くところ』

「胎児の夢」 唐突に投下したSS
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しすお @shisuo4202

いつもならば、自分よりは早く起きる。または同じタイミングで起きてくる長女の姿が見当たらない。まぁ、たまには寝坊もするだろうとそれ自体はあまり気にしていないが、ずん姉さまの朝ごはんが冷めてしまっては勿体ないし、起こしてきてあげよう。 「あの、ずん姉さま。たこn――」

2018-10-26 03:01:35
しすお @shisuo4202

「――っ!?」 『タコ姉さま』 その言葉を口にしようとした瞬間、強烈な目眩と頭痛に襲われた。 この嫌な感じには覚えがある。 「何、きりたん?」 「あ、いや、たこn・・・・・・うっ・・・・・・」 再度襲う目眩と頭痛。 この感覚はそう…… (夢で感じるものと同じ……)

2018-10-26 03:04:10
しすお @shisuo4202

「――っ!?」 『タコ姉さま』 その言葉を口にしようとした瞬間、強烈な目眩と頭痛に襲われた。 この嫌な感じには覚えがある。 「何、きりたん?」 「あ、いや、たこn・・・・・・うっ・・・・・・」 再度襲う目眩と頭痛。 この感覚はそう…… (夢で感じるものと同じ……)

2018-10-26 03:04:10
しすお @shisuo4202

「んー? どうしたの? まだ眠い?」 「……いえ、何でもないです」 (とりあえず、タコ姉さまについて言及するのはやめましょう。何が起こるかわからない) 姿を表さない長女のことも気になるが、今はそれどころでは無い。あれは下手したら気絶しかねない、意識が強制終了させられるような感覚だった

2018-10-26 03:05:20
しすお @shisuo4202

「んー? どうしたの? まだ眠い?」 「……いえ、何でもないです」 (とりあえず、タコ姉さまについて言及するのはやめましょう。何が起こるかわからない) 姿を表さない長女のことも気になるが、今はそれどころでは無い。あれは下手したら気絶しかねない、意識が強制終了させられるような感覚だった

2018-10-26 03:05:20
しすお @shisuo4202

「ふーん、変なきりたん。はい、朝ごはんですよー」 「・・・・・・いただきます」 食卓に並んだのは3人分朝食。やはり、タコ姉さまはまだ寝てるんだと自分に言い聞かせ、味噌汁を1口すする。 しかし、またしても異変。

2018-10-26 03:05:41
しすお @shisuo4202

「ふーん、変なきりたん。はい、朝ごはんですよー」 「・・・・・・いただきます」 食卓に並んだのは3人分朝食。やはり、タコ姉さまはまだ寝てるんだと自分に言い聞かせ、味噌汁を1口すする。 しかし、またしても異変。

2018-10-26 03:05:41
しすお @shisuo4202

「ん? ずん姉さま、なんかこのお味噌汁薄くないですか?」 「え、そうかな? ちょうどいいと思うけど」 「……流石にお湯に若干の味噌味がする程度の濃さを丁度いいというのは無理がある気が……」 「ちょっときりたんの味噌汁飲ませて……やっぱり丁度いいと思うけど」

2018-10-26 03:11:11
しすお @shisuo4202

「ん? ずん姉さま、なんかこのお味噌汁薄くないですか?」 「え、そうかな? ちょうどいいと思うけど」 「……流石にお湯に若干の味噌味がする程度の濃さを丁度いいというのは無理がある気が……」 「ちょっときりたんの味噌汁飲ませて……やっぱり丁度いいと思うけど」

2018-10-26 03:11:11
しすお @shisuo4202

「えー……どうしちゃったんだろう、私の体……」 「病イン・・・イ――?」 「……あれ?」 一瞬視界が乱れた映像みたいに歪んで見えた。同時に、声もぶつ切りになってあまり聞き取ることが出来なかった。 「きりたん、ほんとに大丈夫? やっぱり病院行こう?」

2018-10-26 03:11:44
しすお @shisuo4202

「えー……どうしちゃったんだろう、私の体……」 「病イン・・・イ――?」 「……あれ?」 一瞬視界が乱れた映像みたいに歪んで見えた。同時に、声もぶつ切りになってあまり聞き取ることが出来なかった。 「きりたん、ほんとに大丈夫? やっぱり病院行こう?」

2018-10-26 03:11:44
しすお @shisuo4202

「……そうですね、病院に行くことにします。すいませんずん姉さま、私のせいで学校に遅れてしまいます」 「良いのよ。大事なきりたんの為だもん」 「ずん姉さま……」 この不安には、ずん姉さまの優しさがよく効く。

2018-10-26 03:12:11
しすお @shisuo4202

「……そうですね、病院に行くことにします。すいませんずん姉さま、私のせいで学校に遅れてしまいます」 「良いのよ。大事なきりたんの為だもん」 「ずん姉さま……」 この不安には、ずん姉さまの優しさがよく効く。

2018-10-26 03:12:11
しすお @shisuo4202

散々な1日の、最初の小さな幸せを噛み締める。 不安が少しだけ和らいだ。 (本当にどうしてしまったんだろう……)

2018-10-26 03:12:42
しすお @shisuo4202

散々な1日の、最初の小さな幸せを噛み締める。 不安が少しだけ和らいだ。 (本当にどうしてしまったんだろう……)

2018-10-26 03:12:42
しすお @shisuo4202

結局、病院でも原因は分からなかった。 至って健康。 それが医者の出した診断だ。 しかし、どんどん自分の体はおかしくなっていった。 視界がぶれる頻度は多くは無いが、家を出てからずっと耳鳴りが止まない。 そして、言及はしなかったがもう一つ不可解な事がある。

2018-10-26 03:13:00
しすお @shisuo4202

結局、病院でも原因は分からなかった。 至って健康。 それが医者の出した診断だ。 しかし、どんどん自分の体はおかしくなっていった。 視界がぶれる頻度は多くは無いが、家を出てからずっと耳鳴りが止まない。 そして、言及はしなかったがもう一つ不可解な事がある。

2018-10-26 03:13:00
しすお @shisuo4202

タコ姉さまの分の朝食。あれには誰も手を付けなかった筈だが、いつの間に食器ごと消えていたのだ。 「きりたん、大丈夫? 今日は学校休む?」 (食器は……タコ姉さまはいったいどこに? そもそもタコ姉さまはどこに行ったんだろう?) 「きりたん?」

2018-10-26 03:14:06
しすお @shisuo4202

タコ姉さまの分の朝食。あれには誰も手を付けなかった筈だが、いつの間に食器ごと消えていたのだ。 「きりたん、大丈夫? 今日は学校休む?」 (食器は……タコ姉さまはいったいどこに? そもそもタコ姉さまはどこに行ったんだろう?) 「きりたん?」

2018-10-26 03:14:06
しすお @shisuo4202

(タコ姉さま……いつもはちょっとだらしないけど、一応私の姉ですし心配です) ーーーー。 (…………あれ?) 気付く。 気付いてしまう。 家族を心配するその心から、致命的な歪みに。 「きりたーん?」 (おかしい。私には確かにタコ姉さまという姉がいる。でも……でも、どうして?)

2018-10-26 03:15:09
しすお @shisuo4202

(タコ姉さま……いつもはちょっとだらしないけど、一応私の姉ですし心配です) ーーーー。 (…………あれ?) 気付く。 気付いてしまう。 家族を心配するその心から、致命的な歪みに。 「きりたーん?」 (おかしい。私には確かにタコ姉さまという姉がいる。でも……でも、どうして?)

2018-10-26 03:15:09
しすお @shisuo4202

(どうして、今までタコ姉さまとどんな事をしてきたか、その一切の記憶が無い) 考えれてみれば、自分はタコ姉さまに会ったことがあるか? 顔だけは浮かぶ。しかし、どんな人物かという事があまりに不鮮明だ。家族として、こんなことがあり得るのか? (いや、そもそも――) (私はいつから私になった?)

2018-10-26 03:16:04
しすお @shisuo4202

(どうして、今までタコ姉さまとどんな事をしてきたか、その一切の記憶が無い) 考えれてみれば、自分はタコ姉さまに会ったことがあるか? 顔だけは浮かぶ。しかし、どんな人物かという事があまりに不鮮明だ。家族として、こんなことがあり得るのか? (いや、そもそも――) (私はいつから私になった?)

2018-10-26 03:16:04
しすお @shisuo4202

昔の記憶を思い出そうとする。しかし、どうやっても小さいころ……小学5年生以前の記憶が思い出せない。 いや、と言うよりは、一切ない。 まるで、私と言う存在が今この状態のまま生み出されたような―― 「きりたん!!」 突然の怒声に私はハッとし、後ろを歩いていた姉に振り向く。

2018-10-26 03:16:47
しすお @shisuo4202

昔の記憶を思い出そうとする。しかし、どうやっても小さいころ……小学5年生以前の記憶が思い出せない。 いや、と言うよりは、一切ない。 まるで、私と言う存在が今この状態のまま生み出されたような―― 「きりたん!!」 突然の怒声に私はハッとし、後ろを歩いていた姉に振り向く。

2018-10-26 03:16:47