呟怖と散文 10

創作文まとめ
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晴れ時々雨 @rio11ruiagent

本気って言うから、目を見たら本気だったから、もう逃げられないと思った。 君は毒薬を掲げ、陽に透かした。 美しい色だった。これが僕たちの命を奪う物だなんて思えないほど。君は好きなカルヴァドスみたいにそれを一息で煽った。 目の前で君が尽きてゆく。 ごめん僕はまだ逝けない。 君を片付けたら

2018-10-20 16:12:15
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

犬の散歩で通りかかる家に住む女性に声を掛けるようになった。竹穂垣の切れ目から後ろ姿が見えた。庭でまた火を炊いている。 何故か声を掛けずに、和服の後ろ姿を眺めた。煙が黒い、何を焚べているのだろう。横顔が笑っている。 犬が鼻を鳴らすと、振り向いた彼女の目は濡れていた。 #呟怖

2018-10-09 23:18:26
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

曇ってきた。辺りがざわついている。風はそれほど強くない。ぽつぽつと始まった。ざわめきが大きい。腕で雨をよけながら騒々しい空を見上げると、一面に広がる鬼の顔が二つ、激しく口論をしていた。 #呟怖

2018-09-24 12:05:03
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

玄関の開く音と共に、こんにちはーと元気のいい声がする。 あの子は毎週火曜にこのそろばん塾へ一番にやってきた。授業開始の15分前、その日あった出来事などを話す。 「こんにちはー」 ざっと風が吹き抜けて今日も声がする。もう半年か。あれ以来、姿は見えない。 #呟怖

2018-10-07 11:14:11
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

あら…?どうしちゃったのかしら。私くたびれたみたい。こんなところにシワなんてあったっけ。あいたた、なんだか腰が痛い。ゆっくり、ゆっくりよ。これはやばいわ。 「ただいまぁ〜」 あらご帰宅ね。 「やぁ、今日は一日何をしていたんだい?」 えっ誰このおじいさん。 お義父さんだったかしら #呟怖

2018-10-13 16:49:34
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

「ちょっと、洗濯物は朝出しなさいよ。昨日も言ったでしょ」 俺がポカンとしていると、母は慌ただしく掃除機の前後運動をする。 俺は今帰ってきたんだ。昨夜友達のとこへ泊まるって言ったじゃないか。 「昨日…」 言ってからはっとする。 「返事したわよ、あんた…」 二人で階段の上をじっと見た #呟怖

2018-09-15 16:35:10
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

彼女は変わってしまった。あんなに優しく笑う人だったのに、今は僕のことも他人を見るような目でみる。君の信じているものは何?誰が君を変えたの?もう部屋にも上げてくれない。訪ねたドアの隙間から冷たく光る銅鏡が見えた。突然消えてしまった僕の君はどこへたどり着くのだろう。ただ哀しい。 #呟怖

2018-09-24 21:26:59
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

シンデレラは生前の父に毎晩陵辱されていた。出先で死んだときは神を信じそうになった。継母や姉たちのいじめなんてどうってことない。犯されず飢えない程度に食べてさえいければよかった。ちょっとした気まぐれで出かけた夜会で出逢ったあの男。死んだ父と同じ目で娘を見る。激しい後悔が襲う #呟怖

2018-09-19 20:48:44
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

俺は学校で所謂いじめにあっている。最初はおふざけの延長と思ってたが徐々にエスカレートしていって今じゃ小突かれたり物を隠されたり。だが帰れば幼馴染がいる。こいつは変わった奴で俺がやられて帰ると「今どんな気分?」目を輝かせて訊ねてくる。悪い奴じゃないけどデリカシーってもんがない #呟怖

2018-09-26 16:40:47
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

君は嘘ばかり付いてる。 宝くじが当たっただとか、ペンギンを飼っただとか、子供ができただとか、明日引っ越すだとか、もうすぐ死ぬだとか、僕のことを好きだとか。 おい、冗談は顔だけにしとけよ。 まるで本当のことを言ったら死んでしまうかのように。 #呟怖

2018-10-10 00:07:33
晴れ時々雨 @rio11ruiagent

逃げるなら今しかない。隣の寝息を聞きながら準備を整える。 もう何も考えない。今はただ、このやるべきことを完遂するだけ。 男の首に通した紐を前で交差する。 さよならもなにもない。 はじめて犯された日に食いしばったときと同じ力で、紐を引いた。 力みすぎて涙が出た。 #呟怖

2018-10-19 20:54:15
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