スカイリムのお話 「オタマ対リサ」第二話

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たゆさい @tayusai

スカイリムのお話 「オタマ対リサ」第二話

2018-11-15 11:35:18
たゆさい @tayusai

ウィンドヘルムの眼前に広がるヨルグリム川から上り、数キロメートル先の中流。そのほとりにある街道の中心で、赤い髪の女は十人ほどの山賊に囲まれていた。山賊達は手に斧、剣、メイス等を持って殺気立っており、常人ならば恐怖で失禁するであろう状況である。1

2018-11-15 11:41:07
たゆさい @tayusai

だがその女--リサ--はまるで恐怖を感じていない様子で笑みを浮かべている。そう、笑みだ。山賊達はこの笑みを見て苛立つ。こいつは俺達を恐れていないのか? その疑問が山賊達の凶暴性を刺激し、彼等は尚更に威圧的な空気を発そうと斧を空で振り、剣先をリサに向ける。2

2018-11-15 11:44:53
たゆさい @tayusai

山賊の長らしき長身の男は長大な両手斧を片手で持ち、その先をリサに突きつけて言った。「おいテメェ。この間仲間にケンカ売って、ぼこぼこにしたのはテメェだろぉコラァ。テメェのせいで俺達の評判に傷がついちまったんだぁ。『女に負ける雑魚がいる山賊』ってなぁ。どうしてくれるんだ?」3

2018-11-15 11:49:32
たゆさい @tayusai

「もちろん弱い奴なんて俺の団には必要ねえからなぁ。そいつはぶち殺してなますにして食っちまったぜ。だがそれじゃ俺の腹の虫がおさまらんん。おめえもぶっ殺さねぇとなぁ。ついでにおめえの大事な宿屋にも部下を向かわせてる所だ。今頃あそこは血の海だろうぜ。どんな気分だへっへっへ」4

2018-11-15 11:53:33
たゆさい @tayusai

山賊長が高笑いしていると、リサは痺れを切らした様子で口を開いた。「おい。いつまでしゃべってるんだ。早く来いよ。私とケンカしようぜ!」リサは両手で拳を作り、戦闘体勢を取った。それが山賊長の逆鱗に触れた。「んだテメェ調子乗ってんじゃねえぞコラァぶっ殺してやるぅあッ!」5

2018-11-15 11:57:48
たゆさい @tayusai

山賊長は両手斧を振り上げ、リサの脳天を断ち割ろうとした!このままリサの頭蓋骨は斧で砕け、脳漿が噴出するだろう。周囲の山賊は皆そう確信した。しかし、結果はそれとは大きく異なった。ガキィンという人間の脳天と斧がぶつかった物とはとても思えぬ甲高い音が鳴った。6

2018-11-15 12:00:36
たゆさい @tayusai

「?」「へ?」「あ?」信じられない光景を前に山賊達は目を飛び出して驚愕した。山賊長の斧の刃の部分が、リサの頭によって粉々に砕けてしまったのである。「え?」山賊長も目の前の現象が信じられぬという顔をした。「よおし次は私だ」リサは何一つ効いていない様子で拳を振り上げた。7

2018-11-15 12:04:40
たゆさい @tayusai

「ふん」リサは手加減した軽めのストレートを山賊長に当てた。「へぶら」山賊長は奇妙な悲鳴を上げながらくの字に吹っ飛び、後ろのヨルグリム川に沈んだ。「あ、な、な、何してやがる!親分の仇だ!」残った山賊達はまだ辛うじて戦意が残っているらしい。一斉にリサに襲い掛かる!8

2018-11-15 12:07:09
たゆさい @tayusai

「はっはっ!楽しくなってきたぜ。さあ来い!」リサの顔が歓喜に満ちた。そして襲い来る山賊達を次から次へと殴り、殴り、殴り飛ばした!「びゃ」「べやぁ」「ぼぉっ」「ぶえぇげ」リサの猛烈な威力のパンチで山賊達は次々と吹っ飛ばされる。中には加減を間違えたか首の骨がイカれた者もいる。9

2018-11-15 12:11:27
たゆさい @tayusai

「おいおいどうしたこんなもんか?」リサは笑いながら山賊を殴る。山賊も何回かは斧や剣の一撃をリサに見舞うのだが、それがまるで効かないのだ!まるで鋼を斬りつけるような硬さなのだ!(コイツはヒトではない!)山賊がそれに気付くのには遅すぎた。そして殴り飛ばされる運命にあった。10

2018-11-15 12:14:59
たゆさい @tayusai

「くそっ、やれ!」山賊の一人が近くの森に向かって叫んだ。そこに隠れていた数人の射手がリサに狙いを絞り、矢を放った。それは確かにリサに命中した。しかし、岩に当たった時の様にそれは弾かれた。「お、今の面白いな!私も面白いのを見せてやる!」11

2018-11-15 12:18:02
たゆさい @tayusai

リサは息を大きく吸い、矢が放たれた方向を向いた。そして叫んだ。「ヨル・トゥール・シュル!」リサの口から激しい炎が巻き起こり、それは森を焼き払った!「ああちちいいい!」多少は加減していたからか、山賊は死なず全身火塗れになって焼ける森から飛び出し、ヨルグリム川に飛び込んだ。12

2018-11-15 12:22:52
たゆさい @tayusai

「す、スゥームだ!こいつスゥームを使うぞ!」伝説にしか存在しないとされたスゥームの秘術を目の当たりにし遂に山賊達は恐慌状態となった。「逃げろぉ!」残った山賊達は一目散に逃げ出した。「なんだもう逃げるのか。もっとケンカしたかったぜ」リサは頬をぷくりと膨らませ不満げな表情をした。13

2018-11-15 12:27:00
たゆさい @tayusai

「さて、そういやあいつ等宿屋を襲ったとか言ってたな。となるとエルダとかがちょっと心配かもな。無事だといいけど」リサはあまり心配してなさそうなトーンで言い、ウィンドヘルムへ帰ろうとした。その時であった。 (ニゲロ) リサの心に突然声が響いた。「え?」リサは突然の声に困惑した。14

2018-11-15 12:31:46
たゆさい @tayusai

その声は間違いなく聞き覚えがあった。まだ自らが誕生して間もない、微かな、しかしはっきりと記憶に残る声であった。そう、父の声、アカトシュの声である。「父上?」かつて兄アルドゥインとの戦いをした時でさえ何も言わなかった父が何故急に自分に語りかけるのか?それもニゲロと。15

2018-11-15 12:36:05
たゆさい @tayusai

空の色が変わり始めた。雲も無いのに稲妻が走り出し、空にヒビが入りだした。 (オマエニチカヅクモノガイル。コノセカイニイルベキモノデハナイ。"トッパ"ヲオコナワネバナラヌ) 「”突破”だって?」リサは突破が何を意味するのかよく分からなかった。16

2018-11-15 12:41:13
たゆさい @tayusai

突如、リサに重く圧し掛かる様な魔力が襲い掛かった。シャウトで燃える森の炎がその圧力で消えた。空には危険を察した鳥達が一斉に飛び立ち、ひび割れた空を覆った。「なんだ? 何が起きてる?」リサは周囲を見回した。17

2018-11-15 12:46:43
たゆさい @tayusai

ずしん……ずしん……。 どこかから自らが放つ圧を踏み潰すような足音が聞こえた。ヨルグリム川の流れが止まった。 ずしん……ずしん……。 足音はリサに近づいていく。川の流れは自然の理を裏切り、逆向きに進み始めた。17

2018-11-15 12:49:37
たゆさい @tayusai

ずしん……ずしん……。 音は更に近づいた。リサの周囲の小石が浮き始めた。グググと大地が悲鳴を上げ始めた。リサの眼前に”それ”が見え始めた。”それ”は緋色の魔力を全身から放ち、リサの得物である『ザークリ・ドゥ・ドヴァーキン』を担いでいる。髪は緑色、瞳は赤色。つばの広いとんがり帽子。18

2018-11-15 12:55:24
たゆさい @tayusai

(ニゲロ。オマエガハカイサレル) 父の声が再びリサに響く。しかしリサはこの魔物を目の当たりして尚、身体は奮えていた。「いや、ダメだ。私はこいつと戦いたい。こいつの強さを見たい」それは彼女の本能であった。今、魔物はリサの眼前にいた。魔物は剣をリサの目の前の地面に投げた。19

2018-11-15 12:59:08
たゆさい @tayusai

「初めまして、リサ、いやドヴァーキン。あたしはオタマ。今日はお前に話をしに来た」 怪物が、にんまりと笑い、蛇のように舌をシュルシュルと出した。20

2018-11-15 13:01:16
たゆさい @tayusai

通し番号17が重複してました。しかし直すのが面倒なのでそのままにしちゃいます

2018-11-15 13:04:35