ドルフロ二次創作 #すちゃらかログ 『指揮官、誘拐される』

何の因果か、ドルフロ二次創作をはじめました。その割にドルフロ要素は薄いですが。基本的にすちゃらかどたばた、行き当たりばったり、はちゃめちゃです。お時間のある方、もしよろしかったら読んでいただけたら幸いです。(基本的に土曜日更新、随時Togetterでもまとめます) 12/31追記:完結いたしました。これまでおつきあいしてくださってありがとうございました。
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HK15 @hardboiledski45

「ああー。その。ええと。これはいったいどういう」 「ぼくにもわかりません」指揮官は言った。真顔だった。「しかし、神に誓いますが、これはぼくの考えではありません。本当です」 「うん、ええ、でしょうね。こういうこと実行できる度胸があるようには見えませんから」IDWは答えた。

2018-10-22 17:16:53
HK15 @hardboiledski45

「それにしても、ここどこです? 指揮官さんは何かご存知ないんですか?」 「わかりません。目が覚めたらここに……」 二人は周囲を見回した。四方=コンクリート剥き出しの壁。床=薄汚れたタイル張り。天井で蛍光灯がジジッ、ジジッ、と呟きながら瞬いている。

2018-10-22 17:37:09
HK15 @hardboiledski45

「何かいやな予感がしますね」 「ですね」 「早く出ましょう」 二人は部屋に唯一あるドアに近づいた。鋼鉄製でデカい。指揮官はドアノブを試してみた。 「開かない」 「ロックの解除は?」 「それらしいものが見当たりません」

2018-10-22 17:40:28
HK15 @hardboiledski45

異常な仕様──異常者の所産。ふたりは顔を見合わせた。 「やばい」指揮官が言った。 「離れてください。わたしが」IDWはドアノブをつかみ、渾身の力でひねった。びくともしない。彼女はさらに力を込めた。太い縄のような人工筋肉が膨れあがる。 バギッ。 「あっ」IDWはすっ転んだ。

2018-10-22 17:44:32
HK15 @hardboiledski45

「あっ」指揮官はIDWの手元を見て叫んだ。彼女の手の中にはちぎれたドアノブがあった。 「ああっ」 「えらいこっちゃ」 「ええいくそ。こうなったら」 ふたりはドアに代わる代わる体当たりしたり思い切り蹴ったりした。効果はなかった。ドアは文字通りの鉄壁となって立ち塞がった。

2018-10-22 17:46:51
HK15 @hardboiledski45

「やばい。やばいぞこれ」 「そもそもなんでわたしこんな恰好なんですかあ」 「わかりません。わかりませんよう。これはカフカだ。理不尽なものはみんなカフカだ」 指揮官はわめきながら扉をぶっ叩いた。何の意味もなかった。指揮官はすりむいた拳をなめるはめに陥った。手負いの猫のようだった。

2018-10-22 17:55:39
HK15 @hardboiledski45

…… 「指揮官の居所は分かったのか」ナガンが言った。 「分かりません。IDWちゃんも」カリーナは答えた。出涸らしのコーヒーをがぶ飲みする。むせる。「くそ。あいたたた。胃が。胃が」 「コーヒーの飲み過ぎじゃ。休め。わしが業務を代行する。それにしてもふたりともどこへ……」

2018-10-22 18:00:56
HK15 @hardboiledski45

「まさか──拉致」 ありえない話ではない。PMSCsであるG&K社は方々で恨みを買っている。敵対勢力に誘拐されて無残な死を遂げる社員は少なくない。だからこそ後方要員であるカリーナも常日頃から拳銃を隠匿携帯しているのだ。

2018-10-22 18:06:52
HK15 @hardboiledski45

「だとしたら──ヘリアンさんに連絡しないとまずいんとちがうか」 「もうしました」カリーナは低い声で唸るように言った。「一応心配はしてくれましたが──捜索にどれくらいリソースを割いてくれるか。何せ、ほら、戦術指揮官ですから」

2018-10-22 20:09:22
HK15 @hardboiledski45

身もふたもない話:戦術指揮官は消耗品。促成栽培の名ばかり将校。事実上、ロボット兵器のハンドラーでしかないのだから当然ではある。消耗分は即座に補充される。今のご時世、なり手はいくらでもいるからだ……

2018-10-22 20:13:10
HK15 @hardboiledski45

「にしたって、ほったらかしにするわけにもいかんじゃろ」ナガンは腕組みした。「探偵まがいのことをせにゃならんな」 「ああ、もう。何でこう次から次へと」カリーナはぶつくさ言った。「くっそお。割増賃金にしてもらうからな」

2018-10-22 20:49:54
HK15 @hardboiledski45

「だめだ」室内をくまなく検索したのち、指揮官は言った。「やっぱりそのドアしかない」 「もう一回……体当たりします?」 「やめときましょう。くたびれました」 指揮官は床に座り込んだ。ため息をつく。

2018-10-23 20:42:01
HK15 @hardboiledski45

「いったいそれにしても、誰がこんなことを」IDWは言った。「心当たりはないんですか?」 「ないです。あればとっくに言ってます。……しかし、それにしてもなぜ、そんな、その、おかしな恰好をさせたんでしょうね」 IDWはハッとした顔になった。耳が赤くなる。両腕で胸を隠す。

2018-10-23 20:44:53
HK15 @hardboiledski45

「見ないでください」 「すみませんでした」指揮官はいった。「しかし、それにしてもいったい誰が……」 『──わたしだよ』 「どわあっ」指揮官とIDWは飛び上がり、ひしと抱き合った。「誰だ。どこにいる」

2018-10-23 20:47:31
HK15 @hardboiledski45

『スピーカーだよ。分からんかね。想像以上に頭が悪いな』 声の主は言った。男とも女ともつかぬ、無機質で妙に甲高い声だった。 「そんなのはどうでもいいです」指揮官は言った。少しムキになっていた。「あなたは誰ですか。ここはどこですか。なぜこんなことをするのですか。答えてください」

2018-10-23 20:52:28
HK15 @hardboiledski45

『答えるわけがないだろ。バカめ。さてと、G&Kの人形つかい……ええと……××××くん。バカなきみにやってほしいことがあってね』 「何をしろというのですか」 『まずはだね、そこにいる子ネコちゃんとよろしくやってほしいんだよ』 「はい?」

2018-10-23 20:55:34
HK15 @hardboiledski45

指揮官はぼんやりした顔になった。 「何をしろと?」 『よろしくやってくれと言ったんだ。有り体に言ってほしいか? つまり、××××しろと言ったんだよ』 指揮官はしばらく黙っていたが、ややあって凄まじい罵詈雑言と呪いの文句を吐き散らした。とてもここには書き表せないものばかりだった。

2018-10-23 20:57:53
HK15 @hardboiledski45

『ほほう、ずいぶん荒っぽい言葉を使うんだな。傭兵らしくて結構なことだ。よろしい。ブラザーズ、ちょっとばかし教育してやれ』 鉄扉がいきなり開いた。すごい勢いだった。ガタイのいい男が数名室内に入ってきた。みなゴム引きの黒いバカ長をはき、黒い覆面をつけていた。

2018-10-23 21:03:16
HK15 @hardboiledski45

『やれ』 男たちは指揮官に襲いかかった。殴り合いになった。指揮官は奮闘したが、衆寡敵せずであった。指揮官は岩のような拳の雨を受けてその場に倒れ、囲まれて徹底的に踏みつけられた。一瞬IDWの声が聞こえた気がしたが、次の瞬間にはもう指揮官は気絶していた。

2018-10-23 21:06:58
HK15 @hardboiledski45

「……指揮官。指揮官っ。起きて。起きて下さいっ」 「ううう」覚醒と同時に指揮官はのたうち回った。「あああ。ぐわああああ」 「動かないで!」IDWは指揮官を抑えつけた。「全身アザまみれなんですよ」 「ううう。ケガは。ケガは」 「ですからアザまみれ」 「あなたのほうです……」

2018-10-23 21:11:31
HK15 @hardboiledski45

「わたしは何も。……電脳キーを差し込まれたらしくて、あっというまに制圧されました」 対人形戦闘に慣れてやがるな──苦痛にくもった意識の片隅で、指揮官はぼんやりそう思った。ただのいかれぽんちどもではないらしい。 「わかりました。何もなければそれで。あいたた。いたたたたたた」

2018-10-23 21:16:24
HK15 @hardboiledski45

『痛い痛いとわめいてられるということは、だいぶ回復したな。よろしい。さあ、やることをやってもらうぞ』 「野郎」指揮官はわめいた。「必ず見つけだしてやる。お前のキンタマをお前自身に食わせてやる。それから麻酔なしで歯を抜いて、それから無許可の整形手術をやってやる。クソ野郎!!」

2018-10-23 21:21:24
HK15 @hardboiledski45

『想像力豊かだな。素晴らしいね。ジャッロ映画の脚本家にでもなったらどうだい。……さあ、与太話はこれくらいにして、さっさとおっぱじめろ。お前にはまだやってもらわにゃならんことがいろいろあるんだからな』 声は言った。無慈悲な口調であった。

2018-10-23 21:24:35
HK15 @hardboiledski45

「抜かせ! サノバビッチ! ブルシット! キス・ユア・ダーティ・アス!!」 「落ち着いてください!」IDWが指揮官に飛びついた。かれの頬を思い切り引っぱたく。指揮官の首がねじれた。 「グワーッ!!」

2018-10-23 21:27:24
HK15 @hardboiledski45

「あっ」IDWは真っ青になった。「すみません。落ち着かせようと思って。つい」 「ううう。ううう。大丈夫です。ぼくは大丈夫。ちょっとばかしむち打ちに。あいたた。あいたたた」 『わはは。いいぞいいぞ。もっとやれ』

2018-10-23 21:30:31
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