ドルフロ二次創作 #すちゃらかログ 『指揮官、誘拐される』

HK15 @hardboiledski45

いいアイデアだったはずだ。敵の指揮系統にトロイの木馬を送り込んで内側から破壊させる。その前に心理工作のための材料にするというのも悪くないプランだったはずである。だというのに。おのれ人間め。彼女は歯がみした。 #すちゃらかログ

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まあいい。とりあえず奴らを散々引きずり回して時間を稼いだ。逃げ切れるはずだ。彼女は思った。これから先、長い長い距離を単独で移動せねばならないが、そんなことは苦にならない。彼女は人間ではなかったからだ。彼女は鉄血人形だった。 #すちゃらかログ

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もうそろそろ森を抜ける。彼女は身構えた。開けたところに出るのだ。警戒するのは当然である。彼女はセンサーをフルに働かせて周囲を走査した。怪しいものは見つからない。いけるだろう。彼女は一歩足を踏み出した。 #すちゃらかログ

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ばっ、と眩い光が投げかけられた。 「クソ！」彼女は後ずさろうとした。そのときだ。 「うおおおおおお」突然近くの茂みから何かが飛び出してきて、彼女をどかんとその場に打ち倒した。 IDWであった。 #すちゃらかログ

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「いくぞトゲトゲ頭！」IDWがわめいた。 「何がトゲトゲ頭だ！」彼女はわめいた。「おれにはちゃんと名前があるんだ！」 「やかましい！」 「やるかバカネコ！」 ふたりは激突した。ふたりにしか聞こえぬゴングが鳴った。 #すちゃらかログ

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およそ、人形同士の格闘戦は、人間同士のそれよりひどいことになる。お互い、非常に頑丈だし、文字通り人間離れしたタフネスのオーナーでもある。相手の動きを止めるには、相手のボディを徹底的に破壊するしかない。 #すちゃらかログ

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いける。彼女は勝算を持っていた。多少不調はあるが、全体の出力や躯体の頑丈さ、電子脳の性能からくる「先読み」の精度の高さは、こちらの方が上だ。こんな低級人形、返り討ちにして潰してやる。頭を叩き割ってメモリチップを踏みつぶしてくれる。いい気晴らしになるだろう。 #すちゃらかログ

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ところが、そのときだった。 「うおおおおおおお」 彼女は見た。グリフィンの人形たちがいっせいに走って襲いかかってくるのを。その数は10や20できかなかった。 「クソ！！」彼女は敗北を悟った。もはやどうしようもなかった。 彼女はボコボコの袋叩きにされ、地に這った。 #すちゃらかログ

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…… 指揮官は地べたに這いつくばった鉄血人形を見下ろした。ボロ雑巾よりひどい有様だった。指揮官配下の第一・第二部隊に加え、ヘリアンがよこした増援部隊の腕利きたちによって徹底的にぶちのめされたからだ。機能停止していないのは奇跡だった。 #すちゃらかログ

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鉄血人形が目だけ動かし、指揮官を見た。 「やあどうも。ご機嫌いかが？」指揮官は嘲るように一礼した。 「クソが」鉄血人形は呻いた。「人間め。不合理の塊め」 #すちゃらかログ

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「何を言われたって怖くありませんね。あんたはもうおしまいだ。分かってるでしょうけどね」 「へっ」 「IDW」指揮官は命じた。IDWは鉄血人形を押さえつけて猛烈な往復ビンタを食らわせた。 #すちゃらかログ

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「ぐむう」鉄血人形は人工血液を口と鼻の穴から吹きだし、目を回した。それでもブラックアウトは起こさない。さすがに大したものだ、と指揮官は思った。 「さて、実はね。あなたと話したがっている人がいましてね」 #すちゃらかログ

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指揮官は手元の端末を操作して鉄血人形に突きつけた。 『こんばんは。きみのことをどう呼ぶべきかな。名前を知らないのでね』回線の向こう、ヘリアンが言った。 「お前に教えてやる名前なんかない」鉄血人形は言った。ねじれた笑みを浮かべる。 #すちゃらかログ

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『そうか。それは非常に残念だ。まあいい。喋らないなら、きみの頭をこじ開けて、コンピュータにつなげばいいだけだからな』ヘリアンは言った。無慈悲な口調であった。 『きみらにはジュネーブ条約を適用しなくてもいいからな。気楽なものだよ』 #すちゃらかログ

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「だそうです」指揮官は言ってやった。 「クソ野郎」鉄血人形はささやくように言った。 「クソ野郎はあなたでしょ」 「どうでもいい。そんなことはな。おれはもうおしまいだが、これで終わりだなんて思うなよ」鉄血人形は言った。 #すちゃらかログ

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目つきの鋭い小柄な人形が指揮官に近づいた。 「ウェルロッドです」彼女はシャープな声で言った。「指揮官、ご苦労様でした。この人形はこちらで回収します。よろしいですか」 指揮官は無言でうなずいた。 #すちゃらかログ

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ウェルロッドは部下の人形に命じて鉄血人形を移送用のケース（まるで棺桶みたいな見た目だ）に入れさせた。本部付のエリート人形たちは、その棺桶ケースを真っ黒な大型ヘリに運び込み、カーゴドアを閉めた。 #すちゃらかログ

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指揮官たちが見送る中、大型ヘリはゆっくりと舞い上がった。このまま本部に飛ぶのであろう。これでおしまいだ。指揮官はほっとため息をついた。これで本当におしまいだ。やっと帰れる。万々歳だ。 #すちゃらかログ

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ずどがん。 ヘリが爆炎に包まれた。 「へ？」指揮官たちは一瞬固まった。 でかい火の玉になったヘリが落っこちてくる。 「逃げろーっ」指揮官たちはクモの子を散らすように逃げた。 #すちゃらかログ

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何でこう次から次へと。指揮官は走りながら思った。悪いことばかり起こるんだ。なぜだ。 答えは出なかった。そして、ヘリが墜落して爆発し、その爆風で指揮官は紙風船よろしく吹っ飛ばされ、近くの木に激突し、またも人事不省に陥った。お疲れ様。 #すちゃらかログ

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…… あの鉄血人形は自爆したらしい、と指揮官はあとで聞かされた。それが運悪く、ヘリに積まれてあった弾薬もまとめて誘爆させたらしいのだ。同乗していた人形たちは当然無事では済まなかった。まあ、バックアップがあるから、最悪の事態は免れたが。 #すちゃらかログ

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指揮官は無事に基地にたどり着いた。基地ではカリーナが他の人形たちとともに待っていた。帰ってきた指揮官に、カリーナは、臨時ボーナスの請求書を突き出した。その額面を見た指揮官はまたもや卒倒した。 #すちゃらかログ

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そればかりではなかった。指揮官は大量の書類を書かされ、各種査問会や秘密聴取にかけられ、何度も何度も本部と基地を往復させられる羽目になった。もちろんその足は自分で用意した。ちなみに運転手はIDW。護衛はナガンであった。 #すちゃらかログ

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例の集落については、指揮官は法務部と何度も連絡を取り、それなりの補償を出す確約を取りつけた。セルゲイたちはずいぶん感謝してくれたようであった。何のかんのといって、彼らはたくましくふてぶてしい人間たちであった。 #すちゃらかログ

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ダムマイヤーはあの後、やはり本部に連れていかれ、あれこれ吐き出させられたらしい。釈放されたあとの行方は分からなかった。ヴァシーリエフはやはり散々尋問された後、刑務所送りになった。もう二人と会うことはないだろう、と指揮官は思った。 #すちゃらかログ