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幸せになろうね」と囁かれる。初めての出産だから、不安だらけで寝れない夜があることを知っていて、時々こんな風に落ち着かせてくれる。うん、と小さく返事をする。瞼に降ってくる唇の熱、愛おしさに包まれて眠る夜。#トラジャで妄想
2018-10-24 00:56:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「帰る時間教えてね。迎えに行く」と龍也くんから短くメッセージが来ていた。「ありがとう。了解です」と返す昼休み。今夜行き先は秘密らしいけど、車でどこかへ連れて行ってくれるらしい。残念ながら少し残業をしてしまう。終わった途端に急いで荷物をしまう。「なに?どした?」後ろの席の
2018-11-17 23:10:41![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
宮近くんがホットだったはずのぬるくなっった缶コーヒーを啜りながら聞いてくる。「これからデートなの、遅くなっちゃった」と言えばふーん、とわたしの机の上のチョコレートを食べる。あ、ねえ!それわたしの!と怒るとへらへらしてる。同期だけど、宮近くんはきっと友達みたいな感覚でいると思う。
2018-11-17 23:11:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「あの、あれでしょ。七五三みたいな名前の」七五三掛です、とすぐに訂正する。そうそう、それそれ。と立ち上がりジャケットを着る。「宮近くんも帰る?」誰かさんの彼氏さんを見て帰ろうかなあ、なんて言うから「えっ」と変な声が出てしまった。なにその声、どこから出てんの。とすたすたエレベーター
2018-11-17 23:11:59![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
に向かう。慌てて後を追いかける。「今終わったよ。遅くなってごめんね」と龍也くんに急いで送る。すぐに既読がつき、もう下にいるよ。と返事が来た。「えっ」今度は何?「え、いや、もう来てるって、」来るまで待つかと思っていたからリップが取れてしまっている。慌ててエレベーターの鏡で塗り直す。
2018-11-17 23:13:41![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「急に女になるじゃん」うるさい、と言えば「本当に七五三さん見れちゃうじゃん」と嬉しそう。「七五三掛だからね?」と念押しをする。外に出ると車にもたれて待つ姿。「龍也くんっ」と駆け寄ると、お疲れ様。と優しい笑顔。こんにちは、と横からひょこっと宮近くんが登場する。「どちら様?」
2018-11-17 23:14:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「〇〇さんと同僚の宮近です。お世話になっています。七五三掛さんですよね?お噂はかねがね」と営業スマイルを振り撒いている。こういう時しっかりしてるもんなあ。初めまして、と龍也くんも挨拶をする。「では、邪魔者は失礼しますね」またな!とわたしに手を振る。「明るい人だね」「うん、なんか
2018-11-17 23:14:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
いつも、ポジティブ、って感じ」そっか、と心無しかテンションが低いように感じる。「行こう。どうぞ乗って下さい」声色が変わり、助手席のドアを開けてくれる。気のせいかな。ありがとう、と車に乗る。「ねえ、どこに行くの?」と聞いても、内緒だよ、と含み笑いをする。どこだろうか。知らない景色が
2018-11-17 23:15:02![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
続き、外が暗くなる。日が落ちるの早いね、とのんびり話をする。「今日はその方がいいんだけどね」と言うから不思議に思っていると、着いたよ。と車を停める。外に出ると風が冷たい。「寒いっ」と漏らすと、手が繋がれる。だんだんと分かってきた。ここがどんな場所なのか。「わあ、、」と感嘆の声が
2018-11-17 23:15:45![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
出る。平日の夜なのに大勢のカップルがいる。イルミネーションだ。「すごい、初めて来た。すごい!すごい!」思わずはしゃぐと、「良かったあ。秘密にしてて、正解でしょ?」と言う。キラキラしたライトを背に笑う龍也くんは、いつもより一層かっこいい。胸がきゅーっとなる。しばらく歩くと人気のない
2018-11-17 23:16:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
スポットに出た。景色を堪能していると後ろからハグをされる。「〇〇ー?」普段はちゃん付けで呼ぶのに珍しく呼び捨てだ。「なにー?」昨日したばかりのネイルを見ながら答える。気づいてくれたかな。「あの、宮近さんと仲良いの?」宮近くん?宮近くんはまあ、仲は良いのかなあ。と言う。「噂って?」
2018-11-17 23:16:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「あれは、わたしがね、龍也くんと付き合う前に、色々相談に乗ってもらってたから」とごにょごにょしてしまう。こんな話恥ずかしい。「そっかあ、なんだあ」と急に気の抜けた返事。どうしたのだろう。「宮近さん良い人そうだし、〇〇ちゃんと仲良く見えたから、ちょっと心配しちゃった」安心したのか
2018-11-17 23:18:46![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
かわいく言う。えーなにそれー!表情に出ていたのか「嫉妬なんてかっこ悪いね、俺」と照れる。絡まった手を繋ぎ直し「そんなことない、嬉しい」と想いを込めて言う。嫉妬されてしまうなんて、宮近くんに今度お礼しないと。心の中で彼に感謝する。帰り道、「言いそびれちゃったけど、ネイルかわいいね」
2018-11-17 23:19:09![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
なんて言ってくれるから「龍也くん素敵男子だよ、、」と褒めちぎると「えー?」とよく分かってないみたい。龍也くんの良い所はわたしだけが知っていればいい。大事にされるのも、嫉妬されるのもわたしだけがいい。イルミネーションを見る度に、今夜のことを思い出すんだろうなと嬉しくなる。龍也くんの
2018-11-17 23:19:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
横顔を見つめる。信号待ち、左手が伸びてきて「また行こうね」と頭を撫でられる。週明けの昼休み。この日のことを話すわたしを、呆れながら見つめる宮近くんがいた。
2018-11-17 23:22:45![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
大学で初めての彼氏ができた時、一番に報告したのは親友だったけど、次に言ったのはしめちゃんだった。高校の時に隣の席になったのがきっかけで話すようになり、社会人になった今でも気の合う友達としてよく会っている。「お待たせっ」居酒屋の前で寒そうに立っているしめちゃんを見つける。
2018-12-23 17:16:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「遅い、」と不貞腐れている。怒ってもかわいいから全然怖くはないんだけど。「ごめんごめん、寒かったよね。中入ろ」しめちゃんの背中を押して賑やかな店内へと足を踏み入れる。「とりあえず生で」と言うしめちゃんと「ハイボールお願いします」と言うわたし。全く色気のない。でもこれがわたしたち
2018-12-23 17:16:22![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
らしい。平日なのに浮き足立つのは、今日がクリスマスだから。お互いに特別過ごす相手はいない。「今年もひとりかあ」とため息をつく。そもそもそんなに男の人が得意ではないから、彼氏を作る気があまりないのだけれど。クリスマスで思い出すのはサンタだったり、ケーキだったり、デートだったり
2018-12-23 17:16:22![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
するけど、毎年なぜかポインセチアの花を思い出す。真っ赤なクリスマスの花。実家で母が大切そうに育てていたのを鮮明に覚えている。いつからかなくなってしまったけど。「ポインセチアのあの真っ赤な色を見ると、今年もこの季節が来たんだなあって思うんだよね」ふぅん、と聞いているのかいないのか
2018-12-23 17:16:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
興味なさそう。調べてみて、とスマホを開かせる。「そう言えばね!」と話題変える。最近の会社の愚痴を零す。「でね、御局様の事務のおばさんがいるんだけど、
2018-12-23 17:16:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
しめちゃんとご飯行くからめっちゃ急いで仕事してたら、クリスマスだもんね。若いっていいわねえ、って言われたの」なんかムカついた。しかも営業の佐藤くんとわたしのこと見ながら言うんだよ?と、だし巻き玉子を食べながら言う。若い人みんなに相手がいると決めつけないでほしい。「佐藤くんって?」
2018-12-23 17:16:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
顔に似合わずガンガンにビールを飲むしめちゃんに聞かれる。「この前、わたしに告白してくれた後輩の子、だけど」あれ言ってなかったなあ、と誤魔化す。わたしの恋愛話はほぼ全て知っているしめちゃんだけど、今回のことは忙しかったから言いそびれていた。なんとなく気まずい空気になる。「あ、でも
2018-12-23 17:16:24![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
断った!すごく体育会系みたいな人でわたしとはタイプが合わないというか」しめちゃんは可愛いから大丈夫なんだけどねえ。あはは、と笑ってみる。顔が無表情で読めない。頼んだ軟骨の唐揚げが来るので、美味しそう!とそちらに話題を変えようとする。「俺も男だよ?」レモンかけていい?と聞こうとした
2018-12-23 17:16:24![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
と同時にネクタイを緩めながらそう言われる。レモンを置き、おしぼりで手を拭く。居酒屋の隅っこの席、うるさいはずの店内がやけに静かに感じる。「俺、ずっと〇〇のことが好き」〇〇は?机の上の手をそっと上から握られる。動揺がきっと手から伝わってしまっているに違いない。ふっと笑うしめちゃん。
2018-12-23 17:16:24