アルター・オブ・マッポーカリプス #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

既にシトカの空に超自然のオーロラは無かった。しかし、空を見上げたものは、それ以上に恐るべきものを見……正気を失った。ゴーン・ゴーン・ゴーン。鐘めいた音が反響する空は黄色かった。空を染めるのは太陽ではない。太陽はタイ・ジイの影に過ぎない。黄金立方体が輝いている。その光だ。 1

2018-11-27 21:31:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

黄金立方体から横へ伸び……曲がりくねって、少しずつ、少しずつ下降する道は、大いなるものたちの為の道だった。ダイミョ行列、ヒャッキ・ヤギョ、ワイルドハント……。それはモータルが正視してはならぬ圧倒的な事象である。すなわち、リアルニンジャの行進である。 2

2018-11-27 21:33:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

行列の先頭をゆく矮躯の存在は片手にチョウチンを掲げ、片手に鈴を持って、「エイッ!エイッ!火の用心!」と叫んでいる。これはセンド・ニンジャ。ヒャッキ・ヤギョの先頭をゆくのは常にこの者である。その少し後に、さらなるリアルニンジャ達が連なる。 3

2018-11-27 21:36:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャ装束とニンジャ頭巾を身に着けた彼らの姿は人に近い。その身体が極めて大きい者も居れば、モータルと変わらぬ者もいる。角を生やした者、長い手で奇妙な印を描く者、ケラケラと笑う者。ヤイバ・ニンジャ。アラシ・ニンジャ。クロヤギ・ニンジャ。サナダ・ニンジャ。パズズ・ニンジャ。 4

2018-11-27 21:38:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

徒歩の者がほとんどだが、なかには馬上の者、牛車にひかせる者もある。どれも邪悪である。「アイエエエアバーッ!」不運にもその行進を目にした地上のシトカ市民が激しい悲鳴をあげて痙攣し、倒れ、笑い、動かなくなった。死んだのだ。正視してはならぬ。 5

2018-11-27 21:40:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」「アババババーッ!」連鎖的にその付近の者達が狂死した。「MWAHAHA……BWAHAHAHAHAHA!」そこに混じったのは、明らかに尋常ではない周波数の笑い声である。その笑いには力があった。荒涼とした砂漠の色のマントを風になびかせ、サツガイは悠然と市街に歩を進めた。 6

2018-11-27 21:42:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

砂漠色のフードの下は闇であり、そこに宇宙めいて無限の星々が瞬いている。「BWAHAHAHAHAHA!」笑いながらサツガイが行き過ぎると……「アイエッ!アイエエエ!」「ニンジャナンデ!」「ニンジャ、ナンデ!」その付近にいたモータルはニンジャ頭巾と装束を纏い、その場でセイケン・ツキを始めた。 7

2018-11-27 21:44:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」路上や家の中から聞こえるセイケン・ツキのカラテシャウトに包まれ、サツガイは異常な空を振り返った。彼は笑い続けた。もはや待ったなしとなったヒャッキ・ヤギョの地上到達に、心躍らせているようだった。 8

2018-11-27 21:47:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アルター・オブ・マッポーカリプス】#1

2018-11-27 21:48:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ……!」シンウインターとスーサイドのカラテは逸れた。サツバツナイトとザルニーツァも、たたらを踏んだ。彼らのニューロンに、鮮明に、シトカの光景の幻視があった。何が起ころうとしているか、理解はできずとも、わかった。破滅である。 9

2018-11-27 21:55:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんだ……コイツは……!」スーサイドはシンウインターを睨んだ。「テメェか!テメェ、シトカを……どうするつもりだ!」見返すシンウインターの瞳は凪いでおり、虚無的だった。「シトカは俺のものだ。そこでサツガイを少し遊ばせてやる。ギブ・アンド・テイクというものだ……」「テメェーッ!」10

2018-11-27 21:58:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スーサイドの拳を、シンウインターは止めた。スーサイドは逆の手で殴りつけた。「イヤーッ!」「ヌウーッ!」拳が届いた。シンウインターは踏みとどまる。彼はオーロラの力を用いるべきか逡巡していた。オーロラは今、槍と化して赤黒の鬼を貫き、氷の上に縫い留めていた。 11

2018-11-27 22:03:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ググググ……ググググググ……!」仰向けに縫い留められたニンジャスレイヤーは目を見開き、唸りをあげた。メンポが軋んだ。「ニンジャ……殺すべし……!」槍からオーロラが溶け出し、身じろぎするニンジャスレイヤーを苛み、抑えつける。万色の炎が! 12

2018-11-27 22:07:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ナラク……ナラク!)マスラダはニューロンの同居者に叫んだ。ナラク・ニンジャを通して、流れ込んでくるものがあった。ニューロンに明滅するシトカの姿。そして空を渡りくるリアルニンジャ達。サツガイ……サツガイ……!(AAAARGH……!)幻視とともに流れ込んでくるのは、声なき怨嗟だった。13

2018-11-27 22:09:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ニンジャ……ニンジャ)(ニンジャ……)(ニンジャ……!)嵐めいて、無数の意識がマスラダの周囲に渦巻いていた。それはシトカという街に堆積する、ニンジャへの憎悪、理不尽への憎悪だ。原型を留めぬ、マグマじみて融解した感情の力だ。マスラダは慄く。濁流にチョップを突き立てようとする。14

2018-11-27 22:13:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サツガイ……サツガイ……!」マスラダは繰り返した。「……サツガイ……!」脳裏に閃くのは砂色のマントの姿!哄笑し、シトカの街を闊歩する!上空に列を為すリアルニンジャ!「……サツガイ……!」(殺すべし……ニンジャ殺すべし……!)「……サツガイ!」 15

2018-11-27 22:17:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて、ニンジャスレイヤーを包む万色の炎に異変が生じた。黒い。赤黒の火が混じり始めた。それはニンジャスレイヤー自身の中から湧き出した火だ。火はそれ自体が意志を持ち、オーロラをじわじわと浸食しはじめた。当然シンウインターはその異変を感じ取った。 16

2018-11-27 22:25:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ム……」シンウインターは眉根を寄せた。そこにスーサイドの拳が!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」シンウインターは後退する!スーサイドが腕に巻いた鎖は白く輝き、その一打ごとに、シンウインターのカラテを削っていた。牙を抜き、「わからせた」筈の相手だった。 17

2018-11-27 22:28:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「生まれは……キョート」スーサイドは呟いた。「棲家はシトカ」垂れた鎖を、腕の一振りで強く締め付ける。白く光る。「忘れた事はねえ。テメェがやった事はよ」彼は言った。「ヘイゼル。ヤン。忘れた事はねえよ」「何の事だったかな」シンウインターは不敵に返した。「到底思い出せんなあ」 18

2018-11-27 22:34:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「構わねえ……俺の問題だ!」スーサイドは叫んだ。そして殴りつける!「イヤーッ!」「イヤーッ!」シンウインターは弾き返した!「調子に乗るなよ……チンピラごときが……!」彼の身体にオーロラが再び燃え始めた。ニンジャスレイヤーから呼び戻している!「イヤーッ!」打ち下ろすチョップ! 19

2018-11-27 22:42:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」スーサイドは鎖を張ってチョップを受けた。カラテを吸い取る!だがシンウインターの決断的チョップは止まらず!万色のチョップは鎖を断ち、スーサイドの左肩に突き刺さった!「グワーッ!」膝をつく!シンウインターはチョップを抜き、水平に構えた。ボトルネックカットチョップ! 20

2018-11-27 22:44:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」首を刎ねる無慈悲なチョップは出がかりで止まった。手首に荊めいて絡みつくのはクナイの乱れ生えた鞭。鞭の延びた先には新たなニンジャの姿があった。「ドーモ。ガーランドです」クロスカタナのニンジャは無感情にアイサツした。「最後にトドメを頂こうと思っていたが、無理のようだ」21

2018-11-27 22:49:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ソウカイ・シンジケート」シンウインターは呟いた。「二対一……いや」彼はニンジャスレイヤーのもとへ向かうサツバツナイトを目で追った。シンウインターは瞬時に状況判断した。もっとも警戒すべきニンジャスレイヤーに何らかのカバーを行おうとする動きは阻止せねばならぬ。「三対一。よかろう」22

2018-11-27 22:53:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シンウインターの目が輝き、周囲にオーロラの障壁が生まれた。スーサイド、ガーランド、サツバツナイトは障壁の内側へ取り込まれた。「ヌウッ……」サツバツナイトはたたらを踏む。シンウインターを睨む。シンウインターは睨み返す。「なにか企んでいたか?いかんな」 23

2018-11-27 22:54:58