稲川淳二の『つぶやき怪談』(2018.11.26)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、グッと、手の先に、 妙なものがさわる感触があったんで、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（えぇ、何っ？）と思った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、まあ、早く布団も敷きたいんで、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

眠いですからね、 また、もう１回、手を伸ばした。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それで布団、掴んで、 引っぱっろうと思って、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ガッと掴んだ瞬間に、 タマコさん、すごく驚いた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

タマコさんが、引っぱってた、 それね、 布団じゃないんだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それ、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

髪の毛の生えた、人の頭だったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うわ～～～～！」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と思って慌てて戻した。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

戻したけど、恐くてしょうがないから、 立ったまんま、押し入れの前でもって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

貼りついたようになった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、布団が勝手に、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ズズズズ、ズ～～、 ズズ～～、ドン、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と足下に落っこった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

タマコさん 「うぅわ～～」と思った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

自分は、ぴーんと立ったまんま、 目を見開いて、ジィーッと見てる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

体が固まって動けない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

暗い押入の奥、 その奥から、女がジーッと見てる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

べしゃっと、濡れた髪の毛が、 顔に貼りついている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

白い顔。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

濡れた黒い髪の毛の間から、 ふたつの目が、ジーッと自分を見てる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

タマコさんは、もう、恐怖でもって、 声も出ない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その女は、 ズルズーズー、 とだんだん寄ってくる。