石塚潤一「黛敏郎の〈涅槃交響曲〉について」

石塚潤一「黛敏郎の〈涅槃交響曲〉について」のツイートのまとめ   『石塚潤一講演会』講義の概要 (3/24 夕方の部) http://buncademy.co.jp/wordpress/?page_id=2483 • 日時:2019年3月24日(日)開演 17時 続きを読む
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『石塚潤一講演会』講義の概要 (3/24 夕方の部) |
http://buncademy.co.jp/wordpress/?page_id=2483
◆ 日時: 2019年3月24日(日)
◆ 場所: 両国門天ホール

https://www.facebook.com/events/423994461682362/

石塚潤一 @jishizuka

3月24日にbuncademy主催の講演会で、黛敏郎の《涅槃交響曲》を中心とした音響解析の話をします。中核は、黛が《涅槃》の作曲においてどこまで音響解析の結果を援用できたのか/できなかったのか、できなかったとしたら《涅槃》の音高組織とは何なのか、と掘り下げていきます。facebook.com/junichi.ishizu…

2019-02-23 11:59:32

https://www.facebook.com/junichi.ishizuka/posts/2197771540284293
『…具体的な記事を素直に読むならば、黛敏郎は≪涅槃交響曲≫作曲において、梵鐘の音響解析を行いはした、が、決して有意な結果を得られていない、、ということになる。

加えて、音響解析に必要なフーリエ解析のアルゴリズムに必要な計算量と当時のコンピューターの演算速度を考慮するなら、上記の記事には相当の説得力がある。

しかしながら、一方で、黛が涅槃交響曲作曲の下敷きとした音響解析の結果(とされるもの)もまた存在する。果たして、涅槃交響曲作曲に音響解析の結果は援用されたのか、されなかったのか。

本講演では、フーリエ解析のアルゴリズム、コンピューター発達史を踏まえつつ、黛のスケッチを含めた当時の資料を再検討し、≪涅槃交響曲≫とは究極何物なのか、を突き詰めていきたいと考えている…』

石塚潤一 @jishizuka

そういえば、24日に黛敏郎の《涅槃交響曲》について講演します。2011年に「黛敏郎の電子音楽」へ寄稿した際、もろもろ調査したことから、《涅槃交響曲》の作曲において、黛らは音響解析を出来ていなかったんではないか、という疑念をもっておりましたが、この件について、

2019-03-12 02:08:29
石塚潤一 @jishizuka

近代音楽館の資料を参照したら、八木秀次が編集した「音響科学」の中の、山下敬治(1899-1969)による一章にある、梵鐘の部分音の分析結果をほぼそのまま使用していることがわかりました。が、この件については、高倉優理子さんという若手音楽学者がすでに突き止めているそうです。

2019-03-12 02:15:58
石塚潤一 @jishizuka

ただ、この「音響科学」の山下担当部分、コンピューター発達以前(つまり、フーリエ解析における係数を数値積分できる前)の音響解析の方法がいろいろ説明してあって面白い。これを概観するのも興味深いことになるかと思いますし、肝心の音響解析の結果や推論についても、

2019-03-12 02:19:53
石塚潤一 @jishizuka

ちょっと突っ込みたくなるところがいろいろある。そうした微妙な記述が涅槃以後の黛に影響してしまったところもあって、その辺りを説明していくのも面白かろう、と。

2019-03-12 02:22:33
石塚潤一 @jishizuka

八木秀次(もちろん、八木アンテナであまりにも有名な工学者の方ね):編の「音響科学」は、「日本の古本屋」に出ていたのを注文した。黛が参照したのは、1948年出版の第二版、私が購入したのは、1939年に出た初版の増刷分(1940)。

2019-03-12 02:30:27
石塚潤一 @jishizuka

涅槃交響曲に援用された梵鐘の部分音の解析は、1930年代に京都大学の研究チームが行ったものなので。だから、ここで登場する梵鐘がことごとく京都のお寺のものなのです(東大寺のものも入ってますが、これについては講演で語ります)。

2019-03-12 02:34:05
石塚潤一 @jishizuka

微妙なところの一つを挙げると、6つの梵鐘、3つの半鐘についての部分音の周波数を調べ、第5倍音を基準として比系列をとっているが、それらを平均したりしている。一つ一つの形状や大きさ、厚さの違いが、個性的な倍音構造に結実しているのに、それらを平均して何がわかるねん。

2019-03-12 02:43:23
石塚潤一 @jishizuka

涅槃交響曲のネタ本届きました。 pic.twitter.com/OLAVHFEeMJ

2019-03-12 11:20:28
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石塚潤一 @jishizuka

2011年の初夏に執筆した「黛敏郎の電子音楽」への寄稿にて、「電子音楽に関連して黛の業績を評価する上で最も重要なことは、彼が音現象の動的な挙動に意識的にコミットした、ほとんど最初の作曲家だということだ」と書きましたが、涅槃交響曲という作品についての評価も究極この辺りに落ち着くかと。

2019-03-12 11:35:54
石塚潤一 @jishizuka

しかし、この山下氏の論考、単純な比の計算が有効数字2桁目で間違えていたりして、第2版でも直っていなかったりする。電子計算機がない時代の苦労がしのばれます。部分音(倍音)の音程の計算も、いまではエクセルの関数を使って10分ほどで出来てしまうが、昔は対数計算はそう簡単ではなかったろう。

2019-03-12 11:46:52
石塚潤一 @jishizuka

涅槃交響曲の分析をするはずが、パソコンにgnuplotなどインストールして、黛敏郎が元ネタにした、山下敬治の実験結果をいろいろ検討しているところ。山下は著書の中で、梵鐘の倍音構造について(自分のものではない)ちょっと歪な知見を紹介しており、黛はよりによってその最も歪な知見に傾倒していく

2019-03-13 23:30:24
石塚潤一 @jishizuka

黛敏郎が「涅槃交響曲」のネタ元にした、京都の音響物理学者:山下敬治らが戦前に行った分析結果(部分音/倍音のみ)から、音程へと翻訳する作業をしてみた。1950年代の黛は、対数計算を行える計算機をもたず、対数軸へのプロットも行っていないので、結果として何か所か音名を間違えている。 pic.twitter.com/w3whJLGoPP

2019-03-18 16:20:05
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石塚潤一 @jishizuka

黛が涅槃に使用した10の和音で、総計10か所に正確でない音名が与えられている感じ。どうしてこのようなことになったのかは、24日の講演で詳説する。ただし、これを正しい音程に直すことが、どれだけ意味のあることかは別問題だが、コンピューターの発展以前の人間の苦闘は伺える。

2019-03-18 16:22:49
石塚潤一 @jishizuka

涅槃交響曲の音響解析の元ネタが山下敬治の解説であることを突き止めた高倉優理子氏の論文も見つけてきました。うーん。この方はどうして、周波数が顕に記載されているのに、対数計算を行ってみなかったんだろうか。エクセルで30分で出来るのに。そのため、推論が完全に逆になっているところが一つ。

2019-03-18 16:26:36
石塚潤一 @jishizuka

1957年当時の黛は、対数計算はおろか、2の24乗根を計算できる機械もおそらく持っていなかった。よって、12音平均律メッシュで切られた音程表をもとに、これよりやや下、やや上、1/8くらい上?といった具合に音程を推定していったと思われる。結果、対数での計算と整合するところと、そうでない箇所が

2019-03-18 16:30:56
石塚潤一 @jishizuka

あるように見受けられる。

2019-03-18 16:39:29
石塚潤一 @jishizuka

結果、黛敏郎はスペクトル楽派の先駆なのか?といわれれば、そうではない。という評価を下さざるをえない。梵鐘の部分音/倍音の周波数を把握し、それをもとに音高構造を作ってはいるけど、「スペクトル」(が何を意味するかはフーリエ解析の知識が必要。24日に解説する)は求められていないからね。

2019-03-18 16:46:57
石塚潤一 @jishizuka

パイプオルガンの奏者が、音栓の組み合わせによって、すごく変な倍音をだしているのに似ているかもしれない。ただ、それで何が悪い、という考え方ももちろんあるだろう。

2019-03-18 16:48:51
石塚潤一 @jishizuka

24日の講演は、両国門天ホールで星谷丈生、近藤譲の両氏に続いて行います。星谷さんは、山田耕筰以来、日本で書かれた作曲教本をいろいろ集めていて、その記述がいかに変化していったのかを概観するそう。こういうのにはキワもの的書籍があったりするものなので、たぶんいろいろ面白い。11時から。

2019-03-18 16:56:09
石塚潤一 @jishizuka

で、14時からが近藤譲がトム・ジョンソンについて語る会。で、17時からが私の講義。音響合成や音の諸々の性質を概観していく中で、黛敏郎の涅槃を位置づけるような講演にしようと思ったのだけど、宣伝では涅槃が第一に推されているようで。facebook.com/events/4239944…

2019-03-18 16:58:40
石塚潤一 @jishizuka

妙心寺の第3部分音Eになってる(私の対数計算)。これはFです。直したはずなのに直ってない。。。

2019-03-18 19:30:16