ギア・ウィッチクラフト #1
「やれやれ、いきりたっておるな、かなわんぞ」コルヴェットはゆっくりと身を起こし、スキットルの酒を含んだ。他人事のように呟いた彼だが、実際彼はこのシュヴァルツヴァルトの木々の闇に身を潜め、石碑レリックを荒らすカタナ社の部隊を攪乱し続けていた。 24
2019-04-20 23:38:29彼自身、森の中にいくつのレリック・オジゾウが隠されているものやら、全てを把握しきっているわけでもない。守るべきもの……すなわちカタナ社が本格的に暴こうとしている最大の遺跡の詳細すら完全にわかってはいない状況だ。曖昧で朧な冒険行。「これも惚れた弱みというものよ」彼は独り言ちた。 25
2019-04-20 23:42:29……(デジ・プラーグが、極めて不安定な状態になりかかっている)ジプシー・ウィッチ・ギルド「無限遠」の長は、コルヴェットに内密な願いを託した。(大まかな座標はすぐに判明した。シュヴァルツヴァルトの「ギンカク」が何らかの物理的な接触を受けている)(ギンカクと言ったかね?) 26
2019-04-20 23:47:20(ご存知?)ギルド長のルツィエはコルヴェットを見たが、コルヴェットは首を横に振った。(否、知っていたとしても曖昧な記憶よ。どこで聞いたかも、とんと思い出せぬな。詩情をそそる名ではある。それが大いなる電子魔術と繋がっておると?)(ええ……そういう事になる) 27
2019-04-20 23:51:09ルツィエは深刻な表情で思いを巡らせた。(ギンカクは極めて強大な……凄まじい質量を抱えた存在。その性質はオヒガンを揺らがしかねないもの。それゆえに太古の昔から秘されてきた。私自身もその所在地は知らずにいた……それがEURO戦闘領域に、よりによって) 28
2019-04-20 23:55:33(状況を考えるに、呑気な戦争で新型ロケットが着弾でもして、暴かれたとでも言ったところか)(考えたくはないけれど、放置はできない)ルツィエは言った。(何が起こるかすら、はっきりとは示せない。デジ・プラーグに発生している障害からも、到底楽観視はできない……) 29
2019-04-20 23:58:15よかろう、任せておけ!コルヴェットは二つ返事で引き受けた。まずは一体全体何事が現地で起こっておるか、この俺がしっかりと見定めてこようではないか!そして彼は……「アイエエエエエ!?」悲鳴!それは先程の追手が去っていった方角からだった。コルヴェットは逡巡ののち、そちらへ向かった。 30
2019-04-21 00:00:16「アイエエエ!」「グワーッ!」「アバーッ!?」BRATATATATA!BRATATATATA!霧を通し、カタナ・トルーパーの影たちが慄き、後退と発砲を繰り返していた。「おのれ、まじない師め!」「許さんぞ!」罵りが聞こえて来た。コルヴェットは木に背をつけ、唾を呑んだ。(……否、濡れ衣だぞ、それは!) 31
2019-04-21 00:02:00「AAAAARGH……!」地鳴りめいた唸り声とともに、恐るべき長身の存在が進み出る。霧を透かして、彼は見た。えらく時代がかった甲冑だ。それが体格にあまりに見合った大剣を振り上げては振り下ろし、恐慌状態で発砲するトルーパーを斬り伏せてゆく!「イヤーッ!」「アバーッ!」「アババーッ!」 32
2019-04-21 00:07:51「……いかんぞ、これは」コルヴェットは唇を舐め、後ずさった。スキットルの酒を更に飲み、カゼのジツを備える。カゼの分派ローグニンジャ・クランのニンジャソウル憑依者である彼はサケのエテルの力を借り、様々な超常の力を操る。だがそれらの力は暴力に向かないものが殆どだ。 33
2019-04-21 00:10:57あの怪異、間違いなくこの辺りに目指すレリックが存在する証左。しかし無計画に進めばあのトルーパーと同じ目に遭う事は……「AAAARGH……!」コルヴェットは立ち止まり、背後を振り向く。ナムサン。直立するマクシミリアン甲冑のケンドー・オートマトンが、彼を見下ろしていた。 34
2019-04-21 00:13:44「イヤーッ!」ケンドー・オートマトンは大剣を振り下ろす!コルヴェットは帽子を手で押さえながら咄嗟の横転で回避!「イヤーッ!」薙ぎ払い!コルヴェットは上へ跳ね、枝を掴んだ!「SHHHHH……!」冷たい鎧の内から殺意を漲らせ、オートマトンが着実に接近する!コルヴェットは樹上を見る……。 35
2019-04-21 00:15:38枝の上の霧が濃い。そこだけ濃い。……否。コルヴェットは目を見開いた。枝の上に存在する「それ」は身を屈めてコルヴェットに顔を近づけた。霧は骸骨めいた顔を垣間見せた。そこに無限の狂気が宿っている……!もはや待ったなし!「イヤーッ!」コルヴェットはカゼを呼び、飛び込んだ! 36
2019-04-21 00:17:52ゴロゴロと転がり、着地した彼は、まだほど近い場所にオートマトンたちの唸り声を聞く。一度のジャンプでは足りぬ!彼はサケを更に呷り、再度のジャンプを試みた。「イヤーッ!」 37
2019-04-21 00:19:04風を抜け、空中に出現した彼は、枝を破壊しながら落下した。かろうじて受け身をとった彼は胸を押さえた。せり上がる悪寒!「オゴッ……オゴゴゴーッ!」嘔吐!ナムサン、これが酒のエテルがもたらす大きなデメリットだ。その場で嘔吐しながら、彼は敵が追いつかぬ事を必死で祈った!……「おい」 38
2019-04-21 00:21:20声の主は女だった。コルヴェットは四つん這いで顔をあげ、口を拭った。眼前に立っているのはプラチナブロンドの髪を長く伸ばした女だった。「違うぞ」言い訳が反射的に口を突いて出かかる。「違う、これはな……」そこで彼は我に返り、バック転を打った。「イヤーッ!」 39
2019-04-21 00:23:39女は身構えた。コルヴェットはそのカラテの充実を敏感に感じ取り、着地と同時に先手を打ってアイサツを繰り出した。「ドーモ。はじめまして。コルヴェットです」相手のニンジャはコルヴェットの身なりを観察し、訝しげに眉を動かした。そしてアイサツを返した。「ドーモ。フェイタルです」 40
2019-04-21 00:25:48