どろろが打ち切られた理由についての私見

2019年に平成と令和をまたぐ形で、実に50年ぶりに再アニメ化された手塚治虫原作「どろろ」。 どろろの原作漫画は通説では人気が無くて連載が打ち切られたと言われている。あれほどに魅力に溢れた手塚漫画が何故?書籍から読み解いて見る。
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紅葉倫子 @rinkomomiji

どろろはなぜ打ち切りでもって連載を終了したのか。 この誰しもが一度は抱く疑問について自分なりに手持ちの書籍らから考察して見ました。

2019-05-16 11:11:40
紅葉倫子 @rinkomomiji

どろろは 昭和42年8月27日号~昭和43年7月21日号まで週間少年サンデーで連載。1) 昭和44年5月号~10月号まで月刊誌である冒険王に連載されていた。。 上記二種類の連載が存在しますが、いずれも打ち切りというか中途半端なところで終わっています。

2019-05-16 11:12:01
紅葉倫子 @rinkomomiji

①手塚先生のインタビューや作品への記述から読み解く 1)講談社発行、手塚治虫漫画全集どろろ4のあとがきには 最初の10回くらいは本気で乗って描いていたが、回を進めるうちにムードが暗くなり、まいまいおんばの巻からは生臭さも加わり、また新連載も始まって意欲が半減し、編集部の要請もあり

2019-05-16 11:12:39
紅葉倫子 @rinkomomiji

急遽終わらせた、と少年サンデー版での終了に関してのコメントが掲載されている。 また1969年のモノクロのアニメ版についてもカラーで出来なくて残念、視聴率が悪くて打ち切られた、と述べられている。2)

2019-05-16 11:13:08
紅葉倫子 @rinkomomiji

2)1984年NHK―FM「FMホットライン」でのどろろに関しての発言の抜粋要約。3) ・劇画ブームに押され、だんだん低迷していく中、どろろになりバンパイヤになり、壁にぶつかってしまった。

2019-05-16 11:17:40
紅葉倫子 @rinkomomiji

・安保闘争で白戸三平が読み出され大学生が漫画を読むようになった頃には、手塚ヒューマニズムは全部終わったと言われていた。 ・なので逆に悪に向かって子供漫画を切り替えようと、「どろろ」「バンパイヤ」を描いた。しかし一部の批評家から手塚のマンガが汚くなったといわれ、迷うようになった。

2019-05-16 11:18:03
紅葉倫子 @rinkomomiji

・普段は砂糖を混ぜて漫画を見せているが、それが狂うと「どろろ」みたいに途中から急に生臭くなってしまう。編集長が生臭いとすごく怒ってしまい、打ち切られた。

2019-05-16 11:18:20
紅葉倫子 @rinkomomiji

②手塚プロやファンからの印象やコメント。 1)実写版どろろムックより、当時の手塚プロダクション資料室室長森晴行氏のコメント4) ・週間少年サンデーの連載は物語の途中で終わっており、先生自身の意図したものではなかった。

2019-05-16 11:21:04
紅葉倫子 @rinkomomiji

・一般的に言われているのは人気が無かったために編集部からの要請で終わらせただが、実際は違う。 ・連載開始からしばらくは週間少年サンデーでは人気は上位であったと思われる。その証拠にどろろはよく倍増ページを組まれていた。

2019-05-16 11:21:25
紅葉倫子 @rinkomomiji

また、連載中にほぼまるごと一冊「どろろ」の別冊少年サンデーというものが出たくらいで、当時としては破格の扱いであったと推察される。 ・元々は作者の意気込みも強く、恐怖三部作のひとつとして捉えていた。5)それぐらいきちんと纏めようと考えて当初は作られたものだった。

2019-05-16 11:21:51
紅葉倫子 @rinkomomiji

・しかしノーマンだけでなく、月刊誌8本、週刊誌3本、毎日連載される新聞1本6)というめちゃくちゃな連載量だったため、手塚先生の悪いクセで途中からだれてきてしまい、それに伴い人気も下降していった。そういう状況もあり、編集部との話し合いで連載は終了したのではないか。

2019-05-16 11:22:09
紅葉倫子 @rinkomomiji

・アニメ化に伴い冒険王7)にて連載は再開されたが、結局アニメの終了に合わせて、あっさりと終わらせることになってしまった。 ・しかし森氏はよく言われる未完の作品というものではなく、先生にはそれ以上の続編の構想はなかったのではないか、と述べている。

2019-05-16 11:22:24
紅葉倫子 @rinkomomiji

2)1990年代前半、実相寺監督による実写版「どろろ」の企画が幻となった経緯から見えたもの。8) ・企画が固まり、原作の映像化権の確保のため企画者側が手塚プロを訪れたところ、「他はともかくどろろだけは勘弁してくれ」といわれ、断られた。

2019-05-16 11:23:15
紅葉倫子 @rinkomomiji

・その理由は、「手塚の側に障碍者を揶揄する気持ちが無くとも、受けて側の読者はあまり快く思えず、連載当初からクレームが作者の元に送られてきていた。漫画やアニメが中断したり未完に終わっているのは手塚の精神状態がその抗議に対して耐えられなかったのではと言われていた」というものであった。

2019-05-16 11:24:21
紅葉倫子 @rinkomomiji

まとめ ①②を考えるに、打ち切りの背景は通説になっている「人気がなかった」という単純な理由のものではなく、複雑な問題であったことが推測される。

2019-05-16 11:24:50
紅葉倫子 @rinkomomiji

また論叢を寄稿された東森氏からの情報によると当時の手塚治虫への抗議活動は内容を伴うものからそうでないものまであり、一言ではいえない状況であったという。9)

2019-05-16 11:25:19
紅葉倫子 @rinkomomiji

当時の手塚漫画への強い抗議行動、障害者を差別しているのではないかというクレーム、同時に進行している作品群への情熱の分散、また編集部からのクレーム、それらが複雑に絡み合い、連載は終了されたものだと、私は考える。

2019-05-16 11:25:28

以下、脚注

紅葉倫子 @rinkomomiji

1)ちなみに少年サンデー版は無情岬の巻で連載は終了している。 2)1969年版アニメどろろDVDBOXの解説書によると、監督の杉井ギサブロー氏によると、モノクロにした理由は上記とは異なる理由だった。

2019-05-16 11:30:37
紅葉倫子 @rinkomomiji

スポンサーから食事時に赤い血がバーと流れるのはどうかと指摘を受け、人を斬れば血が出るのだから、それならモノクロにしたら文句がないでしょ、とむしろ喜んでモノクロアニメにしたと、氏は語っている。 pic.twitter.com/LaUiKqXW9f

2019-05-16 11:31:08
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紅葉倫子 @rinkomomiji

3)SIGHT VOL15、SPRRING 2003 何故手塚治虫はアトムが嫌いだったのか より。 4) どろろ完全図絵 メディアファクトリー 2007.1.13発行 pic.twitter.com/jdgSh0W5Sm

2019-05-16 11:32:29
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紅葉倫子 @rinkomomiji

5)現代がバンパイヤ、過去がどろろ、未来がノーマンではないかといわれていたが結局は描かれなかったのではないかというのが通説。

2019-05-16 11:32:57
紅葉倫子 @rinkomomiji

6)「鉄腕アトム」「アトム今昔物語」「人間ども集まれ!」「ガムガムパンチ」「シャミー1000」「八丁池のゴロ」「グランドール」「ノーマン」「ブルンガ一世」「地球を飲む」「火の鳥」tezukaosamu.net/jp/manga/chron… pic.twitter.com/h3UfplaNJs

2019-05-16 11:33:41
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紅葉倫子 @rinkomomiji

7)当時少年サンデー連載分のものは単行本化されていなかった。冒険王ではその続きというわけではなく、新たに設定を代えて、もう一度描き起こされている。今現在読めるものはそこから台詞や場面をサンデー版の設定にあうように作者自身の手により編集・修正されたものである。 pic.twitter.com/hLsK6tzQ2O

2019-05-16 11:37:14
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