仮説:東アジアに起源を有するBKウイルスⅣ型はデニソワ人から伝播した。

最近、現生人類の祖先と旧人類(ネアンデルタール人やデニソワ人など)の間で異種交配が行われていたことが明らかになった。異種交配が行われるほど現生人類の祖先と旧人類とが親密に接していたなら、旧人類に感染していたウイルスが現生人類の祖先に伝播したかもしれない。実は、私たちはその可能性があるウイルスを13年前に見つけていた。
考古学 ネアンデルタール人 JCウイルス デニソワ人 現生人類 人類移動 BKウイルス 旧人類 ポリオーマウイルス 人類学
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ヨゴウヨシアキ @8cMdsPWeMctZl4J
【はじめに】今から約6万年前、現生人類の祖先はアフリカを出てヨーロッパやアジアに向かった。当時ヨーロッパやアジアには今や地球上から姿を消した旧人類(ネアンデルタール人、デニソワ人など)が住んでいた。現生人類の祖先はこれらの旧人類に遭遇し、彼らとの闘いが起きた。旧人類は負かれて、
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ヨーロッパやアジアから一掃された―これが以前の考え方であった。ところが、発掘された太古の人類の骨や歯などに残存する遺伝子を抽出し、解析する技術が進歩したため、現生人類の祖先は旧人類と異種交配していたという驚くべきことが発見された。組み込まれた旧人類の遺伝子断片は代々受け継がれ、今
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生きている現生人類からも検出される(添付した5月6日付の『しんぶん赤旗』科学欄を参照)。もし現生人類の祖先と旧人類とが異種交配するほど親密に接していたなら、旧人類に感染していたウイルスが現生人類の祖先に伝播することがあったかもしれない。そのようなウイルスが現生人類の子孫へと代々 pic.twitter.com/DKEU4thWgB
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伝播した可能性が考えられる。実は、私たちはその可能性があるウイルスを13年前に見つけていた。そのウイルスはBKウイルスⅣ型である。【BKウイルスとは】BKウイルスはDNAウイルスで、ポリオーマウイルス科に属す。この科のウイルスは宿主特異性が高く、BKウイルスは自然界ではヒトにのみ感染する。
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大部分のヒトは子供の時にBKウイルスに感染するが、多くの場合無症状である。その後腎尿路系の上皮細胞に寄生する。寄生したウイルスは通常病気を起こさない。免疫抑制剤が投与される腎移植患者ではBKウイルス腎症が起きることがある。なお、ヒト集団の成り立ちの解析に役立つウイルスとして、以前紹介
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したJCウイルスはBKウイルスに近縁である。【BKウイルスの疫学】BKウイルスは抗原性の違いで4つの型(I型~IV型)に分かれる。世界各地における4型の分布割合を図1に示した。➀I型はアフリカを始め世界各地に分布する。『アフリカに誕生した現生人類は元々I型に感染していた。現生人類がアフリカを pic.twitter.com/O6q1m9vOFW
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出た後、I型は現生人類と共に世界中に拡散した。』と考えられている。②II型とIII型はどの地域でも検出率が低い。遺伝子の解析から両型は一つのグループを形成することが最近わかった。③IV型はアフリカではわずかしか検出されず、東アジア全域とヨーロッパの一部(北部と南西部)で高率に検出される。
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【IV型の起源】上述のようなBKウイルスIV型の偏った地理的分布を説明するため『BKウイルスIV型は東アジアに起源があり、ヨーロッパのIV型は比較的最近東アジアから伝播した。』という仮説をたてた。この仮説を検討するため、アジアとヨーロッパの各地で得られたBKウイルスⅣ型株の系統解析を行った。
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この解析の手順は以下の通り。①検体尿から遺伝子の実体であるDNAを抽出する。②PCR法でBKウイルスDNAを選択的に増幅する。③DNAの構成単位である4つ塩基ーA、G、T、Cと略名で呼ばれるーの配列を決定する。④決定された塩基配列をウイルス株間で比較し、違いがある箇所を検出。その情報を基に系統樹を
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作成する(④の一連の操作はコンピューターで行う)。得られた系統樹を模式化したものを図2に示した。BKウイルスⅣ型は先ず2つの枝に分かれた。一方の枝からは2つのサブグループ(a1とa2)が分岐し、もう一方の枝からは4つのサブグループ(b1、b2、c1、c2)が分岐した。次に、IV型サブグループの検出比 pic.twitter.com/Z205zm7CU6
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を地域ごとに円グラフで示した(図3)。以下、この図で明らかになった各サブグループの地理的な分布を述べる。①a1は東南アジアと中国南部に分布した。②a2は東南アジア、中国南部、日本(沖縄)に分布した。③b1は日本にのみ分布した。④b2は主に日本と韓国に分布し、一部は中国北部とモンゴルに分布 pic.twitter.com/YobtiAqITg
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した。④c1は中国北部と南部、モンゴル、韓国、東南アジアに分布した。⑤c2はアジアでは主にモンゴルに分布し(一部は中国北部にも分布)、ヨーロッパでは北部と南西部に分布した。このように、東アジアには多様なサブグループが分布しているが、ヨーロッパではc2のみが分布していた。c2が蔓延している
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東アジアの地域は中央アジアのモンゴルであり、人種的にはモンゴル人が多数を占める。モンゴル人は南西ヨーロッパ人や北ヨーロッパ人と密接な接触があったことは歴史的な事実や言語学的な証拠によって示唆されている。したがって、c2は比較的近年にヨーロッパへ移住したモンゴル人からヨーロッパ人へ
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伝播したと考えられる。以上から、BKウイルスⅣ型の起源は東アジアにあったと結論できる。【IV型の拡散】最後に、推定されたBKウイルスIV型サブグループの拡散を地図の上に示す(図4)。BKウイルスIV型の系統樹(図2)は、IV型サブグループには直近の祖先を異にする二つのグループ(東南アジア系と pic.twitter.com/VtB6Xvc3ZT
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東北アジア系)が存在することを示しているので、図4ではこれら各グループの起点を赤色または青色の円で示し、これらの円から伸びる矢印で各サブグループの移動ルートを表した。【まとめ】BKウイルスIV型の起源が東アジアにあることが明らかになった。私たちは『BKウイルスIV型は東アジアに生息して
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いたデニソワ人からアジア人の祖先へ伝播し、アジア人と共に地球上に拡散した。』という仮説をたてた。腎尿路系に寄生しているBKウイルスは、発掘された骨や歯から検出できないので、『旧人類が感染源』という仮説を直接証明することは不可能である。将来、別のウイルスや寄生体がBKウイルスIV型の
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ように旧人類から現生人類へ伝播したことが想定されれば、私たちの説の信憑性が高まる。【補足】本稿の要旨(e-Letter)は以下のサイトで公開されている。science.sciencemag.org/content/358/63… 【謝辞】ご助言を賜った北村唯一、杉本智恵両先生に、記事の転載を快諾して頂いた『しんぶん赤旗』編集部に深謝する。
リンク Science 2 users 12 On the origin of modern humans: Asian perspectives In recent years, there has been increasing focus on the paleoanthropology of Asia, particularly the migration patterns of early modern humans as they spread out of Africa. Bae et al. review the current state of the Late Pleistocene Asian human evolutionar
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【文献】Q. Chen et al., Arch. Virol. 151, 2419 (2006). HY. Zheng et al., Microbes Infect. 9, 204 (2007). Y. Nishimoto et al., J. Mol. Evol. 65, 103 (2007). Y. Yogo et al. Rev. Med. Virol. 19, 185 (2009). S. Zhong et al. Microbiol. Immunol. 53, 266 (2009).

コメント

ヨゴウヨシアキ @8cMdsPWeMctZl4J 2019年6月16日
本まとめの英語版を昨夜投稿しました。タイトルは以下のとおりです。 「Hypothesis: BK virus subtype IV ...」 英文ではより緻密に議論したつもりです。そのため難しくなったか、逆に読みやすくなったか、読者の反応を訊きたいですね。 例えば系統樹(図2)やIV型の起源と拡散を示す図(図4)は更新しました。 両図がシンプルで、美しいのは何故でしょうか。現生人類の歴史の中では、IV型の拡散が新しい出来事であるため、ノイズが少ないのかもしれません。
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