燭へし同棲botログ：振替休日 / 連休最終日

燭へし同棲bot @dousei_skhs

【振替休日 / 連休最終日】 「──ぼちぼち通常運転になるね」 「そうだな」 「よし。お互い頑張っていこう」 「うん」

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世間は先月末から十連休だったらしい。いいなあ。俺たちは違った。連休は連休だったが、俺も光忠も間に仕事が飛び飛びで入ったせいで連続十日もなく、おまけに二人で何日も被らせるのは難しかったのだ。だから、

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「旅行も行こうって言ってたけど、行けなかったね」 「……今は時期ではないということだろう」 「ん」 「また今度、だな」 「はーい……」

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前に言っていた新婚旅行に行けたら、と思っていたのだが、今回は見送ることにした。いいんだ。どうせ行くならもっときちんと計画を立てて行きたいから、俺は別にこの連休に拘らなくてもよかったのだから。……よかったの、だから。

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「……長谷部くん、ちょっとがっかりしてる？」 「は？　え、なんで」 「いや、なんかしょんぼりしてるから」 「……」 「大当たりかな」 「……まあ、」

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さっきのは嘘。その通りだった。十日近い連休が取れたなら、早く旅行に行きたかった。早く済ませたいとかそういうことではなくて、……ただ、柄にもなく楽しみにしているものだから。口には出さなかったけれど、それでも光忠には十分伝わってしまったようだった。

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「ふふ。楽しみにしててくれるんだね」 「それは、……」 「もちろん僕もだよ。嬉しいな」 「……ん」 「せっかく考える時間が増えたんだから、練りに練って行こうね」 「……そうだな」

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がっかりしているのがバレただけでも割と恥ずかしいのだが、光忠はもうこんな俺にも慣れっこだった。俺の頭をぽんぽん撫でて「それまでお仕事頑張ろうねえ」と甘やかす。──そのとき小さく跳ねた俺の肩には、気づかずにいてほしかったのだが。

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「……長谷部くん」 「なんだ」 平静を装って問い返すが、光忠は既に心のうちを読んでいた。 「お休み終わるのさみしい？」 「さ、さみしくはない」 「そう？」 「ただ今回は仕事から離れる時間が比較的長かったから、明けにはどうなっているかと思っ、」 「ああ……さみしくなるのはこっちかな」

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言葉とともに、光忠の手が突然俺の下腹部を優しく撫でた。ぞくっと妙な、しかし慣れた感覚が背筋を走る。するり、するり。まるで中でも確かめるように這い回るそれは、心なしか熱を帯びていた。

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「みつ、ただ」 「二人とも十連休はなかったけど、被ったお休みはいっぱいしたもんねえ」 「っ、そういうことは」 「言うなって？　……やだ」 「なんで……っ」 「長谷部くんが可愛いから」

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ごめんね、なんて口だけの謝罪をして、光忠はいよいよ本格的に身体を乗り出してきた。まずい、まずいぞ。ここはリビングだ。ソファの上だ。せめて寝室まで待てないのか。何とか制止をかけようと、俺は光忠の服の裾をギリッと引っ張った。

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「そうだ！」 「あ、？」 「長谷部くんにいいお知らせがあります」 「何だ」 「僕、明日もお休みなんだ」 「……そうか」 「そして長谷部くん」 「……」 「──君も明日、お休みだよね？」 「……」

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世の中には振替休日というものがある。世間では昨日がそれにあたったらしいが、俺も光忠も連休中に休日出勤をしている。明日はお互いその振り替えだった。一緒に暮らしているのだから、互いの休みを把握しているのは何も不思議ではないが、今回の光忠についてはどう考えても……

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「……さて、お喋りはこの辺にしようかな」 「ひっ」 もたついている間に、悔しいが俺よりも逞しい腕で檻を作られる。ああほらまずい。逃げるタイミングを完全に逸してしまった。影が被さる。体温が、香りが、俺の身体にのしかかる。

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「連休最後、楽しもうね。長谷部くん」 語尾にハートマークでもつきそうだ。そう思えるほど甘ったるく告げたあと、光忠はふわりと笑った。 【了】

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【管理人より】令和初のSS更新、お付き合いくださりありがとうございました。まさかの午前一時です。申し訳ございません。大型連休を終えられた方もそうでない方も、明日からまたよい燭へし日和が訪れますように！　お騒がせいたしました。おやすみなさいませ。