【完結】タピの糸
- touzygs_bun
- 2780
- 40
- 0
- 0
@mutekichocoppe @Beatrice_Chat @sid_roid @astoroceles ところがふと気がつきますと、ストローの下の方には、数限りもないタピオカたちがキャッサバの登った後をつけて、まるで数珠の並びのように、やはり上へ上へ一心によじのぼって来るではございませんか。
2019-06-25 21:23:45@TSUNDOKU_Mt @Beatrice_Chat @sid_roid @astoroceles キャッサバはこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、しばらくはただ、莫迦のように大きな口を開いたまま、眼ばかり動かして居りました。自分一人でさえやっと入れるようなこの細いストローが、どうしてあれだけのタピたちの重さに堪える事が出来ましょう。
2019-06-25 21:31:32@mutekichocoppe @TSUNDOKU_Mt @sid_roid @astoroceles もし万一途中で詰まって吹き出されでも致しましたら、折角ここへまで吸われて来たこの肝腎な自分までも、元のタピ地獄へ逆落に落ちてしまわなければなりません。
2019-06-25 21:48:42@astoroceles @Beatrice_Chat @TSUNDOKU_Mt @sid_roid そこでキャッサバは大きな声を出して、「こら、罪タピども。このストローは己のものだぞ。お前たちは一体誰に尋いて吸い込まれてきた。下りろ。下りろ。」と喚きました。
2019-06-25 22:25:57@mutekichocoppe @astoroceles @TSUNDOKU_Mt @sid_roid その途端でございます。今まで何ともなかったストローの上の方からピュッと強い風が吹いて来ましたから、キャッサバもたまりません。 あっと云う間もなく風を受けて、ハッシュタグ付きのツイートの様にくるくるまわりながら、見る見る中にカップの底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。
2019-06-25 22:33:08@astoroceles @mutekichocoppe @TSUNDOKU_Mt @sid_roid ナタデココはインスタ映えするミルクティーのカップふちに立って、この一部始終をじっと見ていらっしゃいましたが、やがてキャッサバが深い深いカップの底へ沈んでしまいますと悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶらと御歩きになり始めました。
2019-06-25 22:44:34@astoroceles @Beatrice_Chat @TSUNDOKU_Mt @sid_roid しかしインスタ映えするミルクティーの池の氷は、少しもそんな事には頓着しません。
2019-06-25 22:51:20@mutekichocoppe @astoroceles @TSUNDOKU_Mt @sid_roid その玉のような美しい氷は、ナタデココの御足のまわりに、ゆらゆらうてなを動かして、そのまん中にある赤いストローから、何とも云えない好いミルクティーの匂いが、絶間なくあたりへ溢れて居ります
2019-06-25 22:56:33@Beatrice_Chat @astoroceles @TSUNDOKU_Mt @sid_roid 原宿竹下通り・表参道沿いももう午近くになったのでございましょう。
2019-06-25 22:59:15@Beatrice_Chat @astoroceles @TSUNDOKU_Mt @sid_roid 完食
2019-06-25 22:59:42タピオカ文学「タピの糸」(芥川龍之介「蜘蛛の糸」より)