【夜、西、ヌナ】福間健二 #k2fact227
割り切れないままで、夜。北福祉館のすりきれた畳の部屋で、服にホコリをつけながら体を整えていると、窓の外、靴音がして、ポールにぶらさがる乾いたホースを片付けにきた人たちだ。銀色で、どこも、だれも、なにも、余りを隠せない。虫が鳴いている。ヌナ、笑ったね。(夜、西、ヌナ1)#k2fact227
2019-06-20 09:37:14二時間、そしてもう一時間、相手は変わってもおなじ姿勢で思った。自分の人生に対する責任。三時間、コーヒーとタバコ何本かで。見た。触れた。カフカはだまされていない。四十年と十一か月だったか。メモを書いた紙。どこにでも落とせるが、にぎやかな通りは避けたい。(夜、西、ヌナ2)#k2fact227
2019-06-21 11:06:44生きている、ということ。山をいくつも越え、川をいくつも渡り、夏の日ざしを逃れた路地では見知らぬケンちゃんが呼ばれていたり、冬の寒い風のなかを歩いてたどりついた部屋のとなりからは左ききの拳銃をかまえる女性の声が聞こえたりする。てめえら、死にたいのか。(夜、西、ヌナ3)#k2fact227
2019-06-22 10:07:51人の本来の力を衰えさせるように働く「発明品」に囲まれている。いりません。いつもそうではわるい気がしても、もちろん妥協はしない。最後のひとこと。聞いてほしい雲が聞いていない空。泣かないうちにやりなおしだ。生きている、ということ。二本足で立つことから。(夜、西、ヌナ4)#k2fact227
2019-06-23 11:51:22西から変化する。その西ではないかもしれない。「加藤氏」「佐藤氏」と距離をつくる呼び方で、雨で、あらたまって証明などできない山と川だ。あとでわかること。労働者の町で朝早くから食堂があいていた。酒も飲めるけど、メニューにあっても頼まないほうがいいものが。(夜、西、ヌナ5)#k2fact227
2019-06-24 11:03:26待っていればやってくるもの、来てよかったということにならない場合もある。袋をかぶった質問が付いてきたら要注意だ。見開きの、低気圧。消えかけている縫合線。プレビューだけで判断するな。日がさしても人が人にひどいことをしている。西さん、報告が遅すぎる。(夜、西、ヌナ6)#k2fact227
2019-06-25 09:44:12葬っていいもの。葬ることできない。だれの手でも意志をもつ手では。六月、逃げ込む闇に匂いがして。ナニ、この悪い道。それを苦にしないで何往復もするヌナだ。そうか、コンテンポラリーに救いたい詩があるんだ。ユニクロで買ったズボンと脚、シワクタになっても。(夜、西、ヌナ7)#k2fact227
2019-06-26 09:43:06倒れて、わかることも、わからなくなることもあり、熱帯性低気圧が台風に変わるかもしれない夜だ。何を隠すためか。横浜方面。くすぐったい手術、中止。だれもが名前を知っている鳥の孵ったばかりのヒナの声。テレビじゃないよ。外。まだ晴れていて、だれか立ちあがった。(夜、西、ヌナ8)#k2fact227
2019-06-27 09:23:48新人だったらこうしろという条件はない。でも、新人のよさってある。いま気になる新人の足音。きれいな音だ。たとえば、路地ごとの動きが出てきた低い土地。おみやげの用意もなしに入ってどうするのか。笑顔のヌナ、いつのまにかつめたい。解体現場。ヌナ、ヌナ、死ぬな。(夜、西、ヌナ9)#k2fact227
2019-06-28 09:39:33自分の音楽を聴いてもらう。損得じゃない。でも交換を期待した。山、川、見知らぬ人へと歩いた。ほらっ、隠せない、濃くも薄くもない絵がある。夜に死ぬな。そういうことだった。生きること。ヌナ、手と目の使い方と感謝だ。この桃、もう甘さが足りないとは言わせない。(夜、西、ヌナ10)#k2fact227
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