赤い糸切り師募集中

#書き出しだけ大賞 への投稿から始まったなみあと(@nar_nar_nar)先生の小説
10
前へ 1 ・・ 5 6
なみあと🦔原稿中 @nar_nar_nar

新宿西口の広告費など馬鹿にならないだろうが、それでもやろうと考えさらに実行したのだから、犯人の熱意だか執着には頭が下がる。 「だとしたらどんな調査ができますか? ――まさか」 感づいた後輩は、嫌そうな顔をした。

2019-07-20 11:40:58
なみあと🦔原稿中 @nar_nar_nar

たぶん考えたことは当たっている。私は頷いた。 「時間を変えて一日五回、計二十回その場にいる人間を撮影、その場に複数回写った人間をピックアップした」 「新宿駅で!?」 利用者数ランキングの上位を誇るこの駅で。

2019-07-20 11:41:22
なみあと🦔原稿中 @nar_nar_nar

「だから通勤通学時間は避けた。そもそも、私一人でやったことじゃない。――担当編集から逃げたい作家仲間諸氏にもご協力いただきました」 一宿一飯の隠れ家を提供する代わりに。

2019-07-20 11:42:05
なみあと🦔原稿中 @nar_nar_nar

「うち二人は捕まって、土下座も虚しく担当編集に引きずられていった」 「そこの報告いらないです」 「ついでに私も怒られた」 「ますますいらない」 素行不良な担当作家を抱えると大変なのである。

2019-07-20 11:42:58
なみあと🦔原稿中 @nar_nar_nar

まあ、そんな哀れな作家らの行く末はともかく。 「さて、そこから導き出せる容疑者だが」 「一人に絞れるものでしょうか」後輩が眉を寄せた。「もちろん普通なら、時間をランダムに変えて特定の交通機関の一帯を撮影したとき、何度も写り込む人間の数は多くないと思われます。

2019-09-11 18:04:33
なみあと🦔原稿中 @nar_nar_nar

――だけど、限度がありますよね。売店の販売員だとか、そのあたりを頻繁に行き来している人はいてもおかしくないのでは」 「うん」それも予測の範疇だ。「言うとおり、五人までは絞れた。今ざっと見回して、三人は確認できた。が、二人隠れているかもしれない。

2019-09-11 18:04:56
なみあと🦔原稿中 @nar_nar_nar

そも、我々の見落とした人間がいるかもしれない」 「決め手が欲しいところですが」じろり、と睨むように私を見た。「その方法も、先輩のことだから、もう決めてるんでしょう?」 なぜ睨むのかわからないが、その通りではある。

2019-09-11 18:12:22
なみあと🦔原稿中 @nar_nar_nar

「というわけで、実測だ」 「実測?」 「……人間の特性として――」 言いかけて。 やめた。 「先輩?」 「んーと」 有り体に言えば、話すことに疲れたのだ。

2019-09-11 18:14:21
前へ 1 ・・ 5 6