【シナリオ】准変身ヒロインが敵の改造を受けて変身ヒロインたちを圧倒する話

准変身ヒロインが敵の改造を受けて変身ヒロインたちを圧倒する話
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@akuochiken

変身ヒロインの力は授かっていないけれど、彼女たちに対抗心を燃やして、自身の財力を投入してそっくりのコスチュームと独自に開発したデバイスを装着して彼女たちに迫る活躍をする悪役令嬢系ヒロインが、敵組織に捕まって改造を受けた結果、変身ヒロイン以上の能力を手にして彼女たちを圧倒する展開

2019-07-30 14:47:43
@akuochiken

「ふふふ、見て、私もあなた達と同じになれたのよ」 怪しげな笑みを浮かべる彼女が変身の声を掛けた。 だが、その変身は少女たちが行うようなコスチュームが装着されていくものではなく、敵の怪人のように全身が変化していき、正体を現すような異形化であった。

2019-07-30 15:01:02
@akuochiken

まさに、彼女の身体を突き破ってコスチュームが生えてくる。 衣装が、デバイスが、アーマーが、彼女の身体から分化して生え、それらを形作っていく。 変身を完了した彼女の姿は、彼女が少女たちに対抗するように活動していた頃の正義の味方の姿を彷彿とさせる。

2019-07-30 15:06:22
@akuochiken

しかし少女たちのものとの大きな違いは、それらの構造物が全てナノマシンのごとく生体由来のものであり、彼女の身体と一体化していたことである。 「あはっ、あなた達の変身って、こんな気持ちのいいものだったんだ。ずるいよね」 彼女は少女たちに異質にまみれた全身を見せつけた。

2019-07-30 15:13:08
@akuochiken

「でも、もう終わり。あなた達は用済みよ。だって、これからは私があなた達の代わりに活動するのだから」 敵は、彼女のコンプレックスのごとき憧憬を歪ませ、コスチュームを彼女と同化させて変身ヒロインへと改造した。 だがそれは正規の力ではなく、少女たちを解析した彼女が作り上げたもの。

2019-07-30 15:19:22
@akuochiken

その成果を敵の技術で昇華させ、彼女という対抗心に燃える素体に還元することで、変身ヒロイン以上の能力を持った人間がベースの怪人を生み出すという狂気でしかなかった。 そして以前のように彼女に活動限界はない。 融合した彼女には変身ヒロインと同様、無限のエネルギーが与え続けられるのだから。

2019-07-30 15:24:33
@akuochiken

それは、仲間割れを起こした変身ヒロインの1人を諌めるために、3人がかりで戦闘を交え説得している情景に見えた。 そして驚くべきことに、3対1という劣勢を覆すほどの実力が彼女にはあった。 だが、偽りの力を身に宿している歪みは徐々に彼女の平静を奪い、身体を侵食していく。

2019-07-30 16:59:49
@akuochiken

「どうして、私はあなた達を超える力を手に入れたのに、あなた達に勝てないの!?」 無限のエネルギーが与えられているにも関わらず、彼女は冷静さを失って少女たちに追い詰められていく。 「まだ……足りないっていうの!? 何が! 私に!」 悲痛な叫びが彼女の口をつくと同時に変貌が始まる。

2019-07-30 17:07:43
@akuochiken

力が欲しい。 そう唱えると、メキメキと音を立てて彼女の両腕が胴体に不釣り合いなほど肥大化していくと同時に何重もの異質な外骨格で覆われる。 その先に備え付けられた異形の両手は少女たちの身体を掴んでしまえるほど巨大で、各指から生える鋭い鉤爪が互いにガチガチと音を立てて蠢く。

2019-07-30 21:32:15
@akuochiken

速く動きたい。 そう唱えると、彼女の背中を切り裂いて、鋭い異形の翼が生えてくると同時に、彼女の両脚が丸太のように太く強靭になり、外骨格で覆われたそれは、ガシンと地面を掴むようにして彼女の身体を固定する。 瞬間、凄まじい勢いで巨大な鉤爪が少女たちをすり抜け、壁へと突き刺さった。

2019-07-30 21:37:01
@akuochiken

どんな攻撃にも耐える無敵の体がほしい。 そう唱えると、彼女の外骨格で覆われた両手両足を起点とし、ビキビキと皮膚が裂けていくようにして体内から硬質の器官が出現し、彼女が身に纏うように同化していた服を、デバイスを、アーマーを飲み込んで作り変え、彼女の全身を異形の外骨格で包んでいく。

2019-07-30 21:44:58
@akuochiken

暴走、とも呼べる現象だった。 本来、想いの強さによって無限大に拡大していくのが少女たちの力の源であり、擬似的に同じ仕組みが彼女が開発したデバイスにも搭載されていた。 だが、それが発揮される方向性は敵からの改造によって歪められ、怪人としての力を増大させられるように変質させられていた。

2019-07-30 21:54:16
@akuochiken

その結果として、彼女の望みが歪に組み合わさった、かつて彼女が『正義の味方』と自慢していた可憐な姿とは程遠い、彼女の面影を残した異形の怪物がそこに降臨していた。 暴走する彼女の狂気に飲まれた追撃をかわし切れず、ついに捕捉された少女の一人が、彼女の巨大な右手によって弾き飛ばされる。

2019-07-30 22:02:59
@akuochiken

突然の出来事に驚愕して固まった別の少女を、流れるようにして瞬時に左手が掴み、少女の胴体をギリギリと締め上げる。 「はハははハ! ワタシはつよイ! あナたたちよりズッと! ワタシこそ『セイギノミカタ』にふさワしい!」 異形に飲まれつつある彼女の頭部から、かろうじて人間の声が聞こえた。

2019-07-30 22:12:06
@akuochiken

「もうやめて!」 最後に残された少女が彼女に向かって悲痛な叫びを上げた。 「な二……?」 掲げた左手はそのままに、左肩越しに少女を光る目が睨みつける。 「正義の味方、正義の味方って、いい加減に気付いて! 今の貴方の姿こそ、私たち『正義の味方』が倒すべき怪人なんだって!」

2019-07-30 22:18:07
@akuochiken

「ワタシがカイジン……?」 ふと、彼女は自分の右手を見た。 人間の少女の可愛らしい肌色の手ではなく、黒く、硬く、鋭利な凶器の付いた異形の手。 「ア……ア……ワタシ……」 左手に掴んでいた少女を手放し、その巨大な両手で自らの身体を触ろうとする。 だが思うように触れない。 感触がない。

2019-07-30 22:25:55
@akuochiken

「ワタシ……ほンとうにカイジンになっテ……?」 恐怖に震えたような声を出し、傍に佇んでいる少女に視線を投げ掛けたが、少女はただ深く頷くばかりだった。 「カイジン……カイジンはワタシがたオさナきゃ!」 ザクリ、と彼女の右手の爪が、彼女の硬い外骨格で何重にも覆われた胸部を簡単に貫いた。

2019-07-30 22:34:07
@akuochiken

刺した右手を引き抜くと同時に、ドシャリ、と仰向けに地面へと倒れ込む彼女。 「あは、あははは……私、あなた達と同じになれたんじゃなくて、怪人に……私たちの敵に、なってたんだね……」 口から血を流し、両目から涙を流しながら、残された力で傍に佇んでいる少女を見上げた。

2019-07-30 22:39:50
@akuochiken

無限のエネルギーが供給されていると言えど、大元となる生命エネルギーが絶たれたからか、彼女の全身を覆っていた外骨格が、ぱきり、ぱきりと音を立てて崩れていく。 「安心して、あなた達が倒すはずだった怪人は私の手で倒したから。ふふ、私も最期に『正義の味方』らしいこと、できたでしょう?」

2019-07-30 22:47:07
@akuochiken

ふと、彼女は地面へと俯く。 「ごめんなさい」 涙をぽたぽたと落ちる。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……! 私があなた達を羨んで……! 僻んだりしなければこんなことには……!」 再びゆっくりと顔を上げる。 「私の命で償わせて」 彼女は消えゆく安らかな顔で少女たちに懇願した。

2019-07-30 22:52:40
@akuochiken

「まったく、あなたという人は思い込みが激しい上に極論しか言わないんだから」 「えっ……」 パンパンと砂埃を払いながら、最初に吹き飛ばされた少女が歩み寄ってくる。 「ほら、これが欲しかったんでしょう?」 すっ、と彼女の目の前に変身デバイスを差し出す。 だがそれは少女たちのものではなく

2019-07-30 23:00:00
@akuochiken

「なんで……それ、あなたの大切な……」 「いいのよ、死に掛けている仲間を救うのに私の過去に拘っているのも馬鹿馬鹿しいから」 曰く、少女たちが想いを糧にして強くなれる存在であれば、生きたいという願いが強ければ、本当に生きられるかもしれないと。

2019-07-30 23:05:42
@akuochiken

「でもこれは万能アイテムじゃないの。あなたが私たちの仲間として覚醒できるのであれば助かるかもしれない、というだけの話」 「あなた、仲間って……」 冷静な表情だった少女がニコリと微笑む。 「だって、あなた、私たちに突っ掛かってくるただの馬鹿じゃないって、さっき証明してくれたじゃない」

2019-07-30 23:10:01
@akuochiken

ありがとう、という表情を浮かべ、彼女は無言で差し出された変身デバイスに右手を乗せる。 未だ僅かばかりの外骨格が残る彼女の右手の甲に、残り二人の少女がそれぞれ手を乗せる。 「仲間の命がこれで救えるなら、これを託して亡くなったあいつも浮かばれると思うし、それに……」

2019-07-30 23:17:47
@akuochiken

3人の少女の顔をそれぞれ眺める。 「ここで私も過去と決別するって決めたから」 きりっと鋭い表情に切り替わる。 「さぁ、私たちの願いは一つ。みんなの想いをここに集めて!」 その想いに応えるように彼女たちの手の中の変身デバイスが光り出し、その光が彼女の全身を包んでいく。

2019-07-30 23:25:31